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#1 所持金10万円ではじめたロンドン暮らし ヒースロー空港で夜明けを待つ。

【Day1】

4月某日 ロンドンヒースロー空港に到着した。

所持金は約10万円程度、当時で630ポンドほどだった。

最安の航空券を買ったので、到着時刻は何かと都合の悪い23:30

この時間から一泊するために宿代を払うつもりはなかった。iPhoneに【ヒースロー カフェ 24時間】と打ち込み、カフェで仮眠をとることにした。

空港内は常に高速のWifiが自由に使える。

カフェを検索した後に、今度は【ヒースロー空港 シムカード】と打ち込み、その入手場所を確認すると、幸いカフェと同じ方向にシムカードが売っている自動販売機があった。ヒースロー空港はとにかく広い。別のビルへ移動し、30ポンドのシムカードを購入した。これで、イギリスの携帯電話番号が手に入った。予定通りだ。

カフェ【Nero】へ到着すると、店員さんへコーヒーをオーダーする時に、「これはカフェイン入り?」と雑談をしながら、「朝便を待っているから、もし眠ってしまった時は、私の荷物が盗まれないように見ていてくれる?」と言って、5ポンドのチップを出した。(朝便を待っている、というのは嘘だが、宿代が惜しいと言うと印象が悪い。)

ちなみに5ポンドはこの場合かなり高額チップだ。なので、おそらく仮眠中の荷物も本当に気にかけてくれるであろう。仮眠する時は、最低限の自己防衛として、自分のブレスレットと荷物は自転車のチェーンでつないで眠るので、荷物を盗られるリスクが高いとは思わないが、この場合は盗られた時の損失が大きすぎるので、5ポンドはケチらない。

コーヒーとクッキー代の6ポンドも支払い、眠れそうなソファ席へ移動した。席でPCを取り出し、【London Hostel Association】と入力し、空きのあるHostel を探す。4人部屋で食事付き、1週間120ポンド、ロンドン北部のZone2、閑静な住宅街にあるHostel を予約をした。

この日の支出は161ポンド。残りは469ポンド。

初日からなかなかシビレる財政だが、大丈夫だ。

大丈夫な理由は、アルバイトは通常すぐに見つかる。想定時給は9ポンド。ランチ時間に4時間程働き、週5日、収入は週に180ポンド。

今週に仕事が決まれば翌週には現金収入がある。

週の支出は、ホステル120ポンド。そして、アルバイト先までの交通費をバス往復で3ポンドとし、15ポンド。食事はホステルと、アルバイト先のまかないで済ませるつもりだった。

携帯電話は契約方法によるが、最安でいい。なぜならロンドンにはWifiのないカフェを探すほうが難しい。予約したHostelも高速Wifiが完備している。なので、ひと月の支払いは20ポンドと仮定すると、1週間の収支は180ポンド マイナス 140ポンド

余裕など全くないが、とりあえず死ぬことはなさそうだった。

「大丈夫だ。」と誰にも聞こえないくらい小さな声で、自分に言った。

ホステルの予約を終えてすぐに、日本人のロンドンコミュニティサイト【MixB】を開き、アルバイト急募情報をチェックした。条件を整理する。応募先への条件は、ホステルからバス1本で30分以内に到着できること。時給が9ポンド以上であること。まかないがあること。条件にあった複数のアルバイト候補先へ一斉に、2行の自己紹介文に、先ほど入手したイギリスの電話番号を書き込み、ビザと、履歴書のスクリーンショットを添付したメールを送り終えた頃、時刻は1:00を過ぎていた。

私はカフェから女性用トイレへ向かい、歯磨き、洗顔、スキンケアをしてからカフェへ戻ると、仮眠体制(キャップ、サングラス、耳栓、飛行機用の枕、コートを着て、貴重品はコートの内側へ)を整えた。

間違いなく疲労していたはずなのに眠れなかったのは、ソファの寝心地が悪かったからだと思っていたが、本当はこれからの生活への不安からだったかもしれなかった。

これで23:30到着から始まった初日は終了だった。

ちなみに、ヒースロー空港には毎夜、深夜になると本当のホームレスが集まってくる。女性用トイレの洗面台で髪を洗い、手を乾かす機械で髪を乾かしている場面に遭遇したこともあった。

ロンドンヒースロー空港は彼らにとっても安眠ができる居心地のいい場所だ。

カフェではなく、空港内の特に人目に付きにくいような場所で仮眠を取ると、荷物を失うリスクが高くなる。空港で眠る時はカフェで、店員さんへ一声かけてから眠るほうが賢明だ。


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