月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の…

月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の合間には、図書館で本のページをめくる音や、美術館で絵画に向かって深呼吸する静けさが、私の心を落ち着かせてくれます。日々の中にある小さな奇跡を、いつも感じられる心を持っていたいです🍀 ̖́-

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ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。 いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。 私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワ…

鎌倉の山道を越えて

その日、ウサギとカメは、そっと北鎌倉駅に降り立った。「この駅は他の駅とどこか雰囲気が違うわね」とウサギが辺りを見渡しながら言った。「この場所はもともと円覚寺の敷…

時空を超えた日

強い陽射しのもと、ウサギとカメはハラカドの屋上テラスから、神宮前交差点を見下ろしていた。「緑に囲まれて都会の交差点を眺めるのは、どこか不思議な感覚だわ」と、ウサ…

よかったね ネッドくん

その日、カメが図書館の静けさの中で本の海に潜っていると、肩を落としてトボトボと歩くウサギが現れた。彼女の表情は曇りガラスのように霞がかかっており、どこか彼女の不…

だるまさんと招き猫

その日の夕暮れどき、ウサギとカメは川崎大師に足を踏み入れた。そこで二人が目にしたのは、長く伸びる人の列だった。ウサギは目を見張った。「凄いわね。こんなにたくさん…

二人が走る理由

ウサギは自分の部屋の窓から外をじっと見ていた。空は鉛色で、今にも泣き出しそうだった。「今日は走れないかな」と、彼女は小さなため息をつきながら、静かにつぶやいた。…

宝石箱の中の夜景

夕暮れ時のわずかな光が残る中、ウサギとカメは中目黒駅に降り立った。街は人々で溢れ、その喧騒がすぐに彼らを包み込んだ。二人はその雑踏を抜け出し、目黒川沿いの静かな…

バラ園の追いかけっこ

その日、ウサギとカメは生田緑地のバラ園にいた。まるで小さな天国に迷い込んだかのように、色とりどりのバラが太陽の光を浴びて煌めき、甘い香りが空気中に静かに溶け込ん…

あの時の日記帳

その日、カメは部屋の本棚から一冊の日記帳を取り出した。ページをめくると、あの時の記憶が鮮やかに蘇ってくる。 今日、図書館で返却作業をしていたら一冊の絵本に出会っ…

好きなものを探しに

その日、ウサギとカメは神田古本屋街をぶらりと歩いていた。靖国通りに面しているその場所は、時の重みを感じさせる書店が静かに軒を連ねていた。二人が足を運んだのは、ブ…

謎をよぶ デ・キリコ展

国際子ども図書館を過ぎたウサギとカメは、やがて東京都美術館に到着した。正面玄関のエスカレーターを降り、二人は「デ・キリコ展」の世界に身を委ねた。 ジョルジョ・デ…

猫の街の散歩道

その日、ウサギとカメは千駄木駅の階段を上がると、団子坂を背にして足を進めた。よみせ通り商店街のレトロなお店に視線を走らせながら通りを右に曲がると、狭い路地にはす…

東京タワーに登るなら

その日、ウサギとカメは東京タワーのメインデッキに立って、広がる都市のパノラマに心を奪われていた。空は青く澄み渡り、遠くには海をまたぐレインボーブリッジがくっきり…

神楽坂のうさぎ

かくれんぼ横丁の余韻が覚めやらぬうちに、ウサギとカメは赤城神社の鳥居をくぐり抜け、奥へ続く階段を一歩ずつ登っていった。スタイリッシュな拝殿に到着すると、狛犬たち…

たった一つのハートを求めて

古くからの和菓子屋や、行列ができる飲食店が目を楽しませる神楽坂の通りを、ウサギとカメが人波を縫うように歩いていた。二人が脇道へ足を踏み入れると、周囲の喧噪が一瞬…

日本紅茶に魅せられて

その日、ウサギとカメは神楽坂の「la kagu」の店内を彷徨っていた。2階へと続く階段を登ると、そこには日本茶の世界が広がっていた。4月に摘まれたばかりの「手つみ紅茶…

ウサギの自己紹介

ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。
いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。

私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワクしながら飛び込んでいます。「退屈」という言葉は私の辞書にはありません。時に人は私をちょっと無謀だと思うかもしれませんが、私にとって毎日は楽しい冒険なんです。

夜明けって素敵だと思いませんか?
新しい一日が始まるあの瞬間、目覚める世界の

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鎌倉の山道を越えて

鎌倉の山道を越えて

その日、ウサギとカメは、そっと北鎌倉駅に降り立った。「この駅は他の駅とどこか雰囲気が違うわね」とウサギが辺りを見渡しながら言った。「この場所はもともと円覚寺の敷地なんだ。つまり、駅が境内の中にあるわけだね」とカメは静かに説明した。

二人がゆっくりと歩を進めると、まもなく鎌倉五山の第四位に数えられる浄智寺に到着した。苔むした石段の向こうには、最初の門がそっと二人を見下ろしていた。カメはそこに刻まれ

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時空を超えた日

時空を超えた日

強い陽射しのもと、ウサギとカメはハラカドの屋上テラスから、神宮前交差点を見下ろしていた。「緑に囲まれて都会の交差点を眺めるのは、どこか不思議な感覚だわ」と、ウサギは長い髪をなびかせながら呟いた。

屋上テラスを背にして、エスカレーターに飛び乗ると、二人は4階で足を止めた。二人が視線を向けた先は、「NATURE CROSSING」という横断歩道だった。

二人がその空間に足を踏み入れると、最初は地面

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よかったね ネッドくん

よかったね ネッドくん

その日、カメが図書館の静けさの中で本の海に潜っていると、肩を落としてトボトボと歩くウサギが現れた。彼女の表情は曇りガラスのように霞がかかっており、どこか彼女の不運を物語っていた。

彼女は細い身体を、力なく閲覧席の椅子にあずけると、小さな声で話し始めた。「長い列に並んだのに、買いたかったスイーツが目の前で売り切れてしまったの。私はこの星の中で一番の不幸な人なの」

カメはそんな彼女に、「ウサギさん

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だるまさんと招き猫

だるまさんと招き猫

その日の夕暮れどき、ウサギとカメは川崎大師に足を踏み入れた。そこで二人が目にしたのは、長く伸びる人の列だった。ウサギは目を見張った。「凄いわね。こんなにたくさんの人が集まるなんて」

10年に一度の大開帳奉修の期間中だけ、弘法大師の直筆と伝えられる『南無阿弥陀佛』が刻まれた護符、赤札が手に入る。人の列には何か特別な力が働いていた。

参拝のあと、二人は仲見世通りをゆっくり歩き始めた。並んでいるお店

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二人が走る理由

二人が走る理由

ウサギは自分の部屋の窓から外をじっと見ていた。空は鉛色で、今にも泣き出しそうだった。「今日は走れないかな」と、彼女は小さなため息をつきながら、静かにつぶやいた。その声には微かな切なさが混じっていた。

その時、カメからメッセージが届いた。「今日はお花を眺めながら歩かない?」と。

二人は河川敷をゆっくりと歩き始めた。空はどんよりと曇っていたが、その中で力強く咲いている花々がウサギの目を引いた。彼女

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宝石箱の中の夜景

宝石箱の中の夜景

夕暮れ時のわずかな光が残る中、ウサギとカメは中目黒駅に降り立った。街は人々で溢れ、その喧騒がすぐに彼らを包み込んだ。二人はその雑踏を抜け出し、目黒川沿いの静かな道を選んだ。川の流れはゆったりとしており、水面には夕日がきらめいていた。

目黒川に別れを告げ、二人は新茶屋坂通りの坂をゆっくりと登り始めた。連なる街灯の光を頼りに進んでいくと、やがて彼らの前に恵比寿ガーデンプレイスタワーの姿が現れた。タワ

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バラ園の追いかけっこ

バラ園の追いかけっこ

その日、ウサギとカメは生田緑地のバラ園にいた。まるで小さな天国に迷い込んだかのように、色とりどりのバラが太陽の光を浴びて煌めき、甘い香りが空気中に静かに溶け込んでいた。二人は言葉もなく、ただ立ち尽くし魅入っていた。

カメはゆっくりと言葉を選びながら言った。「ここには800品種のバラが集められていて、その中には世界中から選ばれた『バラの殿堂』の品種も全部含まれているんだ」

ウサギは目を輝かせて言

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あの時の日記帳

あの時の日記帳

その日、カメは部屋の本棚から一冊の日記帳を取り出した。ページをめくると、あの時の記憶が鮮やかに蘇ってくる。

今日、図書館で返却作業をしていたら一冊の絵本に出会った。表紙には砂漠を横切る孤独な道と、その道をひたすら歩く旅人の姿があった。一旦ページをめくり始めると、その指は途中で止まることはなかった。

その旅人はバスを待っていた。馬に乗った人が通り過ぎても、自転車に乗った人が通り過ぎてもバスは来な

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好きなものを探しに

好きなものを探しに

その日、ウサギとカメは神田古本屋街をぶらりと歩いていた。靖国通りに面しているその場所は、時の重みを感じさせる書店が静かに軒を連ねていた。二人が足を運んだのは、ブックハウスカフェ」という絵本専門店だった。

「ここよ!」とウサギは言いながら、透明なガラスのエントランスを風のように駆け抜けた。カメはその場の空気を味わいながら、ゆっくりと後を追った。二人を出迎えたのは、香り高い特製カレーやさまざまな飲み

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謎をよぶ デ・キリコ展

謎をよぶ デ・キリコ展

国際子ども図書館を過ぎたウサギとカメは、やがて東京都美術館に到着した。正面玄関のエスカレーターを降り、二人は「デ・キリコ展」の世界に身を委ねた。

ジョルジョ・デ・キリコ。その人物は謎に包まれている。時に画風を変え、さらには自らの作品を偽作だと訴え、裁判にまで発展させた画家だ。デ・キリコの作品は、まるで時空が歪んだかのような、不思議な雰囲気を纏っており、二人はその深遠なる謎に向かった。

「デ・キ

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猫の街の散歩道

猫の街の散歩道

その日、ウサギとカメは千駄木駅の階段を上がると、団子坂を背にして足を進めた。よみせ通り商店街のレトロなお店に視線を走らせながら通りを右に曲がると、狭い路地にはすでに人々の波が溢れかえっていた。

谷中銀座に入るとすぐ、ウサギは前を向いたまま、隣に歩くカメの袖を引っ張り、「カメくん、何か視線を感じる?」と囁いた。「僕も感じるよ。気のせいじゃないね」とカメが応じた。二人が同時に視線を上げると、猫が屋根

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東京タワーに登るなら

東京タワーに登るなら

その日、ウサギとカメは東京タワーのメインデッキに立って、広がる都市のパノラマに心を奪われていた。空は青く澄み渡り、遠くには海をまたぐレインボーブリッジがくっきりと浮かんで見えた。

「それにしても…」とウサギが話し始めた。「今日は外階段が使えないなんて、どうして前もって確認しなかったのかしら」彼女の声は元気がなかった。一方で、カメは安堵の息をついていた。「外階段が使えない日で、本当に良かった」

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神楽坂のうさぎ

神楽坂のうさぎ

かくれんぼ横丁の余韻が覚めやらぬうちに、ウサギとカメは赤城神社の鳥居をくぐり抜け、奥へ続く階段を一歩ずつ登っていった。スタイリッシュな拝殿に到着すると、狛犬たちが、時空を越えてきたかのような、どこか神秘的な面持ちで二人を迎え入れた。

カメは蛍雪天神の前で足を止めると、「ここに祀られているのは、学問の神様、菅原道真なんだね」と独り言を漏らした。「こっちよ!」少し先を歩いていたウサギから、彼に声がか

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たった一つのハートを求めて

たった一つのハートを求めて

古くからの和菓子屋や、行列ができる飲食店が目を楽しませる神楽坂の通りを、ウサギとカメが人波を縫うように歩いていた。二人が脇道へ足を踏み入れると、周囲の喧噪が一瞬で遠のいた。

今、二人の目の前に広がっているのは、まるで迷宮のような複雑で入り組んだ横丁の細道だった。それは「かくれんぼ横丁」と呼ばれていた。足元に石畳がどこまでも伸びており、二人はその上を慎重に歩いた。

「ねえ、ウサギさん。さっきから

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日本紅茶に魅せられて

日本紅茶に魅せられて

その日、ウサギとカメは神楽坂の「la kagu」の店内を彷徨っていた。2階へと続く階段を登ると、そこには日本茶の世界が広がっていた。4月に摘まれたばかりの「手つみ紅茶」の試飲を勧められたウサギは、さっそく紅茶を手に取った。

葉をほどこし、微かに香るその優しい匂いに、彼女は「ほんのりいい香りね」と言い、小さく一口含むと、その柔らかな香りが口の中でふわりと広がった。「紅茶というより、どこか日本茶のよ

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