月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の…

月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の合間には、図書館で本のページをめくる音や、美術館で絵画に向かって深呼吸する静けさが、私の心を落ち着かせてくれます。日々の中にある小さな奇跡を、いつも感じられる心を持っていたいです🍀 ̖́-

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ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。 いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。 私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワクしながら飛び込んでいます。「退屈」という言葉は私の辞書にはありません。時に人は私をちょっと無謀だと思うかもしれませんが、私にとって毎日は楽しい冒険なんです。 夜明けって素敵だと思いませんか? 新しい一日が始まるあの瞬間、目覚める世界の音を聞くのが大好きなんです。その時、今日一日に何が起こるのかなんて、誰にもわから

    • 日本紅茶に魅せられて

      その日、ウサギとカメは神楽坂の「la kagu」の店内を彷徨っていた。2階へと続く階段を登ると、そこには日本茶の世界が広がっていた。4月に摘まれたばかりの「手つみ紅茶」の試飲を勧められたウサギは、さっそく紅茶を手に取った。 葉をほどこし、微かに香るその優しい匂いに、彼女は「ほんのりいい香りね」と言い、小さく一口含むと、その柔らかな香りが口の中でふわりと広がった。「紅茶というより、どこか日本茶のような、ほっとする甘みね」 次に勧められたのは、有機栽培で育てられた日本紅茶だっ

      • 沖縄への幻想旅行

        その日、ウサギとカメは、祭りの賑わいに包まれたラ・チッタデッラにいた。「はいさいFESTA」の会場は、沖縄の離島から持ち寄られた品々で色とりどりに飾られており、二人の馴染み深い、石垣島や宮古島の風を感じさせた。空気はタコライスやソーキそばの香りで満たされ、その一方で、海の波が寄せるかのように、貝殻で作られた繊細なアクセサリーが店頭に並べられていた。 中央噴水広場に立つと、二人の耳に三線の音色がゆったりと流れてきた。ウサギは目を閉じ、「まるで本当に沖縄にいるよう。ゆったりと時

        • 1つぶのおこめ

          その日、図書館に辿り着いたウサギは、窓際の閲覧席でページをめくっていたカメのもとへ急いだ。彼女は静かにカメに問いかけた。「心を澄ませるような本が読みたいんだけど」カメは一瞬考えをめぐらせた後、彼女の意図を尋ねることなく、黙って手元の絵本を差し出した。 絵本を受け取ったウサギは、彼の隣にふわりと腰をおろすと、ページをぱらりと開いた。そして魔法に掛かったように、夢中でページをめくり続けた。最後のページを閉じた時、ウサギの顔は笑顔に変わっていた。「ありがとう。心がスッキリと割り切

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          11本
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          未知のファンタジア

          広い無人の道路の左側に、カメの車がそっと止まると、ウサギは助手席から軽やかに飛び降り、目を見開いて建物を見上げた。そこにはライトに照らされた建物が、まるで空から降ってきたかのように、漆黒の夜空に浮かび上がっていた。 「まるで映画の一場面のようね」とウサギは夢見るように言った。「ウサギさんが見たことのない光景でしょ?」と、カメは彼女の横で言いながら、ゆっくりと建物を見上げた。 その日、図書館の閉館時間が近づいた時、「どこか遠くへ行きたい」とウサギは言った。カメは「じゃあ、夜

          未知のファンタジア

          タローのダンス

          その日、ウサギとカメは不思議な力に引かれるかのように、表参道の岡本太郎記念館を訪れていた。降り続く小雨を置き去りにして、二人はそっと傘を閉じ、館内に用意されているスリッパに履き替えた。そして、ゆっくりと、絵画が待っている2階へと向かった。 「岡本太郎にダンスって、なんだかイメージがなかったけれど…」ウサギはそう言いながら、目の前の絵をじっと見つめていた。絵の中の色彩は激しく、それでいてどこか憂いを帯びているようにも見えた。彼女の横では、カメが、絵の横にある説明文に目を落とし

          主役が餃子なら…

          まるで夏のような熱気が、涼しい風に変わる夕刻に、ウサギとカメは駒澤大学駅にそっと降り立った。駒沢オリンピック公園へと続く小道では、賑やかな声が響き渡り、人々が楽しそうに行き交っていた。二人が目指している CRAFT GYOZA FESの会場に到着すると、そこは餃子を堪能する人々で溢れ、さらなる賑わいを見せていた。 「今日は暑かったから、この時間に混んでいるのかしら?混雑が予想された昼間は避けてきたのにね。それにしても、若いカップルや女の子同士が目を引くわね」ウサギはそう言い

          モダンガールライフ

          ウサギとカメの目の前には、「ホテル雅叙園東京」の百段階段がひっそりと続いていた。1935年に出来た雅叙園で現存する、唯一の木造建築を仰ぎ見ながら、ウサギは小さく呟いた。「ここを登り切ると一階に着くの?不思議な建物ね」 隣に立つカメが静かに口を開いた。「ここは、目黒駅から行人坂を下りて来た場所。急な斜面に沿って建てられているから、99段の階段で繋がれた七つの部屋が、時間を縫うように斜めに連なっているんだ」時の重さを感じさせる階段を、二人は靴下のまま足音をたてることなく、ゆっく

          モダンガールライフ

          鯉のぼりを見上げて

          その日、つつじを見るために訪れた根津神社は、境内に足を踏み入れるのも一苦労なほど人で溢れ返っていた。二人は人混みをかき分け、やっとの思いで遠くからつつじの花を眺めて楽しんだ。その混雑から抜け出し境内を後にすると、二人は思わず深い息をついた。「ふう、やっと一息つけるね」とカメが言うと、ウサギは「本当だわ」と安堵の笑みを浮かべた。 千駄木駅に向かって歩いてきた二人は、「団子坂 菊見せんべい総本店」の前で足を止めた。「今日はとても暑いから、しょっぱいものが食べたいの」ウサギはショ

          鯉のぼりを見上げて

          ふしぎなたけのこ

          その日、ウサギは駅へと続くいつもの道を軽やかに歩いていた。道の両側には若葉がきらめく木々が立ち並び、風が穏やかに吹いていた。彼女はその風に長い髪を揺らしながら、こんもりと繁る竹林に差し掛かった。 ウサギはふと足を止めて、竹林を見つめた。彼女の目の前のたけのこは、数日前に見た時よりもずっと大きくなっていた。「こんなに早く大きくなるものだったかしら?」と彼女は心の中で問いかけた。その小さな疑問は、静寂に包まれた竹林の空気に優しく抱かれ、そっと溶けていった。 考えを巡らせたウサ

          美味しいものは半分こ

          「ソフトクリームを食べたあとだし、お土産は和菓子よね」というウサギのこだわりで、ウサギとカメは「つづみ団子」というお店の前で足を止めた。「あ、きびだんごがある」と静かにショーケースを見つめるカメの隣で、ウサギは「どれがお勧めですか?」と冷静に店員に聞いていた。 店頭に並べられた和菓子の中から、ウサギはようやく三つを選び出した。そしてカメに向かって少し申し訳なさそうに、「どうしても食べたいものが三つあるの。食べきれないから半分こしてくれる?」とお願いすると、彼は「喜んで」と笑

          美味しいものは半分こ

          「うなも」との出会い

          おめで鯛焼き本舗で、思わぬ性格判断をしたウサギとカメは、長い戸越銀座の反対側まで歩いてきていた。あたりを見回していたウサギの目に留まったのは、「紫色のスライム」だった。 「うなぎいも? ってなに?」彼女は店頭にあるタペストリーを読み始めた。 「鰻の頭や骨を肥料にして栽培したサツマイモだから『うなぎいも』なのね。どんな味なのかしら?」ウサギはカメの手を引きながら、軽やかに店の中へ入っていった。 コンパクトな店内には、紫色のスイーツやグッズがずらりと並んでいた。カメがゆっくり

          「うなも」との出会い

          本当の私を解って

          その日、ウサギとカメは軽いお散歩のつもりで戸越銀座を訪れていた。戸越銀座駅にある案内板を読んだウサギは、いきなり目をぱちくりさせた。「戸越銀座って、東京一長い商店街なのね。全長1300メールもあるわ」 気合いを入れ直した二人が、最初にたどり着いたのは「おめで鯛焼き本舗」というお店だった。「お好み鯛焼きが人気みたい」とカメが言うと、「新製品の広島風お好み鯛焼きっていうのもあるわよ」と、ウサギが指をさした。「迷うね…」と悩むカメの横で、ウサギはキッパリと、「両方ください」と、お

          図書館は私の宝物

          「今日は何の日か知ってる?」カメは、図書館の中庭でアールグレイをそっと持ちながらウサギに尋ねた。 彼女は長い髪を春風になびかせて、「4月30日と言えば…、もちろん図書館記念日ね」と言葉を弾ませた。 カメは静かに話し始めた。「今の時代、図書館に来れば、誰もが当たり前のように本を読むことができる。けれど、本がこんなに自由に読めるようになったのは、19世紀の後半からなんだ。長い人類史でみれば、それはまだごく最近のことになる」 ウサギがじっと聞いていると、彼は話を続けた。「本には

          夢見ヶ崎動物公園

          数日前、ウサギは図書館で動物図鑑をめくっていた。ページをパラパラと進めるたびに、彼女はいろいろな動物に夢中になっていた。「久しぶりに動物園に行きたいわ」と、彼女はそっとつぶやいた。隣に座っていたカメは静かに笑みを浮かべながら、「夢見ヶ崎動物公園に行ってみようか」と彼女に提案した。 急な階段を上がって迷路のように入り組んだ住宅街を抜けると、二人は動物園の入り口にたどり着いた。園内を歩き始めると、ウサギの目はレッサーパンダに引き寄せられた。ガラスの向こうで、二匹のレッサーパンダ

          紅茶とクッキーのご褒美

          その日の朝、カメはレース会場に向かうサイクルロードでゆっくりペダルをこいでいた。道の脇には黄色や白の花が咲き乱れ、一面に春の息吹が満ちていた。彼はふと、駒沢公園でウサギに言われた言葉を思い出した。「ギリシャの兵士のように走ってね」と。 スタートの号砲が鳴ると、カメは静かに足を踏み出した。まずは、自分の体調を確かめてみる。脚は軽やかに動き、呼吸も穏やかだ。「調子は良さそうだ」そう心の中で小さく呟くと、彼は一度大きく息を吸ってから、ゆっくりと吐いた。そして肩の力をふっと抜いて前

          紅茶とクッキーのご褒美