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パパの電話を待ちながら
少しばかり強い南風が、カフェのテラス席でカメの読む本のページをカサカサと揺らしていた。彼がふと視線をあげると、アールグレイを二つトレイに乗せたウサギが、微笑みながら静かに近づいてきた。
彼の隣に座り、「どうぞ」と、紅茶を差し出したウサギは、小さなリュックから一冊の本を取り出した。「この本、とても面白かったわ。私に新しい世界線を見せてくれたの。前に歩くエビとか、猫を食べるネズミとか……」
カメは
モンテロッソのピンクの壁
暖かさがやってくると、人はふと旅をしたくなる。旅立つのにちゃんとした理由など要らない。でも何処へ行く? 猫のハスカップにはなんの迷いもなかった。「モンテロッソへいかなくちゃ」
「不思議な旅をする本が読みたいわ」と願ったのはウサギだった。そんな彼女にカメが薦めたのは、江國香織さんの「モンテロッソのピンクの壁」という絵本。その表紙には、まるで「白ワインで蒸した鮭みたいな」ピンクの壁が大きく描かれてい