見出し画像

日本紅茶に魅せられて

その日、ウサギとカメは神楽坂の「la kagu」の店内を彷徨っていた。2階へと続く階段を登ると、そこには日本茶の世界が広がっていた。4月に摘まれたばかりの「手つみ紅茶」の試飲を勧められたウサギは、さっそく紅茶を手に取った。

葉をほどこし、微かに香るその優しい匂いに、彼女は「ほんのりいい香りね」と言い、小さく一口含むと、その柔らかな香りが口の中でふわりと広がった。「紅茶というより、どこか日本茶のような、ほっとする甘みね」

手摘みされた日本紅茶

次に勧められたのは、有機栽培で育てられた日本紅茶だった。その茶葉からは、心地よい香りが立ちのぼっていた。「この紅茶は香りで楽しめるわね。繊細ながらもコクがあって、深い味わいがとても美味しいわ」ウサギは飲み比べながら、その違いを楽しんだ。

有機茶園の日本紅茶

「確か、日本茶と日本紅茶は同じ葉っぱから作られるのよね?」ウサギは、隣で紅茶を飲んでいるカメに、そっと尋ねた。

彼は静かに答えた。「そう。緑茶も烏龍茶も、そして紅茶も、同じツバキ科の常緑樹であるチャの木の葉から作られる。葉を摘んだら、すぐに始まる酸化を、どこで止めるかでお茶の種類が決まるよ。酸化をすぐに止めたら、それが緑茶。もう少し酸化させたら烏龍茶。そして、葉をしっかりと揉んで、じっくり酸化させると紅茶になるんだね」

ウサギは少し考えてから、言葉をつくった。「だからこの紅茶は、紅茶のようでありながら、日本茶のようでもあるのね」

二人は、そっとお茶の香りに包まれながら、一口一口に心を寄せて、静かに味わいを深めていた。その瞬間、他の何ものにも邪魔されず、ただ純粋に日本紅茶を感じていた。




この記事が参加している募集

今こんな気分

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?