SHIFT INNOVATION #44 「アビリティ2」(抽象力編)
新たなアイデアを生み出すための「SHIFT INNOVATION」の事例を紹介します。
SHIFT INNOVATION #42 「クリティカル思考3」(能力編1)において、「枠外」のアイデアを導出するために必要となる能力として、「情報力」「批判力」「抽象力」「連想力」「収束力」があることを説明しました。
各々の能力に関して、有効な情報を想起する上で、多様なケースを抽出するための「情報力」、今までにはない情報を想起する上で、固定観念を排除するための「批判力」、異なる情報を想起する上で、事象を抽象化するための「抽象力」、枠外のアイデアへ導く上で、関連性の低い事象へ移行するための「連想力」、そして、対象となる事象と新たに抽出した事象を関連付けるための「収束力」が必要となります。
今回は、これの能力の中でも、「抽象力」の詳細な内容に関して、新たに導出した「ブレインスタット」の事例に基づき説明することとします。
新たに導出した「ブレインスタッド」とは、「快適な生活環境を作る完全自動化のサーモスタット」というコンセプトに基づき、導出したアイデアですが、「快適な生活環境にすることにより、人間の季節感が無くなってしまう」という不便益に対して、いつも季節を感じることができるよう、季節に応じた体温調整をすることができる、「脳へつながる温度調整機能(神経)に刺激を与えることにより、季節に応じた体温調整することができるサーモスタット(ブレインスタット)」というアイデアとなります。 ※妄想です。
なお、説明する内容に関しては、思考する過程において、抽象化を意識的に試みたものであり、無意識的に思考・知覚した場合とは異なる場合があること、また、科学的根拠に基づいた内容ではないことを前提にお読みください。
【「ブレインスタット」の思考プロセス】 ※参考
【「ブレインスタット」の事例における抽象力】
「ブレインスタット」の事例の場合、「サーモスタット」から「頭脳」へ連想しましたが、どのような発想に基づき連想したのでしょうか。
そのプロセスとは、「サーモスタット」から「ハイレゾ」「ラジオ」「天ぷら」「コンピューター」「頭脳」と連想することにより、新たなアイデアである「ブレインスタット」を導出しました。
「サーモスタット」から「ハイレゾ」へ転換した箇所に関して、「(完全自動化したサーモスタットによって)快適な生活環境にすることにより、人間の季節感が無くなってしまう」を反転させた上で、抽象化することにより、「快適にすることにより、人間の感覚が良くなる」へ転換しました。
その結果、「音源をハイレゾにすることにより、綺麗な音を聞くことができる」を想起したことにより、「サーモスタット」から「ハイレゾ」へ転換しました。
「ハイレゾ」から「ラジオ」へ転換した箇所に関して、「音源をハイレゾにすることにより、綺麗な音を聞くことができる」から「より多くの情報を入手することにより、感性を高めることができる」へ抽象化した上で、反転させることにより、「不便ではあるが、感性が高まる」へ転換しました。
その結果、「昔のラジオは選局するとき、微妙に調整する必要があった」を想起したことにより、「ハイレゾ」から「ラジオ」へ転換しました。
「ラジオ」から「天ぷら」へ転換した箇所に関して、「昔のラジオは選局するとき、ダイヤルを微妙に調整する必要があった」から「設定するためには、微妙な感覚が必要となる」へ抽象化しました。
その結果、「天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となる」を想起したことにより、「ラジオ」から「天ぷら」へ転換しました。
「天ぷら」から「コンピューター」へ転換した箇所に関して、「天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となる」を反転させた上で、抽象化することにより「調整せず、温度を一定にする」へ転換しました。
その結果、「コンピューターが高温にならないよう、いつも低度に設定している」を想起したことにより、「天ぷら」から「コンピューター」へ転換しました。
「コンピューター」から「頭脳」へ転換した箇所に関して、「コンピューターが高温にならないよう、いつも低度に設定している」における「コンピュター」から「コンピューターは頭脳であり、頭脳は冷やす必要がある」へ抽象化(擬人化)しました。
その結果、「脳に温度が低いと認識させることによって、暑い場所にいても低温に調整することができる」を想起したことにより、「コンピューター」から「頭脳」へ転換しました。
【「抽象化」プロセスの重要性】
「枠外」のアイデアを導出するためには、連想を繰り返すことにより、はじめの事象から、異なる事象へ転換する必要があります。
「ブレインスタット」の事例の場合、連想を繰り返すことにより、「サーモスタット」から「ハイレゾ」、「ハイレゾ」から「ラジオ」、「ラジオ」から「天ぷら」、「天ぷら」から「コンピューター」、「コンピューター」から「頭脳」へと転換しました。
例えば、「ラジオ」から関連性の低い「天ぷら」へ転換しましたが、どのようにして転換できたのでしょうか。
「ラジオ」から関連性の低い「天ぷら」へ転換するためには、はじめに、テクストである「ラジオ」からコンテクストを連想します。
「ラジオ」から連想したコンテクストとして、「昔のラジオは選局するとき、ダイヤルを微妙に調整する必要があった」とした場合、このコンテクストを抽象化すると、「調整するためには、指の微妙な感覚が必要となる」となります。
そして、抽象化した「調整するためには、指の微妙な感覚が必要となる」から連想した新たなコンテクストは、「天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となる」となりました。
この結果、「ラジオ」における「微妙な感覚が必要となる」から、「天ぷら」における「微妙な感覚が必要となる」という類似するコンテクストを想起したことから、「ラジオ」というテクストから、関連性の低い「天ぷら」というテクストへ転換することができました。
このように、「ラジオ」というテクストからだけでは、「天ぷら」というテクストを連想することはできませんので、テクストに関するコンテクストを連想した上で、そのコンテクストを抽象化しました。
そして、抽象化したコンクテクストより、新たなコンテクストを連想することによって、新たなコンテクストに関わるテクストを抽出しました。
この結果、「ラジオ」というテクストから関連性の低い「天ぷら」というテクストを抽出することができることとなりました。
「ブレインスタット」の事例は、異なる事象を抽出するため、意識的に「抽象化」プロセスを活用したものとなります。
【異なる事象を抽出するための「抽象化」プロセス】
1.対象となるテクストに関わるコンテクストを連想する
「ラジオ」から「昔のラジオは選局するとき、ダイヤルを微妙に調整する必要があった」を連想する。
2.連想したコンテクストを抽象化する
「昔のラジオは選局するとき、ダイヤルを微妙に調整する必要があった」を「微妙な感覚が必要となる」へ抽象化する。
3.抽象化したコンテクストに対して、新たなコンテクストを連想する
「微妙な感覚が必要となる」から、「天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となる」を連想する。
4.連想した新たなコンテクストに関わるテクストを抽出する
「天ぷらを作るとき、素材や気温により、あげる時間が異なるので、微妙な感覚が必要となる」から「天ぷら」を抽出する。
【無意識的抽象化・意識的抽象化】
「ブレインスタッド」の事例に関して、通常であれば、「サーモスタット」のアイデアを導出する際、「ラジオ」というテクストから「天ぷら」という全く関係がないテクストを抽出することはないと考えられますが、今回は、意識的に抽象化するプロセスを活用したことから、「ラジオ」というテクストから「天ぷら」というテクストを連想することができたものと考えます。
これに関して、通常、無意識的に抽象化を行った場合、「テーマ」「価値観」「固定観念」などによって、「枠内」に関わるテクストしか連想できないものと想定される一方で、意識的に抽象化するプロセスを活用した場合、今までとは異なる事象を抽出しようと意識することにより、「枠外」に関わるテクストを抽出できる可能性が高まったものと考えます。
よって、無意識の中で、「枠外」のテクストを抽出することができれば良いですが、「枠外」のテクストを抽出することができない場合は、あえて意識的に抽象化するプロセスを活用ことにより、「枠外」のテクストを意図的(意識的)に抽出できる可能性が高まるものと考えます。
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