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SHIFT INNOVATION #38 「イノベーション4」(実証編2)

 新たなアイデアを生み出すための「SHIFT INNOVATION」の事例を紹介します。

 SHIFT INNOVATION #37 「イノベーション3」(実証編1)において、どのようにすれば真逆のコンテクストへシフトさせることにより、シフト前後において、消費の関係性が共に拡大する関係にすることできるか実証した結果、アブダクション事象(固定観念)を目的視点で捉える必要があることを説明しました。

 今回も、サーモスタット(「突破するデザイン」)の事例に基づき、シフト・イノベーションのメソトロジーを活用することにより、消費の関係性が共に拡大する関係にすることができる新たなアイデアを導出することを試みます

【「サーモスタット」における新たなアイデア導出】

 それでは、目的視点による固定観念を抽出する上で、シフト・イノベーションのメソトロジーを活用することにより、新たなアイデアを導出することとします。

 SHIFT INNOVATION #37 「イノベーション3」(実証編1)において導出した「ゲームスタット」は、「完全自動のサーモスタット」というコンセプトに基づき、「普通のサーモスタットは細かい設定をしないといけないので面倒である」という機能視点による固定観念に対して本質探究の問いを発しました

 今回、導出を試みる新たなアイデアは、「快適な生活環境を作る完全自動化のサーモスタット」というコンセプトに基づき、「完全自動化することより、快適な生活環境を作ることができる」という目的視点による固定観念に対して本質探究の問いを発することとします。

 はじめに、コンセプトに基づき、「完全自動化することより、快適な生活環境を作ることができる」という目的視点における固定観念に対して、「本当に完全自動化することにより快適な生活環境にすることができるのか」という本質探究の問いを発しました。

 その結果、自動化ではなく、また、快適でもない状況として、「トレーニング」を想起したことから、「厳しいトレーニングをすることにより、健康な体を作ることができる」という真逆のコンテクスト(アブダクション事例1)を抽出することにより、「自動」から「手動」、「快適」から「厳しい」へコンテクストがシフトしました。

 そして、「温度」に関わる厳しい状況に対して、「地球環境」を想起したことから、「厳しい温度設定により地球環境をより良くする」というコンテクスト(アブダクション仮説1)を抽出することにより、「トレーニング」から「地球環境」へテクストがシフトしました。

 ここで、「厳しい温度設定するのは大変である」という固定観念に対して、「本当に厳しい温度設定するのは大変であるのか」という本質探究の問いを発しました。

 その結果、楽しい状況として、「ゲーム」を想起したことから、「難しい(厳しい)ゲームをするのは楽しい」という真逆のコンテクスト(アブダクション事例2)を抽出することにより、「厳しい」から「楽しい」へ真逆のコンテクストへシフトしました。

 また、ゲームで勝ち抜くeスポーツに対して、「賞金」を想起したことから、「eスポーツは、厳しい試合に勝ち抜けば賞金がもらえる」というコンテクスト(アブダクション事例2)を抽出することにより、「ゲーム」から「賞金」へテクストがシフトしました。

 そして、賞金をもらう状況に対して、「電気料金の節約」を想起したことから、「地球環境へ配慮した温度設定することにより、節約した電気料金を貯金に回す」というアブダクション仮説によって、「賞金」から「貯金」へテクストがシフトしました。

 その結果、「快適な温度と設定した温度の差異により節約した電気料金を、フィンテックを活用することにより、目的口座(節約)に移管する」という「サーフィンテック」というアイデアを導出しました。(「サーフィン」と「フィンテック」、「サーモスタット」がなくなりました。)

※紹介した事例は、アイデアの思考プロセスなどを確認するものであり、アイデアの内容を問うたものではありません。

【「サーフィンテック」の思考プロセスとイノベーションの種類】

(「サーフィンテック」の思考プロセス)
コンセプト設定
 「快適な生活環境を作る完全自動化のサーモスタット」
アブダクション事象1(固定観念)
 「完全自動化することより、快適な生活環境を作ることができる」
本質探究の問い
 「本当に完全自動化することにより快適な生活環境にすることができるのか」
アブダクション事例1
 「厳しいトレーニングをすることにより健康な体を作ることができる」
アブダクション仮説1
 「厳しい温度設定により地球環境をより良くする」
アブダクション事象2(固定観念)
 「厳しい温度設定するのは大変である」
本質探究の問い
 「本当に厳しい温度設定するのは大変であるのか」
アブダクション事例2
 「難しい(厳しい)ゲームをするのは楽しい」
アブダクション事例2
 「eスポーツは、厳しい試合に勝ち抜けば賞金がもらえる」
アブダクション仮説2
 「地球環境へ配慮した温度設定することにより節約した電気料金を貯金に回す」
アイデア
 「快適な温度と設定した温度の差異により節約した電気料金を、フィンテックを活用することにより、目的口座(節約)に移管する」(「サーフィンテック」)

(「サーフィンテック」のイノベーションの種類)
コンテクスト・シフト・イノベーション(テクスト・シフト)
①「設備機器業界」の視点によるイノベーション
コンテクスト
 「快適な生活環境にする」→「温度による地球環境配慮への成果を貯金する」
   ※破壊的イノベーション
テクスト
 「サーモスタット」→「サーフィンテック(環境配慮貯金)」
   ※漸進的イノベーション
②「金融業界」の視点によるイノベーション
コンテクスト
 「余裕資金を貯金する」→「温度による地球環境配慮への成果を貯金する」
   ※破壊的イノベーション
テクスト
 「貯金」→「サーフィンテック(環境配慮貯金)」
   ※漸進的イノベーション

【「サーフィテック」の実証結果】

 サーモスタットの事例に対して、シフト・イノベーションのメソトロジーを活用することにより、シフト前後において、消費の関係性が共に拡大する関係にできるか実証しました。

 シフト前の業界において、シフト前のコンテクストである「快適な生活環境にする」から、シフト後のコンテクストである「温度による地球環境配慮への成果を貯金する」へシフトしたことにより、目的が「生活環境を良くする」から「環境へ配慮する」へ転換することにより、環境に関心がある人を取り込めることから、「破壊的イノベーション」になると考えます。

 また、シフト前の業界において、シフト前のテクストである快適な生活環境にする「サーモスタット」から、環境へ配慮し貯金する「サーフィンテック」へシフトしたことにより、機能は「温度を調整する」から「温度を一定にする」へ転換したものの、「サーフィンテック」を金融システムと連動させる上で、価格も上がることから、「漸進的イノベーション」になると考えます。

 一方で、シフト後の業界において、シフト前のコンテクストである「余剰資金を貯金する」から、シフト後のコンテクストである「温度による地球環境配慮への成果を貯金する」へシフトしたことにより、目的が「余剰資金を貯金する」から「温度による地球環境配慮への成果を貯金する」へ転換することにより、今まで電気料金に消費されていた資金が貯金にまわることから、「破壊的イノベーション」になると考えます。

 また、シフト後の業界において、シフト前のテクストである余剰資金の「貯金」から、温度による地球環境配慮への成果の「貯金」へシフトしましたが、機能はいずれも「貯金」を維持し、「サーモスタット」とフィンテックを連動させる上で、価格も上がることから、「漸進的イノベーション」になると考えます。

 よって、シフト後の金融業界においては、新たな無消費を取り込むことが可能であり、また、シフト前の設備機器業界においても、新たな無消費を取り込むことが可能ではありますので、新たなアイデアである「サーフィンテック」の導出により、「ブルーオーシャン」を創造できる可能性があると考えます。

【「サーフィンテック」の検証内容】

 今回、比較対象とした「ゲームスタット」は、「完全自動のサーモスタット」というコンセプトに基づき、「普通のサーモスタットは細かい設定をしないといけないので面倒である」という機能視点における固定観念に対して本質探究の問いを発したことにより、シフト前後において、消費の関係性がトレードオフとなりました。

 一方で、今回、導出した「サーフィンテック」は、「快適な生活環境を作る完全自動化のサーモスタット」というコンセプトに基づき、「完全自動化することより、快適な生活環境を作ることができる」という目的視点による固定観念に対して本質探究の問いを発したことにより、シフト前後において消費の関係性が共に拡大する関係となりました。

 これらのことから、目的視点による固定観念を抽出することにより、シフト前後において、消費の関係性が共に拡大する関係となることによって、「ブルーオーシャン」を創造する可能性が高まるものであると考えます。

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