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ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #25 「インスピレーション5」(実証編)

 新たなアイデアを生み出すための「ずらして、ひねって、妄想する」事例を紹介します。

 ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #23 「インスピレーション4」(検証編)において、「枠外」のアイデアを導出するためには、究極的状況を想起した上で、本質探究の問いを発することにより、その前後において真逆の事象を抽出することによって、「ずらす」と「ひねる」を行う必要があると説明しました。

 また、ずらして、ひねって、妄想するDESIGN #20 「コンセプト4」(実証編2)においては、「枠外」のアイデアを導出するためには、価値観に対して抽象度を抑えたコンセプトを設定する必要があり、「枠外」のアイデアとなるような目的地を明確に定めたコンセプトに基づき発想することによって、「枠外」のアイデアを導出することができる可能性を高めることができると説明しました。

 今回は、ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #24 「インスピレーション4」(検証編)において検証した「(便意感知)オムツ」の事例に関して、究極的状況が想起できるよう、「社会的価値と人間的価値の共生」という価値観に対して目的地を明確に定めたコンセプトを設定し、本質探究の問いを発することにより、新たなアイデアを導出することができるか実証することとします。

【新たなコンセプトを設定した事例の思考プロセス】

 ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #24 「インスピレーション4」(検証編)において検証した「便意感知オムツ」の事例において、知覚メカニズムが機能したかどうかを検証した結果、究極的状況を想起できなかったことにより、批判的思考の程度が抑えられたことによって、「本質探究の問い」を発することができなかったことから、「ずらす」と「ひねる」を行うことができませんでした。

 そこで、新たなアイデアを導出した知覚メカニズムを活用することにより、改めて、「社会的価値と人間的価値の共生」という価値観に対して目的地を明確に定めたコンセプトを設定した上で、新たなアイデアを導出することとします。

(新たなコンセプトを設定した事例の思考プロセス)
・価値観 「社会的価値と人間的価値の共生」
コンセプト 「紙オムツという便利なものが存在しない

・紙オムツという便利なものが存在しないとはどういう状況であるのか
・昔は使い捨てではない不便な布のオムツを使用していた ※類似事例
・親の手間を省くためには使い捨ての紙オムツが良い ※固定観念
本当に親の手間を省くことが良いことであるのか ※本質探索の問い
・手間を省くことにより赤ちゃんの気持ちを理解することができなくなる ※新規事例
・赤ちゃんと言葉以外でコミュニケーションをとることができるのか
・赤ちゃんと言葉以外でコミュニケーションをとることにより、赤ちゃんの便意をしることができるのか
・例えば、赤ちゃんに便意が生じたとき、表情が変わる、訴えかけるなど、変化がないのか
・日頃のコミュニケーションで親は変化に気付くことはできるのか
 (以下省略)

【新たなコンセプトを設定した事例の思考プロセスの解説】

 はじめに、新たなコンセプトを設定した事例の場合、「社会的価値と人間的価値の共生」という価値観に対して、目的地を明確に定めた「紙オムツという便利なものが存在しない」という究極的状況を想起しました。

 これは、昔は紙オムツという便利なものが存在しなかったため、親はいつも赤ちゃんの様子を見ていたというように、赤ちゃんと親はそのような関係性において、コミュニケーションを図っていたということを踏まえ、現在の紙オムツの利便性とは真逆の究極的状況を想起することができたと考えます。

 その結果、「昔は使い捨てではない不便な布のオムツを使用していた」という類似事例を抽出したことにより、脳内におけるトップダウン処理の原理に基づき、比較機能が働くことによって、相反する事象となる「親の手間を省くためには使い捨ての紙オムツが良い」という固定観念を無自覚に知覚しました。

 そして、類似事例と固定観念は相反することから、批判的思考が生じることによって、「本当に親の手間を省くことが良いことであるのか」という「本質探究の問い」を発することができたと考えます。

 これらのように、「社会的価値と人間的価値の共生」という価値観に対して、目的地を明確に定めたコンセプトを設定したことにより、究極的状況を想起できたことによって、「社会的価値と人間的価値の共生」という価値観に適合した新規事例を導出できたものと考えます。

【新たなコンセプトを設定した事例の知覚プロセス】

 ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #23 「インスピレーション3」(知覚メカニズム編)において確認した知覚メカニズムに基づき、新たなコンセプトに基づく事例において、知覚メカニズムが機能していたか確認することとします。

(新たなコンセプトを設定した事例の知覚プロセス)
・価値観「社会的価値と人間的価値の共生」

コンセプト紙オムツという便利なものが存在しない

・事実確認の問い「紙オムツという便利なものが存在しないとはどういう状況であるのか」
・類似事例「昔は使い捨てではない不便な布のオムツを使用していた」
固定観念「親の手間を省くためには使い捨ての紙オムツが良い」 ※プラス
本質探究の問い本当に親の手間を省くことが良いことであるのか
新規事例「手間を省くことにより赤ちゃんの気持ちを理解することができなくなる」 ※マイナス 
ひねる(「手間を省くことは良い」→「手間を省くことは良くない」)

【新たなコンセプトを設定した事例の知覚プロセスの解説】

 「便意感知オムツ」の事例の場合、「本質探索の問い」を発した前後(「固定観念」・「新規事例」)において、マイナス要因からマイナス要因となり、転換していませんでした。

 一方で、今回、実証した新たなコンセプトを設定した場合のアイデアでは、「本質探索の問い」を発した前後(「固定観念」・「新規事例」)において、プラス要因がマイナス要因へ転換していました。

 次に、新たなコンセプトを設定した場合のアイデアに関して、知覚メカニズムの視点より検証することとします。

【新たなコンセプトを設定した事例の知覚メカニズムの検証結果】

 ずらして、ひねって、妄想する DESIGN #23 「インスピレーション3」(知覚メカニズム編)において確認した知覚メカニズムに関して、「便意感知オムツ」の事例において知覚メカニズムが機能したかどうかを検証します。

(新たなコンセプトを設定した事例の知覚メカニズムの検証結果)
1.究極的状況を想起できたのか
「紙オムツという便利なものが存在しない」
究極的状況を想起できた(目的地を明確に定めた究極的状況を想起できるコンセプトであった)
2.類似事例を抽出できたのか
「昔は使い捨てではない不便な布のオムツを使用していた」
※類似事例であった
3.比較機能による相反する固定観念を抽出できたのか
「親の手間を省くためには使い捨ての紙オムツが良い」
※相反する事象となる固定観念となった
4.批判的思考により本質探究の問いを発することができたのか
「本当に親の手間を省くことが良いことであるのか」
本質探究の問いを発することができた(問いの前後で真逆の事象が生じた)
5.「本質探究の問い」を発することにより、「ずらす」「ひねる」が生じたのか
「手間を省くことにより赤ちゃんの気持ちを理解することができなくなる」
「ひねる」(「手間を省くことは良い」→「手間を省くことは良くない」)ことができたものの、「ずらす」ことはできなかった

【新たなコンセプトを設定した事例の知覚メカニズムの検証結果の解説】

 「枠外」のアイデアである「検診不要薬」の知覚メカニズムと新たなコンセプトを設定した事例の知覚メカニズムの内容を比較した結果、究極的状況を想起できたことにより、批判的思考が機能したことによって、「本質探究の問い」を発することができました。

 新たなコンセプトを設定した事例の場合、コンセプトが「紙オムツという便利なものが存在しない」という目的地を明確に定めたコンセプトを設定したことによって、究極的状況を想起することができました。

 そして、固定観念である「親の手間を省くためには使い捨ての紙オムツが良い」に対して「本当に親の手間を省くことが良いことであるのか」というように、批判的思考が機能したことによって、その前後において真逆の事象が生じることとなりました。

 その結果、「手間を省くことにより赤ちゃんの気持ちを理解することができなくなる」というように、「手間を省くことは良いことである」から「手間を省くことは良くない」へと「ひねる」ことができました。

 しかし、新たなコンセプトを設定した事例において、「ずらす」ことができなかったこともあり、「枠外」のアイデアを導出することはできませんでした。

【まとめ】

 「枠外」のアイデアを導出するためには、価値観に対して目的地を明確に定めたコンセプトを設定し、究極的状況を想起することにより、「本質探索の問い」発することによって、「ずらす」と「ひねる」を行う必要があります。

 はじめに、価値観に対して目的地を明確に定めたコンセプトを設定します。「便意感知オムツ」の事例の場合、抽象度の高い価値観であったため、究極的状況を想起できませんでした。一方で、新たなコンセプトを設定した事例の場合、「紙オムツという便利なものが存在しない」という抽象度を抑えたコンセプトを設定したことにより、究極的状況を想起することができました。

 次に、「枠外」のアイデアを導出するためには、「本質探索の問い」を発することにより、その前後において真逆の事象を抽出します。「便意感知オムツ」の事例の場合、単純に意思表示の可否を問うのみであったため、「本質探索の問い」の前後において真逆の事象が生じることはありませんでした。一方で、新たなコンセプトを設定した事例の場合、「本当に親の手間を省くことが良いことであるのか」というように、批判的思考が機能したことによって、「本質探究の問い」の前後において真逆の事象が生じることとなりました。

 そして、「枠外」のアイデアを導出するためには、「ずらす」と「ひねる」を行います。「便意感知オムツ」の事例の場合、「本質探索の問い」が単純に意思表示の可否を問うのみであったため、「ずらす」と「ひねる」を行うことができませんでした。一方で、新たなコンセプトを設定した事例の場合、「本質探索の問い」がその真意を問う問いであったことから、「ひねる」ことができたものの、「ずらす」ことはできませんでした。


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