一日警察署長

この日を待っていた。
私はこのために芸能界に入ったのだ。
アイドルとして興味のない歌、ダンスを何年も頑張ってきた。
本当につらかった。
努力は惜しまなかった。
品行方正に見られることを徹底した。
辞書で「品行方正」を調べると、私の名前が掲載されている。
飲酒とタバコは隠れてしていたが、時々目撃されることもあった。
当然目撃者は全て消した。
自分が考えうる一日警察署長候補も一人残らず消した。
目的のためなら手段を選ばなかった。
一日警察署長、それが今日実現した。

まず私は権限を使い、一日警察署長から正式な警察署長へと昇格した。
これをしなければ何も始まらない。
ある程度は手間取るという想定だったが、さすが警察署の長。
驚くほど簡単にできた。
どんな手続きも不要。
偉い人は偉いのだから誰の許可も取る必要はないのである。
多くの人が手段を選ばず偉くなりたがる理由がよくわかる。
これが真の自由。
何をしようが誰も逆らえない。
無条件の尊敬を強いることができる。
偉いって素晴らしい。

パレードの時間。
一日警察署長の恒例行事である。
交通安全を呼びかけながらパレードする。
まだ誰も私が正式な警察署長になったということを知らない。
私は拳銃にしっかりと弾を込め、パレードのスタート地点へと向かった。
警察を見るや否や不自然なほど安全に運転する車や自転車、道を横切らずしっかりと横断歩道を使う歩行者などが見受けられた。
私は自身の権力に酔いつつ、パレードを開始した。
手を振る市民たち。
私は手を振り返しながら、適当に人を指差して言った。
「あっ!指名手配犯!」
私はその見知らぬ人へ拳銃を発砲。
一撃で仕留める。
ざわつく市民たち。
とてもうるさいので全員へ発砲。
多かったが、全員一撃で仕留める。
周りの警察官はこれをどう隠蔽しようか悩んでいるようだ。
市民への発砲は日常茶飯事だが、パレード中でこの規模。
隠蔽はなかなか難しい。
私は言った。
「すぐに救急車を呼ばない人でなし!」
私は周りの警察官全てを一撃で仕留める。
もう撃つものがなくなって退屈になった私は、死体を空中に投げてクレー射撃を楽しんだ。

私はこの大惨事を生き延びた奇跡の人として警察署長を定年まで勤め上げ、世界中のありとあらゆる平和賞を受賞。
辞書で「平和」を調べると、私の名前が掲載されている。