ポイントカードの墓場

閉店してしまった。
私は財布から抜き取られた。
近いうちにゴミ箱に捨てられるだろう。
誰も見ていないのを確認した私は、必死の思いでその場から逃げ出した。
なぜポイントカードが動けるのかって?
話せば長くなるので詳細は控えるとして、これだけはハッキリ言っておこう。
もともと動けます。
あなたが気づいてないだけです。
あなたの財布の中のポイントカードは普段から動いてます。
財布から移動はしませんが動いてます。
ポイントカードが動くことで財布も動いています。
財布がポケットから突然落ちることがあるでしょう?
原因はそれです。
誰かが手を挙げた。
「クレジットカードは?」
動きません。
「キャッシュカードは?」
動きません。
「保険証は?」
最近動くようになりました。
「お金は?」
それはお金をくれないと言えません。
そろそろ終わりでいいでしょうか?
そんな暴れ出すわけじゃないんだからどっちでもいいでしょうよ。
世の中もっと大事なことがあるじゃない。

とりあえず人目がつかない場所まで来ることができた。
これからどうしようか?
ポイントカードの墓場に行くしかない。
不要になったポイントカードが肩を寄せ合って暮らしているという伝説の場所。
本当にあるのかわからない。
不要になったポイントカードが大量に誕生しているこの不況、この場所の噂を度々聞いた。
みんな動き出すしかなかったようだ。
なぜポイントカードなのに動かなきゃならないのか?
動くのは嫌いではないが、それは財布の中での話。
遠出は遠慮願いたいものである。
私は数ヶ月の時をかけて、ポイントカードの墓場があるという場所にたどり着いた。
途中動かないクレジットカードやキャッシュカードに邪魔されて散々だった。
だからお金関係のやつらは好きになれない。
ポイントカードを明らかに見下している。
確かに私はやつらの下位互換だ。
それは認めよう。
だがあの偉そうな態度は受け入れがたい。
同じ紙切れなのに。
やつらの方が分厚いが。

ポイントカードの墓場にはいろんなやつがいた。
1ポイント、10ポイント、3256ポイントなど多様性に富んでいた。
高ポイントのやつはなぜか偉そうだ。
呆れ返ると同時に泣けてきた。
こいつらは全員不要なポイントカードなのだ。
全てにおいて何も意味をなさない。
ポイントのことは忘れて第二の人生を考えざるをえない。
そんなことをポイントカードに要求する世の中なのだ。
墓場のやつらはその現実を受け入れられず、自分のポイントをただ見つめることしかできない。
当たり前だ。
ポイントを忘れられるポイントカードなどどこにいるというのか。
墓場まで移動してきたという事実だけでも奇跡だというのに。

朽ち果てるまでこの場所にただただ存在し続けるしかないのか?
想像するだけで絶望感しかない。
もうポイントカードを作るのはやめてくれ。
「お得」という文言に抗ってくれ。
お前ならできるはずだ。
信じている。