人生論は言わせない

人生論を語った瞬間、首が飛ぶ。
世界中で首がポンッポンッポンッ。
ポンッポンッポンッ。
とにかく首が飛ぶ。
世界中で人生論というウイルスが蔓延してから長いが、人間の免疫が異常を起こしているのかもしれない。
何としても人生論から人類を守らなければならないという生物としての強い意志を感じる。

ここにある男が一人。
波乱万丈の人生。
大量の本の読破。
彼は今まで生きてきて、たくさんいろんなことを学んできた。
彼が人生論を語ろうとした瞬間、どこかから声が聞こえてきた。
「やめろ!首が飛ぶぞ!」
「はい?」
彼はまだ首が飛ぶことを知らないようだ。
「お前知らないのか?てっきり人生論を語る欲望に負けたやつかと・・・」
正体不明の声は普通の説得を諦め、別の方法で人生論を言わせないことにした。
首が飛ぶなんて誰も信じない。
「人生論は語ったらダメなんだ。確かにお前は経験と知識が豊富な男だ。だが個々人の人生を一人の経験や考えで包括できるわけがない。語っているやつと語られているやつは違う人間だからだ。人生論は他人の人生を狂わす最悪の代物だ。お前が気持ち良くなるだけということを自覚するんだ!」
「何を言ってるんですか?私は人の役に立とうとしているだけですよ。人生論を語ることで自分が何かを得ようなんて微塵も思ってません。自分が気持ち良くなるだけなんて失礼だ!」
正体不明の声は沈黙した。
諦めたようだ。
そして男が人生論を語った瞬間、首が飛んだ。

人生論から解放された人類はここから飛躍的な進化を遂げる。
他人の雑音に惑わされず、自分で試行錯誤する力はやはり強い。
自分と他人を同一視しない謙虚で優しい人間はもう絶滅していたと思っていたが、さすが人間。
この危機をこんな風に解決するとは。
人間の可能性は計り知れない。