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病気のことと、指輪と

部屋の中がまだ少しひんやりとしている。
下着に肌着、ハイネックTシャツに前開きのシャツ、もこもこ羽織もの。
足元は、これ以上ないくらい分厚いルームソックス。
お腹と背中にホッカイロ。
11月中旬でこんなに厚着をして、年越し時には一体どうなるのか。

鬱々としている。
ベッドに腰かけて、猫背のまま手元をじーっと見つめる。
左手の付け根に、薄く小さなほくろがひとつ。
右手の人差し指は、ささくれができている。
左手の薬指に結婚指輪。シルバーのシンプルなもの。
もうひとつ、右手の人差し指(ささくれ)にピンクゴールドの指輪。2連になっていて、冗談に小さなダイヤ、下段は小さな円がいくつか並んでいる。


病気が再発し、薬を服用するようになってから、10㎏増えてしまった。
元々がガリガリ体型だったため、最初のうちは「ちょうどよくなってきてよかったぁ」なんて思っていた。
それが、日一日と1㎏ずつ増えていく。よく履いているジーンズが履けなくなった。靴がきつい。足にも脂肪ってつくんだな。

色々飛ばして。
救急車で運ばれ入院することになった。私に意識はない。
2日後に目を覚ました時には、両手両足、胴体が拘束されていた。
意識朦朧で、何となく病室のドアに焦点を当てていると、看護師さんが入ってきた。
「あら、よかった。よく眠っていたのよ。」
身勝手に意識を失っている間、皆さん力を尽くして下さったのだろう。
はじめての拘束は心地の悪いものだったけれど、致仕方ない。

そして次に看護師さんから発せられた言葉。
「指輪がねぇ、どうしても抜けなかったの。飲み込み防止のために外すことになっているんだけど、やっぱり抜けなくて。そのままにしておくね。」

そうだよね、太ったからね。
なかなかに恥ずかしかった。


どーんと落ちていた頃のことを、少しでも書けば気が紛れるかと思ったけれど、変わらない。布団にこもっていることでしか気を休める術がない。
誰かとおしゃべりしたいな。