第一章⑤ 恋する44歳は冷静なのか?
私はヒロに送ってもらう為にタクシーに乗り込んだ。
「ヒロ君の家と私の家ってそんなに遠くないんだね~!自転車でも行ける距離だね~」なんて話しているとヒロが一言、小声でこう言った
今日うちに泊まりませんか?
ちゃかちゃ~ん♪ 私の頭の中に「ラブストーリーは突然に」(東京ラブストーリーの主題歌)が流れた。
私の答え
結論から言うと、その日ヒロの家には行かずに、自宅から少し離れたバス停でタクシーを降り帰宅した。
ヒロは少し残念そうだったけど、今日は泊まるワケには行かない。
なぜなら、私には3人娘がいる。中でも三女は上の二人と年が10歳ほど離れているので、当時まだ小学生だった。
私もヒロも水曜が定期的なお休みだったので、その日は火曜日だった。当然、三女は次の日学校。なんの計画も無しに突然泊まるワケには行かないのだ。
確かに、泊まらなくても、1回ぐらいできたと思う。
でも、最初のお誘いに乗るのは気が乗らなかった。正直に話すと、実のところ、ヒロがそんなに積極的なタイプだとは思っていなかったのだ。
だから予想外の展開に、心臓がバクバクして緊張しすぎて「泊りは、また今度ね」というのが精一杯だった。
冷静に見せかけたけど、20代男子に突然肌を見せるのは、40代半ばの女には勇気がいることなのだ。
ヤングマンに渡した愛の鍵
次の日、私は早速ヤングマンにLINEをした。前の日にA子にヤングマンと付き合えと耳打ちしたものの、2人がお互いにアプローチする事は無いと思った。
ヤングマンはA子を気に入っているけれど、会社の先輩に気を使って自分からはA子の連絡先を聞けずにいるし、A子は当時、ダメンズウォーカーだったので、普通の男には近寄らない。
私はヤングマンが「CLUB」に行ってみたいと話しているのをしっかり聞いていた。A子はCLUBによく行っていたので、これを餌にヤングマンを吊り上げる作戦だ。
昨日はお疲れ様~!ねえ、ヤングマン君さ、CLUB行ってみたいって言ってたでしょ?A子CLUBよく行くみたいだから、今度、連れていってもらったら?A子はOKって言ってたから、LINE教えるね~
いつもは返信がめちゃくちゃ遅いヤングマンが、速攻で返信してきた。
マジすか!え~!A子さん行ってくれるって?ありがとうございます!早速連絡してみます!!
ヤングマンに「ありがとう」を言われたのは、その時が初めてだった(笑)
2度目の食事は出会ってから28日後
ヒロとはLINEのやり取りを毎日の様にしていたけれど、お泊りを断わってから、しばらく会っていなかった。
まあ、家に誘われただけで、付き合っているワケでもないから普通の事なのかもしれないけれど、連絡はマメにしてきた。
20代の男の子が、私を切らないワケは「たった1つ」だという事くらい、40年以上も生きていれば簡単に想像できる。
まあ、それが目的なのは私も同じなのでお互い様だ(笑)そんな中で2度目のお誘いがあり、食事に行くことになった。
ヒロの家から徒歩5分の居酒屋だった。今度こそ1回くらいヤレる日になるだろうと、私はお肌をお手入れし覚悟を決めた。
ヒロはお酒を飲まないがこの日もよく喋った。
無口なイメージで、草食男子だと思っていたが、会うたびに印象が変わっていく。でも、どこか影があるような表情をするところは、初めて会った時から変わらない。
食事か終わって店の外に出るとヒロが「車で家まで送っていきます。俺の家すぐソコなんで車出しますね」と言った。
私たちはヒロのマンションまで歩いている途中、自然と手を繋いでいた。
その日は初夏にも関わらず、冷たい風が吹いていて、私は「さむい~」と言ってヒロの腕にしがみついた。
部屋、寄っていきます?
「うん」
この日、私は初めてヒロの部屋に入った。そして、肌のお手入れと覚悟の結果、1回くらいヤってしまったのである。
この1回が、この先の運命を、大きく変える事になるとも知らずに。
つづく
無名の私の文章に興味を持ってくれてありがとうございます!今後の活動のための勉強代にさせて頂きます!私の文章が、誰かの人生のスパイスになれば嬉しいです。ありがとうございます!