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ヴィジョンデュレール映画祭2023

ヴィジョンデュレール映画祭(Visions du Reel)はスイスのニヨンで行われている、世界で最も先鋭的なドキュメンタリーを上映する映画祭です。
コロナ禍によりオンライン対応がされるようになり、映画関係者用のプロアカウントに登録すれば、日本にいてもオンラインで作品を閲覧できるようになりました。

個人的なメモとして、気になった作品を残しておきます。

Myriam Raccah "Domus de janas”

6月に撮影で行くことになったイタリアのサルディーニャ島が舞台で、わたにとって、まさにタイムリーな作品。

タイトルになっているドムス デ ヤナスはサルデーニャの古いお墓で「妖精の家」または「魔女の家」を意味する。監督は村人の協力を得て、聖人サン・ジョヴァンニの祝祭や、この地方の伝説を蘇らせる。火災の多いサルデーニャ島の風景と、そこに生活する人々の様子を、ドキュメンタリーとフィクションを織り交ぜた演出で描く。

この映画にも登場するサン・ジョヴァンニの祝祭は、キリスト教より古い、異教起源のお祭り。夏至の日に行われ、火と水とハーブをシンボルとした儀式が行われるそう。コロナ禍で長く行われていなかったのだけど、ちょうど今年から再開されるよう。今回の旅のハイライトの一つ・・・!
https://www.sardinianplaces.co.uk/.../san-giovanni...

”Against the Tide” Sarvnik Kaur
https://www.visionsdureel.ch/en/film/2023/against-the-tide/

インド、ムンバイで働く2人の漁師を描くドラマ。伝統的な漁法を営む男と、大きな船を使って違法な漁法をしようとする男。映画の背景には、経済的な貧困や中国漁船によるの違法な乱獲があることも示される。

”Squid Fleet” Ed Ou & Will N. Miller
https://www.visionsdureel.ch/en/film/2023/squid-fleet/

中国の違法なイカ捕り漁船をリヴァイアサン並みのスケールで描く短編。ここにも貧困、搾取があり、釣ったイカのほとんどがヨーロッパやアメリカに運ばれることが示される。この映画では名指しされていないけれど、こうした乱獲の背景には日本の消費も当然関わっている。

”waking up in silence” Daniel Asadi Faezi & Mila Zhluktenko

ウクライナからのドイツの元兵舎に避難してきた子供たちを描く。

Asli Baykal ”Darkroom”

難民の滞在するトルコにあるアナログ写真教室で、子供達のワークショップの様子が描かれる。

”2720” Basil Da Cunha
https://www.visionsdureel.ch/en/film/2023/2720/

ポルトガルの貧困地域を舞台にしたカメラワークの凄いフィクション。


“Losing Ground” 作者匿名

2021年2月、ミャンマーの軍事クーデターによって自由を奪われた芸術家たちの姿を描く。抗議活動が行われたが、独裁政権の力はあまりに強く、首都は野外刑務所となる。今年のヴィジョンデュレール短編部門の大賞。イチオシです。

"Once Again” Giulia Di Maggio

シチリアのビーチを舞台にした、遊び心に溢れたドキュメンタリー。映画祭では社会的に重要なテーマを多く扱う一方で、こういう抜けのあるユーモラスなものもあって楽しい。

こうしたドキュメンタリー映画祭は、映像美もさることながら、いくつか組み合わせてみると、今起きていることが、つながって見えることが多い。プロアカウントの認定が必要になってしまうけど、こうした映画をオンラインで観られるのは本当にありがたい・・・。ドキュメンタリーファンが増えることを祈って!

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