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驚異の旅シリーズを読もう④『八十日間世界一周』

どうも、草村です

今回は光文社版、高野優訳の『八十日間世界一周』を読んだ。イキナリだが、高野優による解説の冒頭部分を引用させて貰おう。

本書はジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周』の翻訳である。今さら言うまでもないことであるが、ともかく面白い作品である。 なんといっても、ジュール・ヴェルヌである。「八十日間世界一周』である。面白くないはずがない。これほど面白い作品にはたして解説が必要か? ページを開けば、すぐにワクワク、ドキドキするような物語が待っているのだから、読んで楽しめばいいだけではないか? 解説などいらないではないか?と訳者は思うのだが、どうやらそういうものでもないらしい。
P.256

いやはや、全く持ってその通りである。この部分を読んで、私はこの訳者高野優さんに大いに共感し好感を抱いてしまった。
本当にこの作品は最初から最後まで興味が持続する、ずっと楽しく読んでいられる作品である。

さて、それではあらすじを紹介しよう。
この作品はイギリスのお金持ちが集まる〈改革クラブ〉に所属するフォッグ氏がある日、八十日間で世界を一周出来るかという賭けに挑戦することになるという話だ。
19世紀後半はまだ飛行機が無いため船と汽車で移動しなければならない。その為、八十日間で世界を一周するとなると本当に大変そうである。嵐で海が荒れたり汽車が遅延したりなど様々なトラブルが考えられる。
それだけでも面白いのに、さらに面白いことに、フォッグ氏が出発する日、丁度イギリスの銀行で大金が盗まれる事件が起こる。そしてその犯人の人相とフォッグ氏の人相が似ていることにフィックス刑事は気付く。それでもって、フィックス刑事はフォッグ氏を逮捕する為に彼の後ろを付いて周ることになる。『蒸気で動く家』ではインドを横断する旅に加えインドに潜む指名手配犯と鉢合わせしてしまうかもしれないというスリル要素があったが、『八十日間』では逮捕されてしまうかもしれないというスリル要素がある。本筋に加えてそういったスリル要素があるお陰で話により面白味が出て読者の興味を引き付けることが出来るのがヴェルヌはやっぱりすごいナアと感心してしまった。
また、話自体だけでなく「世界一周」ということで、観光小説としても面白い。江戸時代の頃の日本の横浜を訪れるシーンもあり、日本人として非常に興味深かった。

それから、やっぱりヴェルヌ作品はキャラクターも魅力的である。
主人公のフォッグ氏は国籍不明、経歴不明の謎めいた人物であり、毎日同じ時刻に同じことをする、そして感情を表に出さない機械のような人物である。ヴェルヌキャラは謎めいた男が出てきがちで、そういうキャラが好きなオタクにとっては非常にありがたいことである。
そして、そんな機械的でありながら、彼は決して冷淡な訳ではなく、困っている人が居れば絶対に見過ごしたりはしない、温かい心を内に秘めているのがとても良い。
クールでミステリアスな主人公フォッグ氏に対して、召使いのパスパルトゥーや先程紹介したフィックス刑事はコミカルなキャラクターなのでバランスも良い。他にも魅力的なキャラクターは居るが、ネタバレに触れそうなので省略しておく。

それから、wikiでこの作品について調べてみると、非常に面白いことが書いてあったのでここで紹介しておこう。

1889年 - ネリー・ブライは彼女の勤めていた新聞社である『ニューヨーク・ワールド』のために世界を80日間で一周しようと試みた。彼女はその旅を72日間で成し遂げてみせた。途中フランス滞在時にアミアンのヴェルヌの自宅を訪れている。このブライの企画に対抗する形で雑誌社から派遣されたエリザベス・ビスランドは76日を要してブライを上回ることは出来なかった。
Wikipedia

驚くべきことに、この作品を読んだ当時の人達はこぞってフォッグ氏の真似をして世界一周を試みたようだ。そしてフォッグ氏よりも早く、72日間で達成してしまった人が居るというのが面白すぎる。例えるならば、大谷選手が某野球漫画の主人公を超えてしまったみたいな感じだ。まさに事実は小説よりも奇なりというやつである。しかもちゃっかりヴェルヌ先生のお宅を訪れているのが羨ましい。「Lv100の聖地巡礼」だとツイッターでフォロワーが言っていて全く持ってその通りだナアなどと思いながら、世界一周に思いを馳せるのであった。

フォッグ氏御一行可愛い

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