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通勤途中に突然会社に行きたくなくなった朝。

もうだいぶ前の話だけど。
派遣社員として会社に勤めていたころ。家には夫と夫の母と小学生の子ども二人。
会社は、ワンフロア―100人以上が働いていて、部署ごとに仕切りはなく、いろんな意味で風通しのよい職場だったし、残業も少なかった。

人間関係は、まあそれなりに気を遣ったり遣われたりすることはあったけど、あたりまえのことだと思っていた。


毎日、電車通勤をしていた。
電車で3駅。
降りた駅から歩いて15分ぐらいで会社に着く。

毎日のことだと、足が勝手に動き風景など目に入らないことが多い。
人間は、目の前にあることではなく、過去のことや未来のことを考えている時間が1日の6割ほどだと聞いたことがある。
カラダは歩いているけど、こころは、そこにない。

その日も、そんな状態だったのだと思う。
ふと現実に戻ったとき、会社のビルが目の前にあった。

いやだ。いやだ。いやだ。

わけもわからず、会社に背を向け、逆戻りした。
突然、湧き上がってきた、すごく強い感情にドンッと背中を押されたように、急ぎ足で駅に向かっていた。

きっぷ売り場で、子どものころから見慣れた駅名を探した。
実家に帰りたいと強く思った。
子どもにかえりたいと、とても強く思った。

会社では真面目な社員で、気配りができて、仕事ができる人役を演じ、家では、良いお母さん、良い嫁、良い妻になろうと努力し、近所の人からも、友人からも、ちゃんとしている人と見られるように、ずっとずっと本当の自分を抑えてきた。

コップの水は溢れた。
親の庇護のもとに戻りたい。子どもに戻りたい。全身の力を抜いてわーわー泣きたい。

無意識に少しずつすこしずつため込んでいったものが、もうどうしようもなくなったときだったんだと思う。

鈍行列車に乗り、ゆっくりと風景を見ながら7時間ぐらいかけて帰った。
そう、今住んでいる家ではないけど、「帰る」という表現がぴったりだった。

こんな家には二度と帰らないと思って出た実家だったけど、そのときの私を包んでくれる場所は、そこしかなかった。

突然連絡もなしに「ただいま」と玄関を開けた私に、何も聞かず食事を出してくれた父。
いくつになっても、子どもとしていられる時間は、ありがたいものだった。


結局、何日かして、そのとき住んでいた家に戻ったわけだけど、リフレッシュできたことは間違いない。自分リセット。
子どもたちには、とても申し訳なかったけど、おばあちゃんたちと楽しく過ごしていたみたいだし、よかった。

このとき思ったこと、「ガマンしすぎないようにする。」
気持ちをためておく入れ物には、『ししおどし』みたいなものがついているといいな。


ありがとうございます。優しさに触れられて嬉しいです。頑張って生きていきます。