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ニートがスキー場でリゾバしてみた

リゾートバイト、略してリゾバ。
書いて字のごとくリゾート地で短期バイトをすることにした(※去年の話)。

note更新しなさすぎて涼しい写真を真夏にお届け


2023年の11月、山奥は相変わらずクソ寒く、そして日本の古屋は耐寒構造という概念を知らなかった。この冬も凍えながらこたつにこもるだけの虚無期間となるのか…

「そういうことなら、冬はスキー場に来んか?寮は暖房使い放題やで」
「行きますッ!」

そんな矢先、近所のおっちゃんから声をかけてもらったのだ。
どうやらおっちゃんは冬になると県内のスキー場に出稼ぎに行くらしく、田舎のマイナーなスキー場はいつも人手不足らしい。
個人的に金への欲望はそんなにないのだが、寮費5000円(/月)で暖房使い放題という単語にひかれた。水道とWifiもつくらしい。天国はスキー場にあった。
寒さに弱すぎるので、暖かく冬をやり過ごせるなら何でもいい。
2023年の11月、早速スキー場の求人要項に問い合わせた(爆速で採用されました)。


リフト待機小屋。ストーブのおかげであったか空間

「はいどうぞー。前に進んで下さーい。」

リフト乗り場に立ち、やってくるスキー客たちへ声をかける。
よっぽどの初心者たちがやってこない限りは適当でいい。
動き続けるリフトを減速or停止させるボタンがあるので、もたついてる初心者がやってきたらそれを押すだけだ。

仕事内容はリフトマン。ドアマンみたいでかっこいい。横で突っ立ってるだけなんですけどね。ショップのレジやレンタル受付、レストラン業務などもあるが紹介してもらったおっちゃんに勧められてリフト業務を志望した(給料が一番高かったこともある)。露骨な接客業務がないのも嬉しい。
もちろん防寒着や冬用長靴が支給される。


60cmつらら。モンハンなら氷属性片手剣

ド級の初心者、言葉が通じない外国人、小さすぎる子供を連れてくる家族連れがやってくると面白いことになる。変に手伝うと体力を消費するので、リフトを減速させたらあとは注意して乗るよう指示しておく。
(暇なときは外国人の相手をする。グッドラック!とか言っちゃう。東南アジアやインドなど雪すら見たことない人たちがズッコケ続けるさまは微笑ましい。)

リフト降り場を担当するときは、接触事故を防ぐため急停止させることがある。降りてすぐは初っ端から急斜面で(単に設計が悪い)、慣れないボーダーは大体コケる。そこへ次々と利用客が降りてくるので団子状態になり危険なのだ。
ぼーっと上ってくるリフト(with客)を眺め、レンタルボード利用客(つまり初心者)が来たら減速ボタンを押す。ばっちりキメたファッションのボーダーは熟練者だからほっといても綺麗に着陸する。

ドサッ…!
板はBURTON(バートン)、黒一色のスタイリッシュなウェアで固めたおっちゃんが不時着した。擬態型かァ~?


カロリーの消費どころ

仕事内容で一番大変だったことは、雪不足によるものだった。
今回も地球温暖化による雪不足がスキー場に、というか僕らに打撃を与えた。リフト近辺は全てのスキーヤー・ボーダーが行き来する場であり、気温が高い日はみるみる足場が溶けてなくなっていく。
よってシャベルや手押しダンプで雪をかき集めてはレッドカーペットもといホワイトカーペットを敷いてやらなければならないのだった(ある意味いい運動にはなる)。


希望すれば300円でまかないが食べられる。ごはん盛り放題が嬉しい。


朝8時にリフトが動き出し、夕方5時に停止させれば業務終了だ(社畜時代に比べれば夕方5時にきちんと仕事が終わる時点で神職場だ)。
平日は客もまばらなため一日全体が退屈なほどのんびりしている。

ひと仕事終えたら徒歩1分で寮へ帰る。
家電は揃っているのでパソコンを持ち込みWifiに繋げてしまえば不便なく暮らせる。


今年の男性寮メンバーは僕を含め日本人4名、ベトナム人4名だった。
国籍ごとに分かれ、廊下に置いたちゃぶ台の上で夕飯を自炊する。
田舎のおっちゃん相手にはチャリ野宿旅のバカバカしい武勇伝を話しておけばたいてい仲良くさせてもらえる。

ザ・男メシ。

日本人メンバーは初参加の僕をのぞき古株らしく、40~60歳と年齢層が高い。たまに買い出しで向かうスーパーでは油断すると食料代まで奢ってもらわれがちだ。


「コレー、食べてぇー、オイシイよォ」

すさまじい胸やけを引き起こす甘辛いかば焼きさん太郎

ベトナム人のあんちゃんが自国から取り寄せたのか謎のお菓子をくれた。
みな20代前半で日本で働いてるあたり立派なもんである。
とくに返せるものもないのでベトナム語をググり"おいしい"と返しておいた。「ンゴン」というらしい。発音が普通に難しい。
外国人がベトナム語で返してくれるのが嬉しかったのか、微妙に色めきだつ。

いろいろきちゃない。くれたチキンはンゴンだった。

彼らは陽気なたちで近所迷惑という概念が存在しない。
室内喫煙、土足入室、深夜に大声なんでもありだ。この野郎…。
おかげで日本人組はフツーに殺気立つのだが、おおらかな彼らは安くないであろうベトナム産食料を気前よく分けてくれるので僕は懐柔されがちだ。缶ビールまで渡してくる。いい奴らめ。
「カムォン(ありがとう)」を連呼しておいた。


夕食後、寮の風呂もあるが隣接の温泉施設へ歩いていく。
年パスを買ったのでサウナ露天風呂が入り放題。


今年の冬はかつてないほどの暖冬で、2月中旬にはゲレンデが禿げ上がった。仕事の休みは週一とのことだったが、そのうち週二、週三と増えていく。金稼ぎ目的の人にはつらいだろうが、僕は暖かい部屋で冬をやり過ごしたいだけだ。エアコン使い放題の部屋でゴロゴロできるのは悪い気分ではない。

冊子版ニーマガVol.1はここで仕上げられた


使う金は食費くらい。1月、2月は月2万足らずで生活していた。
そうこうしているうちに冬が終わった。

諸行無常
こんなゲレンデ滑りたい人いる?

後半は休みが増えて稼ぎが減ったものの、月15万~20万ほど貰えたので個人的には大満足だ。冬を暖かくやり過ごし、春からの軍資金を調達できた。

リゾートバイトは家賃と共益費、場所によっては食事まで補助されるので生活費がかからず金が溜まりやすいという長所がある。
しかしそれ以上に、数ヶ月たてば終了という契約で仕事をするため人間関係に悩みすぎないという良さがあると思うのだ。

いきなりリゾバで働けなんて言わないが、同じ会社で何十年も働き続けるのに比べればなかなか悪くない選択肢だった。


従業員特典でリフト無料。
スノーボード上達の道のりは遠い。


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