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コマが1つも減らない変則チェス『Paco Ŝako』について書いてみる。

先日みた、アブストラクトゲームを作成しているKanareさんのツイート。

「平和のチェス」(Paco Ŝako)のウクライナカラー版が100部限定で販売中のようです。売り上げから1部につき20ユーロをオランダの人道支援組織PAXに寄付するとのこと。

とまあ、ロシアが侵攻をかけているウクライナの支援で、ウクライナカラー(青&黃)のチェスボードにしています。
で、気になるのはやはりゲーム『Paco Sako』です。

ツイートのスレッドには、さらにKanareさんの説明が続きます。

Paco Ŝako(パツォ・シャコと読むらしい)は「捕獲のないチェス」で、相手の駒があるマスに自分の駒を進めると「ユニオン」として一体化します。「ユニオン」を連鎖させていって、相手のキングとのユニオンを作った者が勝利します。

です。
すごく勘のいい方ならば、だいたい把握できるかも知れませんが、自分、正直把握できなかったので、もうちょっと噛み砕いてみたいと思います。


Paco Ŝako

ネットで調べると、『Paco Ŝako』を販売しているのは、オランダのPaco Ŝako社です。


Youtubeには、同社が作成したコマの動かし方の動画があります。

正直、この動画を見ればーー英語でのナレーションですがーーおおよそわかると思われます。
が、念の為、自分が日本語でざっくり説明してみます。

あと、Boardgamegeekにも『Paco Ŝako』が登録されています。

さらに、変則チェスについてほぼ網羅している総本山サイト『Chess Variants(チェス・バリアンツ)』にも、登録されています。


Paco Ŝakoの大体のルール

『Paco Ŝako』ですが、通常のチェス1セットあれば遊べます。
ただし、『Paco Ŝako』特有のルール(1つのマスに2つのコマを置く状態)があるので、Paco Ŝako社が販売しているコマを使うほうが遊びやすいです。

https://www.kickstarter.com/projects/pacosako/paco-sako より引用
コマの足が勾玉状のかたちをしているので、
2つのコマをあわせると太極のようになります。


ルールですが、コマの動かし方は、通常のチェスと変わりません。
大きく違うのは、自分のコマを相手のコマがあるマスに動かすと、相手のコマを捕獲しません。
代わりに、2つのコマは「合体(Union:ユニオン)」します!

白:ポーンが黒:ナイトのマスに入ると、
2つの駒は「合体」!

合体した2つのコマは、それぞれのコマの動きにあわせて一緒に動かします。
例えば、「白:ポーン、黒:ナイト」が合体していると、白のプレイヤーは通常通りポーンの動かし方で、黒のプレイヤーは通常通りナイトの動かし方で、合体したまま動かします。

白は青の矢印(ポーンの動き)に、
黒は赤の矢印(ナイトの動き)に、
「合体」駒を動かします。

ところで、この合体したコマーー「白:ポーン、黒:ナイト」ーーのあるマスに、合体していない状態のコマーー例えば「黒:ビショップ」ーーを動かすと、どうなるのか?

白:ポーンが元相方と別れて、
黒:ビショップと再合体します!!

黒:ナイトは、大ショック。
まさかの独り身ですよ。
同じマスに3つのコマは居ることができません。
黒:ナイトは、通常通り他のマスへ移動します。

黒:ナイトは、哀愁をひきずって立ち去る。

あれ?ちょっと待てよ?
もし、移動した先に、他の合体した2個のコマがあったらどうなるのか?

勿論再合体!!
元相方は、とっとと移動です。

つまり、盤面状況によっては、たった1手で複数のコマを動かす「連鎖反応(chain reaction:チェーン・リアクション)」ができるのです。
ちなみに、合体したコマが、コマのあるマスに移動できるのかは……各自で詳しく調べてください(曖昧でーす)。

黒:ビショップを、
白:ポーン&黒:ナイトに移動し、
合体解消された黒:ナイトを、
白:ビショップ&黒;ルークに移動し、
合体解消された黒:ルークは……

それはそうと、大事なことがあります。
捕獲できないのであれば、どうやって勝利を決めるのか?

相手のキングにいち早く合体したプレイヤーの勝ち、です。

白:キングと「合体」!
黒の勝利です。

くどくど書きましたが、動画の内容をぐだぐだなぞっているだけです。


Paco Ŝako将棋?

ざっとルールをみてきたのですが、これって「将棋」でもできなくない、って思いません?
ちょっとどうなるか考えてみましょう。

(1)二歩、打ち歩詰は廃止。
打ち歩詰は持ち駒に対しての禁止ルール。
そもそも捕獲できない以上、歩は打てません。
二歩も、持ち駒に対しての禁止ルール。
さらに合体した駒が移動することをかんがえると、逆に煩わしくなります。

(2)入玉されると勝負が長引く。
王将(玉将)をのぞいた駒8種類のうち、後方に移動できるのは4種類(銀・金・角・飛)で、さらに19枚のうち8枚しかありませんので、半分の駒は前方にしか移動できません。
もちろん、敵陣に入って金に成れば、後方に移動できる駒はどんどん増えていきますが、後ろに1マス下がるだけで、正直機動力は低いです。
もともとの通常の将棋も、入玉すると詰めることが難しくなりますが、捕獲と持ち駒がルールにないので、さらに詰めることが難しくなります。

(3)Paco Ŝakoは、中将棋のほうが向いている?

駒数が多いので混雑してしまいますが、駒を選抜して通常の将棋と同じく20枚程度にすると、かなり遊びやすくなるかも知れません。
中将棋では、特にブイブイ言わせる「獅子(1手で王の2回移動する駒)」ですが、Paco Ŝakoルールだと、マイルドな塩梅で機能しそうです。

Paco Ŝakoルールは、さまざまな変則移動の駒を使えると思います。
チェスでも200以上の変則駒(Fairy piece:フェアリー・ピース)があります(※下のリンクは、フェアリー駒についてまとめた、noteの記事です)。

(4)Paco Ŝako仕様の将棋駒

通常の将棋の駒を変形させるとなると「成り」があるので、やはり表裏どちらでも同じ形のほうが無難そうですね。
たとえば、幅を半分にすれば1マスに2つ置けるのではないでしょうか。


………スリムすぎて、弱そう。
考え直しましょう。

締め

ざっとですが、Paco Ŝakoの紹介でした。
捕獲しないルールのアブストラクトゲームは、ほかにもありそうですね。
あるいは、なにか新しいゲームルール考案できるかも知れません。

では。


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