スタートアップの最初の特許出願
この前、最初の特許出願が最も大事でどんどん効能が落ちてくると書かれたSNS を読みましたが、知財も分からず何を言ってんだろ!と頭に来ました。(多分に成熟産業で特許を担当しているからですね。)
スタートアップだと最初に産まれたアイデアを大事にする事は必要ですが、駄目だと見切ってピボットする事も多々有りますから一概には言えません。
そんな時にスタートアップ最初の出願を後生大事に持ってて何の役にたつんでしよ。ということで、今では大企業のスタートアップの誕生直ぐの出願を見ていきます。
まずは人編から
最初がスゴくないって信じられない?ではまずは今ではスーパーマンのようなザッカーバーグの最初の出願です。
マーク・ザッカーバーグが発明者のUS出願は2019年5末で110件(FBの出願は7617件)
うち28件は意匠出願でした。
最も早い出願は2003年5月14日の誕生日の日に弱冠19歳にして実施。
フェースブックじゃないと言われそうですが映画などでも有るようにハーバード大学の寮で作っていたので含むとしました。
内容はありきたりなICT絡みで勿論登録には至っていません。
ってこれはフェースブック前ですね。こうなりゃということで根こそぎみていきます。
以前に調べたアメリカのスタートアップの最初の出願を見てください。
インスタグラム
2012年4月FB に10億ドルで買収されてから5か月後にインスタグラム名義の出願をただ1件のみ行っており、出願による兆しは無。シリーズBの後です。
出願番号は13/622290
今回の全てで言えますが特許公報で次世代のスターは見つかりません。そもそも特許より前にMVP のような製品を世に問いますし、出願が公開される頃には既に大企業です。
ちなみに後で述べる企業編、フェイスブック名義の最初のPCT出願(最も力を入れた出願)が上記の記事の画像です。
落合陽一さん
あの落合さんも、昔はこんな面白い出願もしているんですね。特許公報は永年に残ります。
【特許請求の範囲】 【請求項1】 ネクタイの内部にLEDを内蔵し、その光を直接的に電飾とすること。
【請求項2】 ネクタイの内部に制御装置を内蔵し、外界の環境変化に応じてネクタイに備えたLED の発光状態が反応するような機構を含むこと。
【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、ファッション並びに服飾用電子機器に関する。
これだと、くさしているので、最近のバリバリになった、いわゆる三行クレームでの登録例です。
これはARグラスとかでも有用です。
落合さんは筑波大学の先生ですが今日、筑波大学の永田学長が三選って有りました。以前には学長補佐もされていたので磐石ですね。
さてここからは過去の遺産も掘り出し、デカコーンだった企業の初期をみます。
Airbnb
まずはシェアリングの雄です。最近ではここに投資して貰えるのがステータスです。
最初の出願はこれっす。
権利者は現在CORTLAND CAPITAL MARKET SERVICES LLC;TOP IV TALENTS, LLC, AS COLLATERAL AGENTでした。
2013年に出願しており、内1件がPCTのため、これがファーストだと認定。
実際仮出願を2012年2月にしておりシリーズ初期に該当すると判断。
内容は地図上のイベントをトラッキングする
ちなみにのこりの特許には
US 10,467,553「宿泊施設のための顧客からの地理的位置および日付からなる検索クエリを受け取る宿泊施設予約システム」
などもあります。
DMM
海外ばかりはあれなのでDMM も調べました。まあ参考程度に載せています。
Uber
Uberは最初の出願が下記の出願履歴です。
Uberは会社設立後9か月足らずのうちにPCTで最初の出願をしています。しかし、その後2年ほどは知財に関する主立った動きをしていません。
私にはウーバーの創業者トラビス・カラニック氏の名前もあるこの1件を見て、輝いたデカユニコーンの姿を見出すことが残念ながらできませんでした。特許屋の目から見てクレームも一般的で事実、庁での権利取得まで至っていません。
ただし現在の目から図面を見るとこの時点で既にMVPを作成し、すでにUberのアプリのデザインは出来ているようですし、他のユニコーンよりは知財に関わっていると思います。
Palantir
最後に逆例として、最初から良い特許を出したパランティアです。
シリーズAと同時期に特許出願しています。
初出願US2009/0228507 (公開日2009/Sep/10)
出願人: PALANTIR TECHNOLOGIES, INC.
出願:番号US2008/0201339 (公開日2008/Aug/21)
ここに有るように初期に、出願は出して居ますが公開は遅い。
さすがに最初からお金を持ったアントレプレナーなので最初の出願もまともというか現在実施するモノの端緒になります。
まとめ
最初の出願が最も良い特許であるという話はガセでした。そもそもほとんど権利化できず拒絶査定なのも多数です。
これは弁理士のセールストークですが、安く済まそうと自分で自己出願したり、慣れずに簡易に出すからだと言えます。実際にはこの時期に知財なんてそれほど重要視していないからですが。(気にするぐらいならモノに力を入れるというのは、ひとつの考え方として妥当です。)まあアドバイスとしてドンピシャの特許調査ぐらいはした方が良いとは思いますが。
また、最初の出願がベストなら最初の出願時期から、創業者を始め正員が成長しないという話は、スタートアップをバカにしています。
繰り返しになりますが、今回の人、企業全てで言えますが特許公報で次世代のスターは見つかりません。そもそもアプリは特許より前にMVP のような製品を世に問いますし、世の中のスピードが早くて出願が公開される頃には既に大企業です。
Uberはスタートアップにおける現状ベターな知財化の活動だと思います。ものが出来るのと平行して出願します。
海外でも商売という皮算用や、権利化するまでの時間を取るため国際出願します。
何が良いかと言うとVC からお金を勝ち取るひとつの手段というのは確かです。仮に登録できず拒絶されてもそれまでの活動資金だと思えばペイするので、是非知財化もご検討ください。
安くしますよ、という何処かの商売人のような弁理士でした。
今回もアメリカばっかりみていますが、実は今のスタートアップで日本企業が投資を考える先はイスラエルやインドもみているようです。CVC なども、アメリカや中国では既にがっちり固められ新規参入する席がないのでこういう国に行っています。
先日聞いて面白く感じたのが、こういう国に投資するとき、準拠法が何処になるかという話です。その国の法律、日本国の民法、商法、いえいえアメリカのそれもデラウェアだそうです。
何故って?ベンチャーキャピタルの準拠法だからだそうです。
仮にアメリカからの投資が無くても、またシリコンバレーでカリフォルニアであっても❗
日本の秘密保持契約を勉強してもこの分野では全く役にたたないとのこと、あの時間を返してくれ!という愚痴でした。チャンチャン♪
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