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母のベチャベチャ炒飯

炒飯はパラパラこそが最高で、
母がつくるベチャベチャの炒飯は不味い。
そう思って30年近く生きてきた。

中学生のときだっただろうか、
始めて中華屋で炒飯を食べて衝撃を受けた。
これが本当の炒飯だ。
そして思った。
母は炒飯を作るのが下手なんだ。と

それからは自分で炒飯を作るようになった。
どうやったらパラパラになるのか、いや
どうすればベチャベチャにならないのか?
どうすれば母より上手く作れるのか?

そればかりをいつも考えていた。

結婚してからは奥さんに作ってあげた。
自慢のパラパラ炒飯。
子供もきっと喜ぶと思っていた。

子供が1歳を過ぎ、ついにそのときがきた。
30年の思いを込めてパラパラ炒飯を作った。

  
上手くスプーンですくえない。
机じゅうをチャーハンまみれにしたあげく、
不機嫌になって食べるのを止めてしまった。

30年間勘違いしていた。
母は作るのが下手だったんじゃない、
子供が食べやすいように、
「パラパラしないように」作っていたのだ。

下手だと思っていてごめんなさい。
子供を思う愛情だったことに、
自分が親になるまで気づかなかった。

母のように、あえてベチャベチャに作ったチャーハンを、
娘は美味しそうに食べた。
彼女もいつか、生意気にパラパラ炒飯が好きとか言い出すんだろう。

そうなる前に、お婆ちゃんのベチャベチャ炒飯を食べさせてあげたい。
次回帰省したらお願いしてみよう。


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