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DMBOK第16章データマネジメント組織と役割期待

要約

データマネジメントの改善には組織の文化と現状の規範の理解が不可欠です。組織のデータマネジメント機能を向上させるには現行の文化と規範に適応し、関与を促進する必要があります。
データマネジメントの組織設計においては、地方分権型、中央集権型、ハイブリッド型などのオペレーティングモデルがあり、適切なモデルの特定が重要になります。
現行のデータマネジメント参加者と委員会メンバーを特定し、ステークホルダー分析を行い、関与を促進することが重要です。ステークホルダーは自らの目標とデータマネジメントの活動を結びつけることで、長期的なサポートを得ることができます。

前の章

前の章である第15章データマネジメント成熟度アセスメントはこちらです。

現状の組織規範と文化規範の把握

問題意識、オーナーシップ、責任は、データマネジメントへの取り組み、ポリシー、プロセスにおいて人々を活性化し、関与させるためのカギとなります。組織の文化、現状のオペレーティングモデル、人々といった関連する構成要素の現状を理解することが重要になります。

構成要素

組織におけるデータの役割
データに関する文化規範
データマネジメントとデータガバナンス業務
業務がどのように組織化され、実行されているか?
命令系統がどのように構成されているか
スキルレベル

DMBOKより

データマネジメント業務を改善しようとするほとんどの組織は、能力成熟度レベルの中間にあります。関連するデータマネジメント組織を作り上げるには、現状の企業文化と組織の規範を把握し、それに適応させることが重要になります。

適切な人材を見つけるには、組織におけるデータマネジメントの機能的役割と政治的役割の双方を把握することが必要です。様々な業務側のステークホルダーから組織横断で参加を募ることが必要です。これらを達成するには以下のようなことを行います。

  • 現在のデータマネジメント機能を実行している従業員を特定します。彼らを認知し最初に回させ、その後データマネジメントとガバナンスのニーズが高まった場合のみ追加のリソースを雇用します。

  • 組織がデータマネジメントと業務プロセス改善のために利用している手法を調査します。データマネジメント業務を改善するためには、どの程度の変更が必要かを判断します。

  • 要求に対処するため、組織上の観点から行う必要がある変革をロードマップにまとめます。

データマネジメント組織の特定

データマネジメント組織の設計における重要なステップの1つは、組織にとって最適なオペレーティングモデルを特定することです。

データ基盤の処方箋についても同様の記載があります。

地方分権型オペレーティングモデル

地方分権型モデルでは、データマネジメントの責任は様々な事業分野とIT部門に分散されます。1人がオーナーになるのではなく、多くのデータマネジメントプログラムは組織を超えたデータマネジメント活動が統一されます。
このモデルの利点は、比較的フラットな構造で、データマネジメントは事業分野やIT部門と一致することになります。導入や改善も比較的容易です。

ネットワーク型オペレーティングモデル

ネットワーク型モデルの利点は地方分権型と似ています。
RACIを追加することで、組織図に影響を与えずに責任体制を構築できます。一方、役割や責任を維持し、実行する事は負荷となり得ます。

中央集権型オペレーティングモデル

このモデルは最も正式で成熟した形とされています(DMBOK上)。
中央集権型モデルの利点は、マネジメントやガバナンスを担当する正式な役員の地位がこのモデルにより確立されます。トップが1人いて結果責任が明確であるため、意思決定は容易になります。決定は中央集権型モデルを導入しようとすると、一般的に大幅なチェンジマネジメントが必要とされます。役割を正式に分離することで業務プロセスから離れ、その結果、時間が経つと業務知識が失われるリスクもあります。

データマネジメント組織をCIOの下に置かないようになっているのは、データの観点から見ると、ITよりもむしろ業務を支えたいという理由からになります。

ハイブリット型オペレーティングモデル

このモデルは、地方分権型と中央集権型の双方の利点を持っています。
ハイブリット型モデルは、中央集権型データマネジメントを担うチームを持ち、分散された事業部門と連携します。
このモデルの利点は、組織のトップから適切な指示が確立されることです。

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連邦型オペレーティングモデル

このモデルは、グローバルな大企業で機能するモデルとして唯一の選択肢である可能性があります。連邦型モデルでは、集中化分散化のレイヤーが追加されます。
主な欠点は複雑さであり、事業部門の自律性と全社ニーズとの間でバランスをとることが重要です。全社的優先順位が影響受ける可能性があります。

組織に最適なモデルの特定

組織に合う最適なものを特定することが重要になります。
現在の組織構造が中央集権か地方分権か改装か比較的フラットかを評価します。独立した部門や担当地域の特徴を明確にします。
最も重要なのは、意識決定がどのように行われているか決定がどのように実行されているかを見極めることです。この答えが組織が地方分権型か中央集権型のどこの位置にいるかを理解する出発点となります。

重要な成功要因

幹部からの支援
明確なビジョン
前向きに取り組むべきチェンジマネジメント
リーダーシップ統制
コミュニケーション
ステークホルダーの関与
オリエンテーションとトレーニング
導入状況の評価
基本理念の遵守
革命ではなく進化

DMBOKより

データマネジメント組織の構築

現在のデータマネジメント参画者の特定

オペレーティングモデルを導入するときは、データマネジメントに従事している現行チームから始めます。これによって組織への影響を最小限に抑え、チームの焦点が人事や政治ではなくデータであることを確実にしていきます。
まず、データを生成し管理する人、データ品質を測定する人、肩書にデータを持つ人など 確認していきます。必要な役割とその責任を既に担っているのは誰かを調べるために組織を調査します。

委員会参加者の特定

組織がどのオペレーティングモデルを選択しても、データガバナンス運営委員会や作業する人によって行うべきガバナンス作業があります。新しい委員会を始めることがしばしば簡単ですが、そのリスクは初期段階でデータマネジメントに必要な注目を得ることができないかもしれないことです。

ステークホルダーの特定と分析

ステークホルダー分析は、参加者をデータマネジメント・プロセスに関与させ、彼らの役割をオペレーティングモデル内で活かせる最良のアプローチを決定するのに役立ちます。
ステークホルダー分析は次のような質問に答えるとよいとされています。

  • データマネジメントの影響を受けるのは誰か

  • 役割と責任はどう変移するか

  • 影響を受ける人々は変化にどう対応するか

  • 人々はどのような問題や懸念を持っているか

ステークホルダーの関与

各ステークホルダーがなぜ関与すべきかを明確にすることが重要です。
ステークホルダーは自らの個人的職務的目標を理解し、データマネジメントプロセスの活動をそれらの目標に結びつけることができるようになります。この直接的なつながりを理解していないと、彼らは短期的には助けてくれるかもしれませんが長期的な支援や援助はしなくなります。

まとめ

以上、データマネジメント組織と役割期待について解説しました。
データマネジメントは組織をどう変革していくか、そして企業内の影響力がある人が味方をしてくれるかが大切です。
また、組織のフェーズによっては組織構造を変化させることで恩恵を享受できることがあります。大掛かりになりますが、後々楽になってきます。

DMBOKのデータマネジメント組織と役割期待について特に重要な点を解説しました。ただし、非常に量が多いため解説していない部分が多々あります。詳細は本書を手にとってみて下さい。


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