日本酒の入り口はこんなにも狭くて険しい。ごく一般的な現場からのレポート。
地酒フリークスへの提言第三弾。
前回まではこちら↓
先日、よくあるようなチェーン店居酒屋を数軒ハシゴしてきました。
目的は
よくある居酒屋の日本酒事情を実際に飲んで確かめること
そのお店の日本酒を片っ端から注文していって、その味の傾向や状態などを観測する。
「日本酒ってこんなに美味しいのにどうして飲む人が増えないの?」
たまーにこういう声を聴くことがあります。今人気の日本酒を中心に飲んでいる人が言いますよね。でもその人のお酒との出会いの瞬間からちゃんと確認してみないと、その理由は紐解けないでしょう?入り口として使われる可能性のあるチェーン店居酒屋、これを再確認する必要はあるはず。
なんでこういうの誰もやらないんでしょうね。美味しくないってわかっているから?お金の無駄?
それ、あなた最近飲んで確かめたの?
やってないならやりましょう。
というのがこれ。
店名は伏せます。
写真で分かる人もいるでしょうけどね。
まだ3店舗しか見れていないので気になった方からの感想は随時お待ちしてます。
一緒に参戦した方も感想を挙げて頂いているので、ツリーも含めて全部是非見て頂いければ幸い、、、
というわけで先に結論。
・日本酒はお店としても推しのドリンクではない
・値段が圧倒的に高額
・サワーやハイボールなどと比較した場合、単純に「美味しくない」
こういうところです。
ちょっと詳しく説明しましょう
チェーン店にとって日本酒とは?
結論の上2点に関わるところ。
日本酒は他の飲料に比べて原価率がかなり高い傾向にあります。
飲食店の原価率は、食品も含めると高いところでも30%を切るように設定されることがほとんどですが、チェーン店だと20%を切るような努力がされることでしょう。フードは比較的原価率高めにし、ドリンクの原価率を下げてバランスをとる所が多いはずです。
サワーや焼酎は原価率が低いドリンクの筆頭で、ものによっては原価十数円、原価率にして数%なんていうものもあります。こういった商品が数多く売れると、店としてはすごく「オイシイ」わけです。
それが日本酒の場合。
スーパーで日本酒のコーナーを覗いたことがある方は多いと思いますが、その価格は覚えているでしょうか。どんなに安くても瓶のタイプは一升瓶1500円。チェーン店に並んでいるものだとしても一升瓶で購入すると2000円を超えるものも多いでしょう。そうすると1合600円で売るとしても原価率25~30%。お店からすると総合的な原価率を圧迫する商品になります。
そこまでこだわりの無いお店の場合、そういった「オイシクナイ」商品を打ち出す理由には繋がりませんよね。
日本酒はアルコール度数も高いので、ビールやサワーなどに比べると「もう一杯」に繋がりにくい商品です。そうなると1杯である程度の利益は確保したいでしょう。
結局のところ日本酒はセール割引もしづらく、売れづらく扱いにくい商品になってしまいます。
飲む人からはどうなのか?
これはちゃんと日本酒が管理されていたと仮定しても絶対に覆らない点。
日本酒が根本的に不利な点といっても良いです。
こちらはとあるお店のメニューです。
見た瞬間に味がある程度想像でき、かつ「美味しい」ことが簡単に伝わります。
果物の甘味や酸味はヒトにとって端的に「美味しい」と伝わるものです。それはもう口に含んだ瞬間に美味しいと感じますよね。
お米や芋も美味しいとは感じますが、咀嚼が必要なこともあり、果物とは「美味しい」のベクトルは全くの別物でしょう。
これは日本酒でもフルーティーなタイプと旨味主体のものとで同じような反応がみられます。
それでいて日本酒より価格が何割か安い。
フルーティーな香味の商品がほぼ無く、提供されるまでの管理によって味わいの劣化していることも多い日本酒よりも、間違いなく安くておいしい。
実際に今回注文した日本酒でも、熱による老ねや香味の飛び、意図されていないとも思われる熟成、業務用酒燗器の洗浄不足からの劣化がみられました。売れない商品だからというのもありますが、適切な商品管理を出来る環境を整えられている店舗は極少数でしょう。
こんな状況では「とりあえずの美味しい」を求める人にとって、日本酒を選ぶに足る理由がどこにあるでしょうか。
言い過ぎ?どうでしょうね。
でもこれが現実でしょう?
何か問題あるの?
「結局のところ、おいしい日本酒が飲みたかったらこういうチェーン店に行かなければいいんでしょ?」
そう思いますか?
それも一つの解でしょう。
でもこれはそういう問題では無いんです。
多くの人は忘れているかもしれませんが、巷で美味しいとされているフルーティーやジューシーだと評される日本酒が話題になっているのは、東京や大阪をはじめとした大都市に限ります。郊外や田園風景が広がる場所に於いては、そういった日本酒に触れる機会など滅多にありません。どこかで日本酒に目覚めた人が出てこない限りは、接することの出来るのはスーパーやチェーン店居酒屋にあるようなものがほとんど。あとは地元の酒蔵さんの地元向け晩酌銘柄。
首都圏に住んでいる人は別に何とも思わないかもしれません。
選択肢は別に色々ありますからね。お酒もたくさんあれば、それを扱う専門的な飲食店や酒販店も数多くあります。
しかし首都圏以外ともなれば事情は変わります。また、周囲にお酒に詳しい人がいない場合は首都圏でもそうでしょう。
家やお店ではじめて飲むときに「おいしい」という印象が得られなければ、その後選ばれる理由は激減します。他の選択肢が以前に比べて非常に増えた現在では尚更です。
発泡酒やビール、レモンサワーなど、大手メーカーが力を入れていて美味しい売れ筋商品に対して、日本酒が今後戦っていけるでしょうか。
確かに美味しいと思われる日本酒は増えています。しかし、それを享受できているのは極一部といっても過言ではありません。
國酒として胡坐をかいていた業界が、今ちょうど岐路に立たされているのでしょうね。
これまでのような造れば売れる時代はそろそろ終わりが見えています。
これからどう変化していくのでしょうか。新しい飲み手を生み出すには、どこか1社だけでは絶対に成し得ません。
黒船のような危機が訪れなければ変わり得ない。
そういったところは伝統的な産業らしいですね。
ではまた。