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【怖い話】「絶対に誰にも言うな」と言われた幽霊が出そうで出ない怖い話

まず最初に、この話は某怪談系YouTuberに提供させていただいた話である。似ていると思う話があればこの話が元になっているはずなのでソッとしておいていただきたい。

蔵で肝試し

これは私が以前働いていた職場の先輩である松村さん(仮名)から聞いた話だ。場所は東日本のある地方とだけ言っておこう。

松村さんが高校生の時、同級生にS君という人物がいた。
週末ともなればお互いの家に泊まっては朝までゲームをしたりと、松村さんとS君は非常に仲が良かった。

S君の家は古くから代々続く農家で、かなりの土地持ちであり、家も大きく敷地内には離れや蔵がいくつかあったそうだ。

ある日、松村さんがS君の家に泊まりに行った時、たまたま放送していた心霊番組を観た。

そっち系の話が好物だった松村さんは、S君の家にある蔵に目をつけた。S君の自宅の脇には古く大きな蔵があったのだ。

「お前んちの蔵、かなり古いよな?曰く付きの物やお宝とかあるんじゃね?」

松村さんがそう聞くと、S君は露骨に嫌そうな顔をした。

「うちの蔵だけは絶対に入ったらダメだ。俺も入ったことないし親父や爺ちゃんに殺される。」

なんでもS君が物心ついた頃から、死にたくなければ蔵には近寄るなと口うるさく言われていたらしい。

そんな風に言われると見てみたくなるのが人間だ。松村さんの好奇心は益々倍増した。

―――夜中こっそり見てやろう。

その日の夜、ゲームに疲れた二人は3時頃布団に入った。

―――数十分後、S君の寝息が聞こえてきたところで松村さんはこっそりと部屋を出て、蔵に向かった。

母屋から20メートルほど離れた蔵に足音を殺して向かう。田舎の夜は驚くほどに真っ暗だ。先ほど心霊番組を観たこともあり、松村さんは少しビビっていた。

蔵の前に着く。大きな蔵だ。蔵は2階建てのようで二階と思われる部分に小さな窓がついている。
扉には古びた頑丈な南京錠が付いており、取っ手には太い鎖がぐるぐると巻き付いていた。

やはり入れないか。

とりあえず蔵を一周してみるが、中に入るどころか中を覗くこともできない。窓のような部分も2階にしかないようだ。諦めた松村さんが母屋に戻ろうとしたその時、誰かにグッと肩を掴まれた。

驚いて振り返るとそこには寝ていたはずのS君の姿があった。

「本当にやめてくれ」

怒りを通り越して軽蔑するような目で松村さんを見るS君。

その表情を見た松村さんは何も言えず、諦めて母屋に戻り寝ることにした。

翌日、どうしても気になった松村さんはストレートにS君に聞いてみた。

「どうして蔵に近付くことさえダメなんだ?俺はまだしもSが近付くのも許されないって、あの蔵には何があるんだ?」

「―――幽霊が出るんだよ」

小声でそう呟くと黙ってしまったS君。

それ以上は聞いてはいけない気がした松村さんは、何となく居づらくなり、その日はS君の家を後にした。

その後も高校を卒業するまでは仲の良い二人だったが、蔵の話が話題になることはなかった。
高校を卒業後、松村さんは東京に引っ越してしまったため二人は疎遠になった。

蔵の真実

それから10年ほど経った頃だろうか、松村さんはそれまで勤めていたブラック企業を辞め、半年ほど地元でゆっくりすることにした。

同級生達とお酒を酌み交わしたり、釣りに行ったりと田舎ライフを満喫していた松村さんだったが、ふとS君に会いたくなった。

連絡をしてみると、S君は家業を継いで今も実家に暮らしているらしい。

松村さんはS君とお酒を酌み交わすべく、早速S君の家に向かった。

以前と変わらない佇まいのS君の家、相変わらず大きな敷地に大きな家が建っている。あの蔵も以前のままだ。

松村さんを歓迎してくれたS君、その日は夜遅くまで懐かしい話に花を咲かせた。

夜も更け、松村さんは昔のように泊めてもらうことにした。寝る前になんとなく、今ならもういいかなと思い、蔵の話を切り出した。

「昔、俺が蔵に近づいた時、本気で嫌がってたよな。あの蔵には何があるんだ?幽霊が出るって本当なのか?」

「―――誰にも言うなよ」

大人になったS君は誰にも言わないということを条件に、あの蔵に何があるのかを話し始めた。

「あの蔵って江戸時代からあるらしいんだけど、爺ちゃんが子供の頃にはもう封印されてたらしい」

「中には普通にガラクタなんかが入っているだけなんだけど、問題は二階なんだ」

「俺の家って一応由緒正しいだろ?この辺りでは一番力があった家だから、昔は障がい者が生まれることが恥ずかしかったらしくて、障がい者が生まれたら世間から隠したらしいんだ」

「昔は障がい者が生まれたら産婆さんが子供を……なんてこともあったみたいだけど、うちの先祖はそれができなかったらしい、やっぱり家族を殺すなんてできないじゃん。だから……こっそり蔵の二階に閉じ込めて生活させていたらしい。」

「でもさ、あんな暗くてジメジメした場所に閉じ込められてまともに生きていける訳ないよな」

「閉じこめられた人、10歳くらいで死んじゃったらしいんだけど……」

「まだ中にいるんだよ。その子の亡骸がそのままなんだ。世間から隠されていた子だから埋葬されていないんだ。だからあの蔵には幽霊が出るんだ」

松村さんは言葉が出なかった。

近づいただけで怒られる。そりゃそうだ、中には不幸な人生を送った人の亡骸がそのままなんだから。

今もその蔵は同じように佇んでいるそうだ。

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