見出し画像

【ドラフト】『カルドハイムリミテッド大考察(準備編:1『前置き+予顕』)』

こんにちは、ぞんびです。

前回の記事シリーズよりnoteに場を移しましたら、ゼンディカーの夜明けドラフトがそもそも面白かったからか望外の反応いただけまして大変感謝です。
思考整理のためにも恒例行事にしていきたいので、今回は『MTGA上でのカルドハイムドラフト』について発売に先立って予測の形でまた考察記事を書かせていただこうと思います。

で、す、が。
一つ予定と違うことがありました。そう、極寒の北欧をベースにしたからかあるいは神話というのが人間が読み解くには早かったのか、カルドハイムのドラフトは少なくとも今予測を立てるには難しすぎたのです。
というか正確には『M21とゼンディカーの夜明けが簡単すぎた』という側面も感じますね。
いずれにせよカルドハイムを難しく感じるのは事実であり、このままカード評価に向かったとしても自分でも整理がうまくいかず、また読んでいただける皆さんにも描いているイメージが届きにくいと感じました。
そこでまずは『カルドハイムというセットの構造、各登場メカニズムの分析』を先にいつもよりしっかりとやる回を設けることにしました。
それぞれを分析することでカード個別評価をする際にどこを見ればいいのか、何を考えればいいのか、何を比較すればいいというのかという部分をわかりやすくするのが目的となります。

というわけで、この記事はそれぞれのカルドハイムのメカニズムや特徴を深堀していく回となります。主に書きたいのは予顕についてなのでかなり文字数の偏りがありますがお付き合いください。

序文後編はこちら。
白編はこちら
青編はこちら
黒編はこちら
赤編はこちら
緑編はこちら
多色&無色編はこちら

追記:ページ下部に、MTGAドラフト交流用ディスコードサーバーへのリンクをつけました。


1:『予顕』 ~未来は何を生むのか~

一つ目のカルドハイムのメカニズムは『予顕』です。
大雑把に説明すると『本来のマナコストの代わりに”2マナ+α”の分割払いができる』という能力です。

画像1

細かい能力やルールの説明をするのが目的ではないので公式の紹介などにそこは譲りますが、この記事ではこの予顕が『実際に何をもたらしてくれるのか』というところに注目していきたいです。

1-1:予顕は何もしない

『予顕とは何もしない能力である』ということをまず説明したいです。
というのは、予顕は本質的にカードを強くする能力ではないからです。
例えば直近であればキッカー、脱出、出来事などは全て『普段よりも多くマナを支払うことで効果が強くなる』能力です。
また、サイクリングや両面カード(裏面が土地であるもの)などは『普段よりも少なくマナを支払うことで小さい効果を発揮できるようになる』能力と言えます。
その一方で予顕はどれだけマナを支払おうと、カードそのものが強くなるわけではありません。上に代表として出した占い鴉はどこまでいっても3/3飛行でしかありません。
そのため、予顕はカードの強さを直接変えるものではなく、只々『分割払い』をしてくれる能力に過ぎないということです。
つまり予顕を分析する上ではこの分割払いがどのような影響をもたらすかを探るべきでしょう。

1-2:予顕はカードを早くする?

『分割払い』を見たときに真っ先に考えやすいこととしては『分割することによって重いカードを本来より早いターンで唱えれる、疑似的なマナ加速をする能力ではないか』ということではないでしょうか?
例によって占い鴉も本来4マナであることを3ターン目に出すことができているのでその理解は正しいともいえます。
ですが、予顕を持つカードを全て確認すると少なくともドラフトではその考えはあまり正しいと言えないかもしれません。
というのも、これは意図的なデザインと思われるのですが予顕には『強いカードを早く唱える』タイプのものがほとんど存在しないんです。一部存在しますが神話レアやレアになりますね。
『強いカードを早く唱える』タイプとは、まず『大きいクリーチャーで予顕を持っている』ものが思いつくと思いますが、なんとこのタイプはコモンに1枚、アンコモン0枚です。しかも大きいと言っても4マナ3/6であり、そのクリーチャーで積極的に支配して攻めれるという感じではありません。

画像2

神話レアにはかなり強いものもありますが傾向を語る際にはあまり数に入れなくてもいいでしょう。
『早く唱えて強いクリーチャーでない呪文』となると、さらにハードルが上がります。例えば”3マナラスゴ”ことドゥームスカールもリミテッドで3ターン目に打っても単体除去と変わらない可能性が十分にあります。その他の呪文も、『本来より早く唱えて強くなる』デザインのものはほとんどないと言えるでしょう。
カード1枚ずつ見て傾向を探った感想としては予顕は、『強いカードを早く唱える』ためのものではないと言い切って差し支えないと思います。

1-3:予顕は損をする能力である?

ここでもう一つ悪い点を指摘すると、実は予顕は潜在的に損をしやすく、また、しやすいようにデザインされていると言えます。
”予顕をすること”が損になるケースは非常に多いと言えます。
最も顕著な例ですが下図の3枚と土地のみが手札にある時に2ターン目に占い鴉を予顕しようとすると明確に損をすると言えます。
3ターン目に占い鴉を出すと4ターン目に盾仲間か思考盗みのどちらかしか出すことが出来ず損をします。
また、2ターン目に予顕→3ターン目に思考盗み→4ターン目に占い鴉+盾仲間とすると最終的な盤面は2ターン目に盾仲間→3ターン目思考盗み→4ターン目占い鴉としたときと同じにもかかわらず、2ターン目に盾仲間を出していない分で1回分戦闘で損をします。

画像3

この、『予顕したカードをうまく出せないとマナカーブがゆがむ』ことと『2マナ払って予顕したターンは何も起きないためテンポとして一時的に2マナ損している』という点が予顕の本質的な部分であると言えます。
また、総支払マナでも損をするケースがあり得ます。
それなりの数のの予顕カードはそもそも予顕すると総支払マナが多くなるようにデザインされていますね。また、さらに占い鴉は予顕コスト+2マナが本来のマナと一致しているため分割しても損をするようには見えません。が、占い鴉だけだと3ターン目に1マナ余ってしまいます。もしこの余ったマナを使えないのならばそれは『トータルで5マナ払っている』ことと変わらなくなります。そのため、そもそも予顕は損をしやすいと結論付けました。
また、損をしやすくデザインされているとも思う理由ですが、『予顕コストが3マナであるカード』が殆どないことです。
予顕の最も強く使えそうなパターンである2ターン目予顕→3ターン目唱えるをやろうとすると、必然的に1マナ以上余り易いと言えますね。もちろん、3ターン目に予顕した場合にも1マナ損しています。
これらのことから、予顕をすることは損をする可能性を常に秘めていると考えています。

1-4:予顕とは提案する能力である

ここまで予顕の悪いところを述べてしまいましたが、では予顕は悪い能力化というとそうではありません。今まで述べてきたポイントは全て『予顕を1側面としてしか使わない』という考えに基づいたものです。
実際に運用してみれば、『予顕によって早く使ったカードが有効だった』『予顕によってマナが余らなかった』などのケースは十分あり得るでしょう。
具体的な例を二つ出してみます。

画像4

初手が上図のパターンA,Bのカードと土地しかない手札の場合、もし占い鴉/ドーゥムスカールの予顕者の代わりに予顕を持たない同じマナコストのカードであったなら、というケースですね。どちらのケースでもその場合はあまり好ましくない手札だと言えます。しかし予顕持ちのカードがあることによってパターンAでは2T目に2マナ、3ターン目に2マナ、4ターン目4マナ。パターンBでは毎ターン全てのマナを使うことができます。両方のパターンで大きく得をできていると言えるでしょう。
このように、予顕は『予顕があることによってマナを支払う効率が”よくなることがある”選択肢を用意する』能力だと言えます。必ず予顕をする方がいいわけでもなく、かといって予顕がなくても良いわけではないですね。
そもそもの話なんですが、予顕がついているカードはそのすべてが『別に予顕がないとしてもマナコストに対して水準以上の効果を持っている』カードです。そのため選択肢として『予顕無しで使う』ことを選んだとしても別に弱いカードになるわけではないのがポイントですね。そもそも普通以上のカードに、より効率が良くなる可能性のある選択肢がある、という能力だと言えます。
どうせ予顕がなくてもマナの支払いでは損する可能性があるところを、予顕があることによってそうならない可能性を生む。ゲームを長期的に見て書くターンで最も効率のいい(影響の大きい)マナの支払い方を選択させてくれる能力と言えるでしょう。

1-5:予顕とは支えあう能力である

予顕は選択肢を用意してくれる能力だという結論になりました。
では、その選択肢を用意してくれる能力をうまく扱うためにはどうすればいいのでしょうか?
答えとしては『選択する必要性を生む』ことだと思います。
選択する必要性とは、つまり『他にもマナを使う手段を用意する』ことですね。そりゃぁ、手札に予顕カード1枚しかなければ効率いいもくそもないわけなので。
しかも、他の手段はより数が多く、またより小刻みで選べる方が『予顕を最も効率よく使う』選択肢を選びやすくなると思います。
つまり『予顕するという行動を強い行動にできるかどうかは、予顕以外のカードが担っている』と言えますね。予顕に関連するカードの評価及び実際にピック/プレイする際にはその他のカードを強く意識しましょう。

1-6:見えない予顕を警戒するべきか

あえて触れなかった予顕のもう一つの要素である『予顕したカードは伏せられた状態で追放される』という部分についても触れておきます。
まず、この処理によって予顕は手札破壊に対して耐性を持っていると言えます。ただし、カルドハイムリミテッド環境では手札破壊はそ少なめであり、またその中でも実用的な手札破壊は『予顕されることに空振りすること』へのリスクを補う能力が一応ついています。そのため、評価軸に入れるほど意味のある要素だとは考えていません。
また、『予顕カードを伏せることにより相手を警戒させられる』という点も一見あるように思えます。伏せられたカードが除去かもしれないからクリーチャーを出すことをやめようか、みたいな話ですね。
ただ、これも基本的には無意味な警戒だと思っています。そもそも伏せられたカードを警戒するのであれば、手札にある状態のカードも同様に警戒するべきだからですね。予顕されてようがされてまいが『襲来の予測(打ち消し)』を引かれていると考えるならそれは常に警戒するべきですし、一度予顕された以上いくら警戒してもいつか打たれるカードが殆どなので警戒して手を控えることは純粋な損になりやすいです。
もちろん、ここでいうのは『伏せカードという存在そのものに過度に警戒するべきではない』という話であって、相手が伏せカードと緑マナが余っているなら『マンモス化(ジャイグロ)』は警戒するべきです。ただ、手札にある+3マナ余っているという状態でも同じように警戒するべきなので特別話が変わるわけではないということですね。予顕されているカードを警戒したほうが得をする状況なのか見極めるべきでしょう。

1-7:予顕の可能性

最後に、『選択肢』の能力である予顕を能動的に『強く使う』方法についてです。
予顕は以下のシナジー/方法論を意識することで、『選択肢として強い』という立場から『積極的に予顕することが強い』に格上げされることが可能だと思っています。
ただし、実際にはこれら及びそれらを用いる戦略がどれほど有効かはわからないのでお気を付けください

A:軽い除去
そもそもそういう予顕が多いし強いよねって話ですね。
除去は、ただ早く打てばいいというものではなく相手や自分の動きと噛み合わせるタイミングが重要になりがちなカードです。こういうようなカードであれば、2ターン目に予顕したとしても『何もしなかった損』は発生しにくいと言えるでしょう。
また、タイミングを選ぶということは特にインスタントの除去に関しては『必要かと思って構えたけど打てなくて構えた分のマナを損した』という現象が起きえるということです。が、予顕による分割払いは『損するはずだった分のマナをあらかじめ払っておける』ことによってこのリスクを大きく軽減しています。
そもそもカルドハイムにある予顕つきの除去(あるいはコンバットトリック)は予顕無しでもコスト相応の効果であることが多いためこれらのカードについている予顕は使う機会が多いでしょう。

B:ダブルキャスト
カルドハイムのアーキタイプの一つですね。『同一ターンに呪文を2回唱えること』を参照するカードがいくつかあります。
それらのカードは通常のマナカーブで動いていると活用がしづらくも感じるのですが、予顕の分割払いにより『予顕するターン』と『呪文を唱えるターン』を分けることができ、一気に呪文を打つターンを作ることができます。
これらのボーナスを得ることで、損したマナの分を取り戻すことが可能でしょう。

C:デッキを重くする
既に出した結論として、軽いカードが多い方が選択肢として強くなると言いましたが、これは逆の発想です。
そもそも選択肢ではなく『早いターンにマナを使うカード』としての役割を予顕に与える戦略ですね。予顕以外のカードを重いカードを意識して取ることになります。
通常そういったピックをすると序盤に有効な動きを取りづらく序盤のマナを損することになりますがその損する分を予顕に充てることで損を抑えようという発想ですね。
また、予顕もそれぞれ本来のマナコスト相応の効果があることを考えるとデッキの中の平均カードパワー(マナコスト)をあげることができると言えます。環境が遅く長くなった場合、トップデッキ勝負での優位性がつくことが期待できます。


2:最後に、そして続き

予顕だけで書きすぎました。
これ以上は書きたいことが散らかる危険性もあるので、一度パート分けさせていただこうと思います。
次パートは以下の内容を予定しています
1:『氷雪の扱いについて』
2:『誇示の殴り方』
3:『極寒のカルドハイムはアーキタイプが薄い』
4:総括

の四点です。その後個別のカード評価記事に移る予定ですね。
今回の記事、そしてカルドハイムリミテッドも楽しみながら記事を充実させていこうと思いますので宜しければお付き合いください。
僕の方で書かせていただくこの記事シリーズは、リミテッドに参加する際に『どういう考え方をすればカードを評価できるのか』『どういうことを考えて評価したのか』という考え方がまだわからない方も意識して、その流れが伝わるように書かせていただくつもりです。
そして読者の方には、ここの評価を絶対視するのではなく、僕がそう考えた理由や流れを元に自分なりに考えてみていただけるとより嬉しいです。
また更に更に、意見交換も是非させていただきたいです。是非賛成反対それぞれ意見を届けてもらうとよりリミテッドが深まるんじゃないでしょうか。お待ちしてます、ぜひ。

また更に、意見交換やドラフトを一緒に観戦したり交流する場としてDiscordのサーバーをこの度立ち上げました。
まだ立ち上げたばかりでこれから活動をしていく感じですが、もしよければどなたでもお気軽に来ていただいて一緒に活動やご意見いただければMTGAのドラフトを楽しみやすいと思います。この記事を読んでいただいたことをきっかけにドラフトを始めてみたいという方もぜひ!

リンクはこちら。

また、今回の記事は無料公開としていますがもし記事読まれたかたでご厚意でサポートしていただける方がいましたら是非今後のMTGAでの活動や主催しているMTGA大会企画『まじ☆すと』の運営資金とさせていただきます。

ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?