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筋力トレーニングにおいてのストレッチとウォームアップ~違い、目的、利点~

ストレッチという言葉と、ウォームアップという言葉は、しばしば同じ意味で使用されることがある。多くの人がトレーニング前や、トレーニング後に準備運動を行うはずだが、それがストレッチであるかウォームアップであるか、どのような目的で行っているか明確な人は多くない。今回の記事では、ストレッチとウォームアップの違い、目的、及び利点を簡単に説明したのちに、全てのストレッチとウォームアップに共通する事柄を説明する。


ストレッチとウォームアップの違いとは

ストレッチとは腱や靭帯、骨格筋を引き延ばすこと、ウォームアップとは身体を温めることを意味する。ウォームアップとストレッチは、行う目的が異なるという点で区別することができる。ウォームアップは、身体の温度を上げ、血流の流れを良くして筋肉へ供給される血液量を増加させるために行われる。一方でストレッチは、腱や靭帯、骨格筋を引き伸ばし関節の可動域を広げるため、また身体の柔軟性を高めるために行われる。


ウォームアップの利点

ウォームアップを行うことで、自身の身体が運動を行う準備をすることができる。つまりウォームアップにより筋肉が運動に動員される準備が完了する。

例えば、ベンチプレスやサイドレイズ等肩関節が関与する運動を行う前にローテーターカフをウォームアップすることで、ローテーターカフを運動に動員させやすくするとか、メインセットの前に軽い重量で1セットこなすなどはウォームアップである。ウォームアップで体温を上げ運動の準備を行うことで、急に運動するよりもケガを予防することができる。

[i][ii]複数の研究から、体温の増加と運動パフォーマンスの間には一定の相関関係があることが示されている、ウォームアップによる体温の増加は、身体を円滑に動かすことに貢献する可能性が高い。

[iii]ウォームアップが有効かどうかを調べたメタアナリシスでも、32個のウォームアップに関する研究の79%で、ウォームアップが運動パフォーマンスを向上させるとされており、ウォームアップが運動パフォーマンスに悪影響であるとされる研究はなかった。このことからも、ウォームアップを行って損することはなく、行うべきである。


ストレッチの利点

ストレッチを行うことで、腱や靭帯、それに付随する骨格筋が引き伸ばされ、関節の可動域を広げることができる。関節の可動域が広くなることで特定の運動を円滑に行うことができ、ケガを予防することができる。もしストレッチを怠ると、主動筋の可動域が狭い状態で運動を行うことになる。可動域の狭い主動筋が円滑に行うことができない範囲の運動を補おうと、他の筋肉が悪く動員されるため、運動の効率も悪くなり、ケガを誘発する危険性も高まる。


ストレッチの共通点

ストレッチの目的から考えると、全てのストレッチには、解剖学的機能の逆の動きを行うという共通点がある。

まず前提の知識として、ヒトの骨格筋は随意的に伸びることができない。人の骨格筋は、拮抗筋が収縮することで、結果として引き延ばされる。ストレッチは腱や靭帯、骨格筋を引き延ばし、可動域を広くすることが目的であるから、任意の部位をストレッチしたい場合は、任意の部位の拮抗筋を収縮する意識でストレッチを行うと良い。

例えば多くの人が行っている三角筋後部のストレッチがある。三角筋後部の主な機能は腕を鎖骨のところまで上げた状態で後ろに引く肩関節水平伸展である。肩関節水平伸展の逆の動きは腕を鎖骨のところまで上げて前に回す肩関節水平屈曲であり、この動きは大胸筋の主な動きである。この動きでは、大胸筋が収縮することで、三角筋後部やそれに付随する腱、靭帯が引き延ばされることになる。逆に大胸筋をストレッチさせたいときは三角筋後部を収縮させる意識で行うとストレッチできる。

三角筋後部と付随する腱や靭帯を引き延ばすストレッチ。このストレッチを行うと、大胸筋が収縮していることが分かる。

「ストレッチは解剖学的機能の逆の動きを行う」このことを理解しておけば、筋肉ごとにストレッチを覚える必要もなく、自分が引き延ばしたい部位を引き延ばすことができ、ストレッチの目的を達成することができる。


ウォームアップの共通点

ウォームアップの目的から考えると、ウォームアップには、解剖学的機能の動きをとても軽い負荷を乗せて行うという共通点があるといえる。

ヒトの筋肉はヒトの組織の中でも特に多くの熱を産出する。ウォームアップの目的が身体の温度を上げ、血液の循環を向上させることであるため、解剖学的機能を行い筋収縮により体の温度を上げることが必要になる。

ちなみにストレッチには静的ストレッチと動的ストレッチの2種類があるが、ストレッチとウォームアップの目的から見ると、動的ストレッチはウォームアップの一種であると私は考える。

動的ストレッチは、腱や靭帯をひき伸ばすというより筋収縮が起こっているように思える。

ウォームアップの注意点として、かなり軽い重量で行うということがある。ウォームアップといっても、解剖学的機能を行っているため、ある程度重い重量で行うと、もはや筋力トレーニングになってしまうからだ。

最後に

ストレッチとウォームアップは、それぞれ行う目的が異なり、両方に筋力トレーニングにおいて利点がある。ストレッチとウォームアップを行うことで、ケガを防止し、運動パフォーマンスが向上するため、トレーニング前には行うべきである。


参考資料

[i] https://tinyurl.com/2jkpz43l

[ii] https://tinyurl.com/2nrkddom

[iii] https://tinyurl.com/2pzuq5qc


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