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ただいま神様当番/青山美智子〜読書感想文〜

「わし?わし、神様」
「お願いごと、きいて」

目の前に謎の老人が現れ、突然そう言われたら。
しかもじぶんの腕にデカデカと神様当番なんて文字が書かれていて、お願いごとを聞かないとそれが消えないと言われたら。

私ならたぶん、「なんで自分ばっかり!」なんて言って、すごく落ちこむ。

何かが欲しい、誰か。

1番目の主人公・水原咲良。
彼氏はおらず、友人は結婚し、合コンに呼ばれてもあくまで数合わせ。
大好きなアイドルグループのチケットはなかなか当たらず、会社には嫌味な上司が待っている。
口癖は「なんか楽しいことないかなぁ」。

ある朝目が覚めると、自分を神様と名乗る謎の老人が家にいた。

「わしのこと、楽しませて」

咲良の腕に乗り移った神様はやりたい放題だ。
自分だったらぜったいやらないようなことを、意思とは無関係にかってにやりはじめてしまう。

いつになったら楽しいことが自分に起こるんだろうと順番待ちをしていたはずが、やってきたのはやっかいな神様だった。

落ちこんでるところにさらに落ちこむようなできごとが。

全五章のおおまかな展開は大きく変わらない。
なにかがしたい。でもなにをすればいいのかわからない。そんなところに、余計に話をこじらせるかのような神様が、やってくる

欲しいものをくれる人は

神様の要求をかなえるために、登場人物は忙しく動く。なにせなにをしたら神様が満足するのかわからない。

やったこともない習い事に挑戦したり、
苦手なスポーツをやってみたり、
自分の生徒に本音をぶつけてみたり。

神様がついたとなれば、普通はいいことが起こるはず。
しかし世の中そんなに甘くはない。毎日ある嫌なことは、やっぱり毎日あるのだ。

ささいなできごとでも毎日続けばいつか心が折れてしまう。でも本当に折れそうなそんなときに、神様を満足させるために嫌々やっていた"あの行動"が突然役に立ってみたりする。

やってみると案外、「なんで今までやってこなかったんだろう」と思うような簡単な行動が、目の前の事実を大きく変える。

だがそれをやったのは神様ではない。
登場人物自身。つまり自分自身だ。
事実を変えたのは神様ではなく自分。
欲しいものをくれるのは、自分自身だった。

総評

これは、神様という非現実を介しているが、ある意味ではとても現実的なストーリーなのかもしれない。

なにか嫌なことがあるとそればかり見てしまいがちだが、ちょっとしたことで現実が大きく好転したり、違う視点を与えてくれたり。

自分で自分を楽しませる。
自分の幸せを自分で作る。

簡単なようで難しい。
やってみたいけど少し怖い。
でも、やってみたい。
そんな気持ちを一押ししてくれる、暖かい作品だった。

番外編-素直な気持ち-

青山美智子さんの作品を読んでいて思うことは、素直な気持ちを持つことはとても重要だなということである。

例えば、仕事に不満があるとする。
毎日その不満を体感しないといけないことが嫌で嫌で仕方ない。

だがある日、そんな不満の原因となっていた嫌味な上司とじっくり話した結果、上司にもいろいろな事情があってのことだったとわかったとしよう。

私はそんなとき「この人にもこんな事情があったのか、自分のことばかり考えてしまっていたな」と素直に反省できるだろうか。

「どんな事情があろうと、あんな嫌味なことを毎日言ってきていた事実は忘れないからな!」と心の中で毒づいてるのではないだろうか。

前者と後者、どちらの考え方をする方がいいのかは本当に人それぞれだと思う。

しかし私は前者の考え方をできるようになりたい。人を恨んでも仕方がないのだ。
それに、自分の幸せを作るのは自分なのだ。

青山美智子さんの作品はとても身近に感じられることが多く、自分ならどうかと考えを巡らせることがとても多い。

自分の心が疲れたとき、自然に手に取りたくなる作品でもあるかもしれない。

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