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他塾の高校受験国語指導に言いたいこと

はじめに

ぼくはとある上場企業の経営する個別指導塾でアルバイトの講師をしています。最近は大阪府公立高校一般選抜国語C問題を解く子の授業をする機会が多いですね。

生徒の中にはM教室やR塾などの有名集団塾に通っていた子も多く、他の塾が採用しているカリキュラムを目にする機会もそれなりにあります。どちらの塾も独自で作成している教材の出来がとても良いです。それを見れば、広告に書かれている上位難関校への合格者実績も納得の数字です。

しかし、集団塾であるが故に、個々の生徒に対して適切な指導が行き届いていないことも事実です。この文章では実際にぼくの出会った事例を挙げながら、上記ふたつの集団塾のよいところとよくないところについて扱います。そして隙さえあれば自分の考えを語ります。はい。

事例①読解問題本文の通読をせずに設問に対処セヨ(R塾SSSクラス)

これは国語科ではアリガチな指導です。小学校高学年から大学受験まで、誰もが一度は通ってきた道だと言えます。読むのが遅かったりする「問題」を抱えた生徒に対しては、この指導が行われることが多いです。また、大学受験などの読解問題では有効な場合が少なからずあることも事実ですよね。

しかし、この方法での読解が最初からできる子なんていません。本来この方法は、読解問題を解き慣れた人間(=それこそ「講師」のような人)にのみ許された解法であるからです。にもかかわらず、たいていの塾では「傍線部のまわりだけ読んだらいいよ」、「接続詞に注意してれば大丈夫」という軽い言葉ひとつで片付けられがちです。これで読解問題が解けるようになるはずがないですよね。(まぁこれは時給労働者であるアルバイトの塾講師としては正解の行動でしょう。成績上げようが下げようが短期的な給料は変わらないなら、楽なほうがいいですよね)

この点において、R塾のカリキュラムは大変に優れています。R塾のS S Sクラスでは、本文を読み飛ばすための訓練をオリジナルの教材を1冊用意して行っています。しかも、アクティブラーニングで。生徒数名のグループで読解問題本文の内容について議論させ、その文章全てを要約したひとつの図を完成させるというものです。図解によって読解問題の本文の構造を解読する作業を体験でき、最短経路で「読解問題を解き慣れた人間」を生み出すことができる、ということですね。

しかしながら、そこまでして「本文を読まない」ということに対してこだわる必要があるのか、と問われれば、そんなことはありません。RやMに通う子が実際に戦う相手となる国語のC問題(発展的内容のムズカシイ問題。頭良い学校はだいたいこれ。)に関しては、そこまで時間がタイトではないからです。

読解問題の攻略のために問題本文の構造を理解しようとすることはたしかに効果的かもしれませんが「本文を通読せずに」の指導とは切り離して考えてもよいのではないか、と思います。

こういう訓練をしてきて、そしてこういう指導を受けてきた生徒でも通読が必要な生徒は数多くいます。「この記述見つけられへんかった?」「ワタシ、本文読んでないで」「えぇ、なんで?」「誰か忘れたけど、誰かに読むなって言われたから」。何人と同じ問答をしてきたかわかりません。そのたびに「次のんはちょっと読んでみ!」と返します。

事例②作文を書ケ。提出は数週間後ネ。添削して返却はもっと先ネ!(M教室SSSクラス)

国語のC問題では、というか、大阪府の公立高校入試を受ける子は必ず作文を書かなければなりません。A問題(カンタン)では100字、B問題(フツウ)では260字、C問題では300字以内に書け、というのがここ数年の傾向です。それに伴って、どこの塾でも作文に関する指導をしている場合がほとんどです。(してない塾はさすがに・・・)

これに関するMの教材は本当にすごい。最近生徒が持ってきてくれて、ぼくも初めて見てびっくりしました。オリジナルの問題ではあるのですが、内容はC問題をかなりの精度で再現することができています。問題で問われていることそれ自体の理解は難しくないのに、題材となる短文は解釈に幅が持たせてあり、何を書くべきか判断しづらい。

ほんものの入試問題もそうですが、Mの作成した問題もかなり面白い内容でした。生徒が持ってきてくれた問題に、個人的に取り組みたい欲がパねぇです。

さて、この事例の表題に書いた問題について触れましょう。これは単純に集団塾のキャパシティが大きく関係していますね。

作文に限らず、生徒が問題を解くときにはいろいろなことを考えているはずです。その考えていることに対するレスポンスを返すことも、塾そして講師の仕事だと思います。そのひとつの形が「解答・解説」であり、またひとつの形が「添削」ですよね。

しかし、時間が経てば「何を考えて書いたか」はどんどん忘れ去られるのです。これは当然のことなのです。レスポンスは早ければ早いだけよいのです。Mの先生がそれを分かっていないわけがないのです。

キャパシティの問題はどうにもなりません。せめて、作文などの講座を独立させることはできないのでしょうか。暇な講師(たとえばぼく)などを別に雇うなどして用意して入試対策を進めるほうが、よっぽどよいのではないかと思います。

おわりに

以上、ふたつの事例を上げながら私見を披露してまいりました。

上のような問題というかよくないところがあるからこそ、ぼくのお給料が支払われている点を考えれば、改善などはされずにいたほうがぼくにとっては都合がいいこと、このうえないのですけども。

これでぼくの個人ページを終わります。間違ったことを書いていたら、ごめんなさい。許してください。

お読みいただき、ありがとうございました。

※この文章はフィクションです。実在の人物、団体、企業、学習塾、大阪府公立高校の入学試験などとは一切関係がありません。

※この文章はK大学S部の部誌に掲載された記事の一部を改変し投稿したものです。

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