「こうすべき」から「どうすればそうなる?」へ 人の心を変える技術

D-Lab報告は毎回興味深く目を通しています。テーマはイノベーションですが、様々な識者の方々が指摘する日本企業の問題点を突き詰めると、組織の文化を変える難しさ、という主題に行き着きます。個人的にも日々この問題と向き合う立場にあるため、非常に参考になります。

組織の文化を変える、ということは、そこで働く大勢の人の考え方を変える、ということです。そこで問題になるのは、人が思考や行動の様式を変えるには、頭で理解すると同時に、感情の上でも折り合いをつけなければならない、という点です。過去の自分を否定する辛さ、惰性で行動できないことのコスト増、成果が担保されない不安、、、など変化に踏み切る上での心理的負担は大きいものがあります。

D-Lab資料には、変わらなければならない理由がロジカルに図式化されていますが、そのような「頭」に訴える方法と同時に、大勢の人の心理的な抵抗をどう解消するかの具体的な方法論が、変革を主導する者には必要です。「理詰めで人は動かない」と言いますが、変化のスピードをあげるためには、ロジックやデータによる納得と同じくらい、「心」に働きかける手法を開発することが求められます。

最近の私の関心も、組織論や心理学といった方向に向いています。「こうすべきだ」という指摘にとどまらず、「どうすればそうなる?」という方向へ一歩進めるヒントを得るためです。「ダーク・サイド・スキル」といった書籍がヒットしている背景にも、「実際に組織(=人の心)を動かす」実践的な技術を求めている人が多い現状があるのではないかと思います(「ダーク」というのはある種の釣りで、まっとうに必要なスキルです)。

一方で、心を動かすといっても、その手法自体はロジカルに組み立てられ、メソッド化できると思います。データによって検証することもできるでしょう。スタンフォード大の櫛田氏が指摘されている「社内のオセロゲーム」は有効なメソッドです。その勝ち方を研究することで、汎用的に使える手法が増えていくでしょう。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」で知られる山本五十六メソッドも有名です。

日頃「こうすべきだ」という指摘をしている方々も、一歩進めて「どうすればそうなる?」のアイデアを出し合ってみませんか?

http://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180131003/20180131003.html

http://www.meti.go.jp/press/2017/01/20180131003/20180131003.html