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発達障害の特性を活かす社会へ~広がる未来へのアプローチ~<オンラインセミナー実施レポート>

ぜんち共済株式会社の公式note「ぜんち note」編集部です。
10月26日(土)にニューロダイバーシティをテーマに、株式会社Kaien共同創業者・代表取締役 鈴木慶太さんに登壇いただきオンラインセミナーを行いました。こちらの記事では当日の様子についてレポートいたします。



セミナー開催の背景


近年、発達障害に対する理解と支援の重要性がますます認識されるようになっています。発達障害はASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠如・多動症)SLD(限局性学習症)など、多岐にわたる特性があるため、日常生活や社会生活において様々な困難に直面することが多く、適切な支援が求められています。

発達障害のある方がより良い生活を送るためには、周囲の理解と協力が不可欠です。この理解を促進したいと考え本セミナーを企画しました。


セミナーのポイント


オンラインセミナーの様子

1. 用語で考える発達障害

発達障害には、以下の4つの主な種類があります。

・ADHD(注意欠如・多動症)
・ASD(自閉スペクトラム症)
・SLD(限局性学習症)
・DCD(発達性協調運動症)

これらは明確に分離されることは少なく、複数が重なり合って現れる場合が多いことが特徴です。そのため、本人だけでなく、親御さんや周囲の方がこの点をしっかり理解することが重要です。

【発達障害の課題】

発達障害そのものの課題よりも、発達障害と他の要素が掛け合わさることでトラブルが起こりやすい傾向があります。特に以下の点が注目されます。

IQの高低
IQが高いから得、低いから損という単純な話ではありません。それぞれに特徴があり、支援のアプローチも異なります。例えば、ギフテッド系と知的障害系では対応が全く異なるため、掛け合わさる要素を理解する必要があります。

・ギフテッド
IQが高いこと=学業成績が優れている、というわけではありません。

【精神障害との違い】

発達障害は、生まれつきの特性が一生変わらないものです。一方で、精神障害は、思春期以降に生じる生きづらさを伴う特性とされています。


2. 支援の王道

「心」の前に考えること 
発達障害者支援では、「心のケア」を考える前に、環境を整えることが重要です。主なアプローチには以下の方法があります。

TEACCH(ティーチ)
構造化。物事を分かりやすく、予想しやすくしていくアプローチです。「見える化」や整理・整頓を通じて混乱を減らしていきます。

ABA(応用行動分析)
発達障害のある方に限らず一般の方が上手く活動するために使われる手法ですが、特に発達障害のある方には親和性が高いアプローチです。外部からの刺激を調整し、上手く導いていきます。

いずれも外部刺激に注目し、周囲との環境を整えることで混乱を減らします。

【TEACCH・ABAに対する忌避感への留意点】

これらのアプローチは、「周囲の思いで本人の気持ちを踏みにじる可能性があるアプローチなのではないか」という忌避感を持たれる場合があります。しかし、人間の行動の9割が無意識によるものであり、適応不全な状態にアプローチするので、本人の思いを無視するものではありません。悪影響を及ぼしている無意識の行動を整えてあげるものと考えていただければと思います。

【共感や傾聴の役割】

外部との情報におけるやり取りが混乱すると、こだわり、不注意、衝動が生まれやすくなります。初期段階では、情報の整理が大事となりますが、特に思春期以降は共感的傾聴が重要になります。自分のことを受け止めてくれる存在がとても大きな支えとなってきます。


3. 日本の大人向け支援について

① 盤石に近い日本の障害者支援体制

・障害者雇用率2.5%
現在、日本の法定雇用率は2.5%で、今後もこの数字が下がる可能性はほとんどありません。これは、障害者手帳を持つ人が増えれば法定雇用率がさらに上昇する仕組みとなっているためです。

・多様な働き方の実現
現在、約60万人が障害者枠で一般就労をしており、さらに約50万人がA型とB型の福祉就労で働いています。こうした制度が整っているのは、日本ならではの特徴であり、他の国にはほとんど見られません。

就労継続支援A型・B型
一般就労が困難な方に、生産活動の機会を提供し就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う障害福祉サービス(利用期間の制限はない)。A型は雇用契約を結ぶため最低賃金が保障されます。B型は雇用契約を結ばず生産活動の対価として工賃を受け取ることができます。

② 就労を支える支援機関の存在

日本では、就職を目指す人や就職活動や就労に課題を抱えた人々のための支援機関が用意されています。

就労移行:就職を目指すためのスキルや能力を身につける訓練を行う。
自立訓練(生活訓練):日常生活や社会生活に必要なスキルを学ぶことができる。
※それぞれ2年間学ぶことができます。


4. 新しい働き方の広がり

・在宅勤務
コロナ禍で急速に普及した在宅勤務は、現在一部で揺り戻しが見られるものの、コロナ禍以前と比べると大きく広がりました。

・短時間労働
これまで週20時間以上が要件だった障害者雇用が、2024年度より週10時間以上で適用可能となりました。週に2日程度働くことができれば、障害者雇用に該当します。

・農園雇用
企業が農園で障害者を雇用するという新しい形態も生まれています。一部、国会などから批判もありますが、現時点では合法とされています。特に地方では、歓迎されていたりと、まだ議論の余地は残りますが、障害者雇用の選択肢が増えたという見方ができます。


参加者の声


鈴木社長の講演は何度か聞かせていただいていますが、今回も分かりやすい説明と肩の力がフッと抜ける温かさであっという間に時間が過ぎました。

本人の満足度が大切とのお話に救われました。また、親が希望を持って明るくすることが大切とのお言葉にも胸が熱くなりました。

障害者をめぐる国の動きや社会制度、本人への対応など、とても勉強になりました。

発達障害でも一人ひとり障害特性が違うため、その人に合う適切な関わり方で支援する必要があることを学ぶことができた。


おわりに


最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
私たちは今後もオンラインセミナー等の情報提供を通じて関係者、社会の皆様の理解を深め、「誰にも優しい社会の創造」を目指してまいります。


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