経営における戦略の歴史①

戦略という言葉は軍事分野だけでなく経営分野にも多大な影響を与え、軍事における「戦略」という概念とは確かに異なる系譜を歩んでいる。今回は第二次世界大戦後までの簡単な歴史的背景について叙述する。

戦略の由来

戦略という言葉は、古代ギリシア語に由来するものであり、もともとの意味は最高行政官あるいは軍の最高司令官という意味である。以来、2000年以上のあいだ戦略概念形成は、常に軍事的な意味合いに焦点を当ててその歴史を展開してきた。

経営における戦略の活用と新たな企業タイプの誕生

経営分野において、その言葉あるいは概念形成がなされたのは、19世紀後半から20世紀になってからであり、それも本格的に用いられるようになったのは第二次世界大戦以後である。

アメリカで始まった第二次産業革命で市場の力を形作る競争環境に影響を与える方法としての戦略が登場した。それは1850年以降の主要鉄道の建設で大衆市場が出現し、金融資本主義の初期的な発達により、資本調達が容易になったことも作用したと思われる。つまり、それは生産における規模の経済と流通における範囲の経済が萌芽していくことを意味する。

19世紀終わりに差し掛かったところで、新たなタイプの企業が誕生した。それは垂直統合型の企業であり、時とともに巨大化していく。その企業は自社が属する産業内の競争環境を変え、さらに産業の垣根を超えて影響を及ぼす存在となる。

このような産業構造の変質の最中で戦略の必要性を認識したのは、GMのCEOを務めたアルフレッド・スローンである。彼はライバルであるフォード・モーターの強みと弱みに基づいた戦略を考案し、GMを成功に導いた。

第二次世界大戦と経営戦略

第二次世界大戦は軍事だけでなく、経済・経営にも戦略的思考の発展に影響を及ぼした。それは戦時下の限られた資源を経済全体に行き渡らすための試行錯誤でもあった。また、戦時下の経験で新しいツールや手法が開発されただけでなく、経営上の意思決定に役立つ思考が導入された。

戦略の概念を経営へ応用することになったのは、第二次世界大戦後のアメリカ軍内部の軍部間競争である。当時のアメリカでは、戦術と戦略の統合を維持しつつ軍内部の健全な競争を最もよく保てる組織について議論が起こった。

当時圧倒的に陸、海、空、海兵隊を統合することが効率的とする議論が主流であったが、海軍はこれを自らの存亡にかかわる重大な脅威として認識した。そのために、海軍は独自コンピタンスを強く意識する。この独自コンピタンスは、戦略的経営という概念に強く影響を与えることとなった。

終わりに

最後にドラッカーの経営戦略の理論における金字塔となる言葉を紹介したい。

企業は意識的に正式な戦略計画を活用することで市場をコントロールしうる

今回は第二次世界大戦後までの流れを簡単にではあるが書き記した。SWOT分析等今後、さまざまな手法や概念について説明していくが、歴史的な流れを把握しないまま手法や概念だけを知っても意味がない。

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