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最新NoCodeツールでSaaSのベータ版開発は可能なのか?

僕は去年から音楽系のスタートアップをやっているんですが、訳あって僕自身がひとりでベータ版を開発する必要が出たタイミングがありました。

しかし僕にはそれに必要なプログラミングスキルがないため、昨今話題のNoCodeでベータ版開発ができないものかと模索した結果をこのnoteでお話ししようと思います。

もし同じような境遇の方がいらっしゃったら参考にしていただければ幸いです。


僕が持っているスキルや経験はこんな感じ

・Webデザインの経験は少しある
・プログラミングの経験はほぼ無いが HTML/CSS はある程度いじれる
・ドメイン移管とかDNSレコードの設定とかそのくらいのサーバー系の知識はある
・WordPressはわりといじれる
・英語は喋れないし聞き取れないけど簡単なメールの読み書きくらいはできる

という感じで、おそらくアフィリエイトとかWebデザインとかをかじってみた経験がある人が持っていそうなスキルしかありません。

ただ、逆にいえば元祖NoCodeとも言えるWordPressに関してはenvatoなどで販売している海外のテーマやプラグインなども使ってきた経験があるのでコーディングが必要な部分以外はあまり苦労しません。

ここでいう”苦労しない”というのは、WordPress初心者が陥りやすい「プラグインとプラグインの干渉」や「テーマとプラグインの干渉」などのトラブルの際にも、この辺が怪しいなという勘が利くということであったり、何かしらのトラブルでサイトそのものが吹っ飛んで、裏画面へのログインができなくなってもFTPツールでなんとでもなるから心配しないとかそういう範囲も含みます。

(というかそもそもWordPressのトラブルシューティングやカスタマイズの情報は世界中に溢れかえっているので大抵のことはGoogle検索だけでなんとでもなりますよね)

最新のNoCodeツール市場はどんな感じなのか調査

さてここからは実際に僕が行った作業をリサーチから順番にお話します。

まずは最新のNoCodeツールがどんな感じなのかをざっくり調べますが、圧倒的にわかりやすくまとめてあるnoteがありますので、こちらを参考にしてください。

NoCodeというツールを活用する。」by 三上蒼太

この記事を中心に海外の記事やTwitterなんかで調べた結果、僕が作りたい物に関係しそうなのは以下のツールたち。

【サイトビルダー系】
STUDIO
Webflow

【アプリケーションビルダー系】
Adalo
Glide
Bubble

【マーケットプレイス系】
Sharetribe
Arcadier

あまり時間に余裕がなかったのでこれらの中から学習コストが少なそうな順に実際に触ってみることにしました。

STUDIO

まず最初に選んだのは STUDIO です。
理由はこの中で唯一日本語対応しているから。

使ってみた感想は、とにかく最高でした。
UIが洗練されていて使いやすくその上クール。無料で用意されているテンプレートの質も非常に高く、デザインするのが楽しくてついつい作らなければならないものとは関係ないウェブサイトを作りかけてしまいました。
さらに海外ツールによくある、日本語にするとフォントが訳わかんないものに置き換わってデザインが台無しになるなんてこともありませんでいた。

しかし、今回僕が作りたいものはベータ版とはいえSaaSだったので当然のごとく実現不可能でした。(あたりまえ)

Webflow

次に選んだのは Webflow です。
理由はこちらもサイトビルダー系なので、学習コストは確実に低いと考えました。当然作りたいものが作れる確率も低いですが、僕はこういうとき見落としがないようしらみつぶしに進めるタイプなのです。

使ってみた感想は、かなりガチでアリでした。
結果的には今回僕が作りたいものは作れなかったのですが、作れるものの幅は半端じゃありません。

ニュアンスとしてはWordPressの自由度高い版という感じでしょうか。
世界中の優秀なクリエイターが制作したテンプレートのクオリティーは正直WordPressとは比較にならないほど現代的で洗練されています。
中途半端なWeb制作会社に外注するよりはWebflowを使えるクリエイターに直接発注した方が低価格でハイクオリティーな最終成果物になると思います。

ちなみに僕は今回の目的のサービスは作れなかったものの Webflow を利用して本サービスのマーケティング用のメディアを近いうちに制作する予定です。

Adalo

サイトビルダー系が終わったのでお次はアプリケーションビルダー系の Adalo に挑戦しました。

実際に触ってみた感想は、使いやすいけどできることが限定的かな...

UIはわりとよくできていて、30分も触ればなんとなく掴めてきます。
ただ、デザインはそこそこですし組み込めるシステムも限定的で、少し中途半端な印象でした。

また今回の目的のサービスも作れませんでした。

Glide

またまたアプリケーションビルダー系。

前評判はなかなかでしたが実際に使ってみるとデザインがダサい...。
できることの幅はわりと広く、特にGoogle Mapを使ったUI構築が得意でした。

先ほどの Adalo もそうですが、スプレッドシート からデータを読み込んで作業することができます。
この機能がMapとの相性が非常によく、その点ではかなり痒い所に手が届く印象でした。

ただデザインのダサさや古臭さから前時代的な印象を受けてしまい、その辺を気にしてしまう僕には向いていないツールでした。今後のアップデートに期待です。

Bubble

アプリケーションビルダー系の最後は、最近わりと大きな資金調達に成功したことでも話題の Bubble です。

どうやらこの Bubble はNoCodeというジャンルを牽引するサービスらしく、できることの幅は半端じゃありません。
というかもはやできないことの方が少ないくらいで、SNSやフリマアプリのようなものは決済機能までフル装備ですぐにつくれてしまします。

ただしできることの幅が広すぎるため、とにかく操作が難しいです。

学習コストはおそらく世界中の全てのNoCodeツールの中でも飛び抜けて高く、Bubbleの学習に本気で取り組むのであれば、自分が作りたいサービスの内容を整理してプログラミングをイチから勉強することも選択肢に含めて熟考することをおすすめします。

というのも、学習を始めた当初あまりにも難解だったので公式の説明動画だけでなく日本語でBubbleの操作を解説している人を探しました。
幸いにも NoCode Schoolシンジさんという方が見つかったので、シンジさんがBubbleを解説しているYouTube動画を一通り拝見しました。
しかしどうにも解決できない問題があったので失礼を承知でシンジさんにDMすると、なんと面識がないのも関わらずテクニカルな問題を懇切丁寧に解説していただけました。(シンジさん本当にありがとうございました)

しかしそれでも結果的には解決せず、Bubbleでの制作は断念。
理由としてはBubbleの機能的に実装できないシステムがあったということではなく、シンジさんから「あなたが作ろうとしているサービスをBubbleで作るのはとてつもなく大変だから、マーケットプレイス系で挑戦してみるといいよ」とのアドバイスをいただいたからです。

Bubbleは他のNoCodeツールよりもだいぶ”プログラミングの基礎知識”を要します。
今現在プログラミングスキルがある方が受託の際のコスパ改善などのために学習するのであればこれ以上ないツールかもしれませんが「プログラミングができないからNoCodeで挑戦しよう!」という考えだと逆に遠回りになることがあるかもしれません。

まだほとんど日本語の詳細な解説記事などが存在しないBubbleに挑むのであれば、すでにたくさんの情報があふれているプログラミングを学んだ方がスムーズに課題をクリアできるケースは十分にあり得ると思います。

Sharetribe

いよいよマーケットプレイス系です。

僕が実際に Sharetribe を触ってみた感想は「集金に必死だな...」という感じです。サービスが便利かどうかの前にLPにおけるサブスクリプション獲得の必死さをなんとかした方がいいと思います。UX的にはあまりいいとは思えません。

ちなみにツールとしてもいまいちでした。
SaaSを作りたい僕がCtoCマーケットプレイス専門の Sharetribe に評価を下すのはお門違いな話なのですが、仮に僕がCtoCマーケットプレイスを作ろうと思ってもこちらのサービスは選ばないでしょう。

やはりマネタイズに主軸をおいてUXを蔑ろにする企業が提供するサービスはこんなもんだよなと、なんだか変に納得しました。

Arcadier

こちらもマーケットプレイス系です。

この Arcadier が僕の作りたいサービスには抜群にフィットしていました。
詳しく説明すると、Arcadier では5つのタイプから作りたいサービスを選ぶのですが、その中の「Space Rental」というタイプがまさに僕が探していたものだったんです。

ひとまず Arcadier の操作を学習し(かなり簡単です)すぐにサービス開発に取り掛かりましたが、その中でどうしても対応できない機能がありました。
しかしその機能はMVP(Minimum Viable Product)で考えたとしても、どうしても実装しなければいけない機能でした。
しばらくこの件について情報収集しましたが、やはりCtoCマーケットプレイスには関係ない機能なのでどうにもならず、結果的に Arcadier での制作を諦めました。

NoCodeはまだまだ発展途上?

今回最新NoCodeツールに関してそれなりの時間を費やしてリサーチしてみた結果、残念ですが僕の作りたいサービス(音楽系SaaSのベータ版)は作ることができませんでした。

僕はNoCodeツールに対してこのような期待をしていました。

もしかしてNoCodeツールならプログラミングのことが分からなくてもベータ版くらい作れるんじゃないか?

これは筋違いな期待でした。

現在の多くのNoCodeツールは「CtoCマーケットプレイス」や「ウェブサイト」など需要と汎用性が極めて高いものに限り、誰でも簡単に制作できるというツールです。

もしくは Bubble のようにプログラミングの基礎知識を理解した上でしっかりと時間をかけて学習することで『コードを書かないサービス開発』ができるツールなのです。

僕はとにかくベータ版を作らなければと焦るあまり、本質的なことを見落としていました。

プログラミングをせずにサービスやシステムが動くはずがないのです。

NoCodeとは名前の通りコードを書かないということであって、プログラミングをしなくていいということではないのです。

そう考えると、NoCodeはコーディングのコストを圧縮できるものの、足りないスキルの補完としては機能しないんだなと理解できるのですが、実際に時間をかけて手を動かしてみるまでは気づけませんでした。

ちなみに僕は今後このようなことに備えて、プログラミング学習を始めました。もちろん Bubble を時間をかけてガチンコで習得すれば、ほとんどのサービス開発は技術的に可能かもしれませんが、僕は今のところBubbleを学習しないことにしました。

それはなぜか。

今現在プログラミングスキルもBubbleのスキルもない僕がどちらかを勉強するのであれば、それは間違いなくプログラミングです。
これはあくまで個人的な見解ですが、学習コストとスキル習得後の自由度を考えると僕にはBubbleを選択する理由がありませんでした。

もちろん、受託でWeb制作などを行っている方がNoCodeのスキルを身につけて効率化を図ることは非常に賢い選択だと思います。また、プログラミングを習得した後に僕がBubbleの学習を開始する可能性は高いです。

くれぐれも僕はBubbleを含む全てのNoCodeツールを否定するつもりが一切ないことをご理解ください。全ての道具の価値は誰がどう使うかで決まります。僕が使いこなせなかっただけの話です。

結局僕はどうしたのか

みなさんが僕が作りたかったサービスの結末にご興味あるかわかりませんが一応お話しさせてください。

結局最後はWordPressで無理やり作りました。

なんだよそれって感じですよね。ほんとすみません。
けれど結局は意外とまだまだ WordPressは強くて、かなり無理がある設計でもプラグインやらテーマやらのゴリ押しで、今回のようになんとかなることがあります。
もちろんこれはWordPressの本来の使い方とかけ離れているのでパフォーマンスがあまりよくありません。

しかし、ベータ版には十分

スタートアップは速度感がとても大切です。
ベータ版を作りたいだけなら、とにかく早く必要最低限の機能で作り上げることが大切なので、このような結果となりました。

こんな結果報告がみなさんのお役に立てるかわかりませんが、僕が実際に最新NoCodeツールで音楽系SaaSのベータ版を作ろうとした結果は以上の通りでした。


今回のテーマは現在進行形のプロジェクトに絡んでいるので具体的なお話ができずわかりづらい場面が多々あったかと思いますが、ここまで読んだ頂き本当にありがとうございました。

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