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【3分De論文】訪問言語聴覚士が関わる当事者の意向を反映させた摂食嚥下リハビリテーション

みなさん、こんにちは。
論文を読んで勉強したいけど、忙しくてなかなか出来なという方の味方、時短言語聴覚士STサクです。
今日は3分でこの論文を説明します。説明の後に理解を深める問題も用意しましたので、お時間がある方は最後まで読んでもらえると嬉しいです。
今日の論文はこちら↓↓


概要

在宅で嚥下を目的として介入する場合、嚥下機能の評価を行って、機能だけを見て食事内容や方法を提案するだけでは、うまくいかないことは多いです。
それは、ご本人やご家族の思いや考え方、経済状況、介護に当てられる時間など様々な要因があり、機能的には誤嚥のリスクがある食事をされている方がいるからです。
この論文では、まずSTの訪問を利用した中で、嚥下障害が中等度以上の方の食事内容を調査しています。そして、5W1Hのフレームワークを使って、食事に関する様々な情報を把握し、ケアプランに反映させることの必要性を論じていました。

方法

2018年1月時点で、A法人在宅総合ケアセンターの訪問言語聴覚療法を利用していた106人を対象に調査を実施。 MASAを用いて嚥下障害重症度を判断し、中等度以上の嚥下障害がある者を抽出した。 更に、日本摂食嚥下リハビリテーション学会分類2013を用いて分類し、学会分類4(主食:全粥・軟飯、副食:軟菜)以上の食事を食べている方を抽出した。

結果

嚥下障害の重症度:中等度以上の嚥下障害があると判断された利用者は52人(48.6%)。
学会分類4以上:嚥下障害が中等度以上で、経口摂取している食形態が学会分類4以上の者は21人(うち経口摂取のみは19人)。
中等度以上の嚥下障害があっても、家族とほぼ同様の食形態で食事を継続している理由は、本人の意向、家族の意向、家族を中心とした支援者の食事支援に関する介護力の不足により適切な食形態での提供が難しいことなどが挙げられた。

考察

在宅における摂食嚥下障害者への支援として、言語聴覚士は利用者の摂食嚥下機能だけでなく、食べることに関する生活課題を把握し、ケアプランに反映させることが重要です。 具体的には、以下の5W1Hのフレームを用いて、利用者の食べることに関する生活課題を可視化することが有効です。

  • WHO(誰が): 食事の準備、買い物、調理、配膳・下膳を誰が担うのか。

  • WHAT(何を): 食形態、食事内容、栄養補助食品や経管栄養剤の併用など。

  • WHEN(いつ): 食事の時間、家族と一緒にとるかどうか、孤食の有無など。

  • WHERE(どこで): 食事場所(ベッド上、食卓、施設など)。

  • WHY(どのような目的で): 口から食べる目的(本人・家族・支援者の間で共有)。

  • HOW(どうやって・どのくらい): 食事姿勢、食具、介助方法、食事時間、摂取量など。

言語聴覚士は、5W1Hのフレームを用いて摂食嚥下障害を生活課題として位置づけ、ケアマネジャーに情報提供を行い、支援プラン策定の助言を積極的に行っていく必要がある。 また、家族のニーズも考慮し、職種間・事業所間で連携し、会議を通してプランの修正を随時行い、実現可能で継続できる設定を更新していくことが求められる。

終わりに

いかがでしたでしょうか?
食事は食べる側・用意する側にとっても毎日のことになり、それだけに無理をしていると、日々の生活がつらいものになってしまいます。
そこに介入するSTとしては、介護者・被介護者双方の気持ちや状況を総合的に判断し、食事をどうしていくかという事を提案していかなければなりません。
この際に大事になることが、いかに情報を収集できるかだと思います。
この論文で紹介されている5W1Hを頼りに情報を収集することで、抜け漏れが少なく大事な情報を収集でき、適切な提案ができるのではないかと思いました。
皆様はどのようの感想を持ちましたでしょうか?


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理解を深めよう

最後に理解を深めてもらえるような問題を作ってみました。
お時間がありましたら、挑戦してみてください。
お勧めは、問題にチャレンジしてから論文を読むと、内容に興味がわき頭に入りやすくなります。

問題

以下の各質問に対して、2〜3文で答えてください。

  1. なぜ在宅の摂食嚥下障害者において、家族と同じ食事形態を提供することが危険な場合がありますか?

  2. 本稿で紹介されている調査によると、ケアマネジャーは摂食嚥下障害への対応について、どのような課題を抱えていることが示唆されていますか?

  3. 言語聴覚士は、摂食嚥下障害者の家族に対して、どのような役割を果たす必要がありますか?

  4. 5W1Hのフレームワークは、摂食嚥下障害者のどのような側面を明らかにするために役立ちますか?

  5. 食形態の決定において、医療的な安全性以外にどのような要素を考慮する必要がありますか?

  6. 言語聴覚士は、ケアプラン作成においてどのような役割を担うべきですか?

  7. 摂食嚥下障害者の支援において、関係機関との連携が重要なのはなぜですか?

  8. 本稿で述べられている「食べることの意味」とは、具体的にどのようなことを指しますか?

  9. 在宅の摂食嚥下障害者への支援において、「継続可能なプラン」とは、どのようなプランですか?

  10. 言語聴覚士は、摂食嚥下障害者の生活課題に対して、どのような視点を持つことが重要ですか?

解答

  1. 在宅の摂食嚥下障害者において、家族と同じ食事形態を提供することが危険な場合があるのは、嚥下機能が低下しているため、誤嚥や窒息のリスクが高まるためです。誤嚥性肺炎などの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。

  2. 本稿で紹介されている調査によると、ケアマネジャーは摂食嚥下障害に配慮したケアプランの作成や、専門職への相談が十分に行われていない可能性が示唆されています。

  3. 言語聴覚士は、摂食嚥下障害者の家族に対して、摂食嚥下障害についての理解を深めてもらうための説明や、適切な食事介助の方法、食形態の調整などの指導を行う必要があります。また、家族の不安や負担を軽減するためのサポートも重要です。

  4. 5W1Hのフレームワークは、摂食嚥下障害者の食事状況、つまり、誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように食べているのかを明らかにするために役立ちます。

  5. 食形態の決定においては、医療的な安全性以外に、本人の好みや食習慣、文化的な背景、家族との食卓を囲むことによるQOL(生活の質)の向上なども考慮する必要があります。

  6. 言語聴覚士は、ケアプラン作成において、利用者の摂食嚥下機能の評価結果や、食事に関する生活課題、必要な支援内容などをケアマネジャーに伝え、適切なケアプランが作成されるように貢献するべきです。

  7. 摂食嚥下障害者の支援において、関係機関との連携が重要なのは、多職種が連携することで、利用者とその家族のニーズに合わせた包括的な支援を提供できるようになるからです。

  8. 本稿で述べられている「食べることの意味」とは、単に栄養を摂取するだけでなく、家族や友人と食卓を囲み、楽しみながら食事をするという、社会的、心理的な側面も含めた意味を指します。

  9. 在宅の摂食嚥下障害者への支援において、「継続可能なプラン」とは、利用者の状態や家族の状況、経済状況などを考慮し、無理なく、長期的に継続できる支援計画のことです。

  10. 言語聴覚士は、摂食嚥下障害者の生活課題に対して、「その人らしく生きる」ことを支援するという視点を持つことが重要です。そのためには、医療的な側面だけでなく、利用者や家族の価値観や希望を尊重し、生活の質を高めるための支援を心がける必要があります。

どうもありがとうございました。


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