- 運営しているクリエイター
#ショートストーリー
掌編小説「大きくなったら」
病院の待合室で、何気なく目の合った小さな男の子がトコトコと私の傍らに来ると、私の顔を見上げて言った。
「ぼく、おおきくなったらおいしゃさんになるんだよ」
この子は私を誰かと間違えているのだろうか。それとも単なる思いつきなのか。その唐突さに私が戸惑っていると、若い母親が慌ててやって来て、「すいません」と言って男の子を連れて行った。
順番を待つ患者たちの目が私たちに集まっている。私がどんな
病院の待合室で、何気なく目の合った小さな男の子がトコトコと私の傍らに来ると、私の顔を見上げて言った。
「ぼく、おおきくなったらおいしゃさんになるんだよ」
この子は私を誰かと間違えているのだろうか。それとも単なる思いつきなのか。その唐突さに私が戸惑っていると、若い母親が慌ててやって来て、「すいません」と言って男の子を連れて行った。
順番を待つ患者たちの目が私たちに集まっている。私がどんな