星野維人

原稿用紙5枚ほどの掌編小説や詩を書いています。投稿は不定期ですが、読んでいただければ幸いです。

星野維人

原稿用紙5枚ほどの掌編小説や詩を書いています。投稿は不定期ですが、読んでいただければ幸いです。

マガジン

  • 本の出版

  • 写真詩

    自分で撮った写真と自作の詩のコラボです。

  • 掌編小説

    原稿用紙5枚の掌編小説

最近の記事

詩「猫」

おまえの安らかな寝顔を見ていると 私たちの今日一日は 取り敢えず平和なのだと思う 名前を呼ぶと返事をするかわりに 尻尾を二度三度振って見せる いつの間にか横着も覚えたんだね 快楽を貪ること それがおまえの仕事 広げた新聞にゴロリと横たわり 「私を忘れないで」とばかり 人の顔を見上げる いつだっておまえは自分本位 その身勝手さが可愛い おまえはなぜ猫に生まれてきたの 食べるため 眠るため それとも 明日を思い煩う 不器用な私たちを慰めるためか

    • 詩「風のように」

      風のように生きたい それが口癖だったあいつは 行先も告げず旅立ったまま いまだに消息が分からない きっと自由というコートを纏い 地図も持たずにどこやらの 異国の街の路地裏でも 闊歩しているのだろうか そんなあいつの生き方に憧れつつ そよ風ほどにもなれない私は せめて苔むした石となることに抗い あいつの土産話を待っている 日常という 代り映えのない時の中で

      • 写真詩「木漏れ日」

        木漏れ日の中に 佇んでいると ふと あなたの声がした ふり返ると 光を浴びた枝葉が 風に小さく 揺れていた あなたの瞳に 見つめられているような そんな気がした 嬉しくて寂しいような 言葉にできない感情が 僕の胸をいっぱいにした

        • 詩「たかが詩」

          いつになく早起きした僕は 机に向かい一編の詩を書いた 言葉があふれ出て 書かずにはいられなかった もちろんその詩には 効用なんかありはしない この世の誰かを 幸せにすらできないだろう けれども今日という日を慈しみ かけがえのない人を愛し続ける その力には成り得る それだけで充分じゃないか それ以上なにが要るのだろう たかが詩なのだから

        マガジン

        • 本の出版
          1本
        • 写真詩
          23本
        • 掌編小説
          20本

        記事

          詩「プライド」

          これからさき僕たちが 幸いにも人生を全うできるなら それに越したことはないけれど それは虫のいい話かも知れない 人生はそれほど都合よくは できていないものだからね どちらかが罰ゲームを課せられるなら 僕がそのくじを引くよ 喜んでなんてとても言えないし きっと悪あがきもするけれど 潔くはありたいな たぶんやせ我慢だろうね でもそれが男としての せめてものプライドなのさ

          詩「プライド」

          詩「赦し」

          それは美しくもなく ましてや神聖なものでもなく ただひたすらに悲しい涙でした その涙を流させたのは私です あなたの眼からあふれた涙は やがて深い川となり この私を悔恨の淵へと 押し流すのです 今さらどんな言葉で 償うことができるでしょう 贖うことができると言うのでしょう 私にできることは 遠い岸辺に手を伸ばすように 赦しを求めるだけ

          詩「赦し」

          掌編小説「アイ・フィール・ファイン」

           それは僕が大学生で、夏休みに軽井沢の老舗のパン屋で住み込みのアルバイトをしていた時のことだ。  一緒にアルバイトをしていた相棒は休憩時間で、近所の喫茶店にお茶に出かけている。僕ひとりで店番をしていた客もまばらな昼下がりに、ひとりの外国人の男が店にやって来た。  Tシャツにハーフパンツ。足元は雪駄履きで、やや斜めにかぶった麦わら帽子から茶色い髪をのぞかせたラフな格好。そして丸い眼鏡をかけた中年の男だった。  土地柄、外国人の客は珍しくはないが、僕は英語が苦手だし、話しか

          掌編小説「アイ・フィール・ファイン」

          詩「影」

          弱虫を見ると 無性にいじめてみたくなる いやなヤツが 僕のなかにはいる そのいやなヤツと 長年つき合ってきたけれど ヤツはいまも 僕のなかに棲みついている 影のように僕につきまとい ときどき頭をもたげ 世間に出ては悪事をはたらく そのうちに本当はヤツが僕で 僕が影にすぎないような そんな気さえする

          詩「またいつか・・・」

          またいつかお会いしましょう そんな約束を交わして別れたけれど もうふたたび会うことはないのだと 私たちは知っている それでもやはり言ってしまう またいつか・・・と さよならだけでは 哀しすぎるから おなじ空の下で生きている限り またいつか・・・が 叶うときがあるのかも知れない かつて交わした ささやかな約束さえ とっくに忘れたころに

          詩「またいつか・・・」

          詩「夢のリレー」

          あなたが教えてくれた 幼いころの夢 それは叶うことなく 静かに消えていった やがて時は流れ あなたは立派なおばさんになったけれど かつてのあどけない夢が 今も確かに息づいているように見える あなたの中で あなた自身も気づかぬうちに 夢は少しずつ形を変えて 新たな夢へとリレーされ そしてふたたび生まれ変わり 今のあなたを支えているのでしょう けして消えない 心の灯火となって

          詩「夢のリレー」

          写真詩「君のこと」

          はっきり言って僕は 君のことが好きではない 顔を合わせるのも不愉快だし ましてや言葉を交わしたいとも思わない けれどにっちもさっちもいかなくなって 頼れる者すらいなくなったとき 最後に縋るのは きっと君だろう 僕は君が大嫌いで そしていちばん信頼もしている 君が僕のことどう思ってるか 知らないけどね こういう人っていませんか? 好きじゃないんだけど、最後に当てになるのはきっとアイツなんだろうなって人。

          写真詩「君のこと」

          掌編小説「十五歳の僕は」

           懐かしい仲間たちとのおしゃべりもひと段落がつき、僕は会場を出てロビーのソファーに腰を沈めた。中学校を卒業して三十年目の同窓会だった。当時とあまり変わらない者もいれば、どこの誰だったかと首をひねりたくなる奴もいる。自分とて、彼らの目にどう映ったかは分からないし、そこはお互い様だろう。いずれにせよ、その語らいは楽しいものだ。  勢いにまかせて飲んだせいか、酔いが一気に回ったようだ。僕はソファーに背をもたせ、眼を閉じた。やがて暗いスクリーンに一つの顔が浮かび上がった。同級生だっ

          掌編小説「十五歳の僕は」

          詩「おかえりなさい」

          先祖の霊が帰ってくるというお盆に、こんな詩を書いてみました。

          詩「おかえりなさい」

          写真詩「青空」

          青空を見上げて僕は思った あのどこまでも高く透明な世界を 物語に書いてみたいと またあるとき思った あの自由に吹き渡る風の唄を メロディに奏でてみたいと そしてまたあるとき思った あの光と流れる雲が映し出す影を 絵に描いてみたいと でも僕にはできなかった 語ることも 奏でることも 描くことすらも だから僕は決めたんだ あの青空の下で ひたすらに生きてみようと

          写真詩「青空」

          写真詩「遠い声」

          人の輪ができている 語らいの声と 笑い声が 響いている けれどその輪に 背を向ける私がいる 拗ねているのではない 不機嫌なわけでもない ただ今は一人でいたい 青い夏の空から 私の耳に舞い降りてくる あの遠い声を聴いていたいから わき上がる雲の波間から 陽の光とともに届く あの懐かしい声

          写真詩「遠い声」

          写真詩「自由って」

          誰に気兼ねすることなく 笑えて 泣けて 怒れて 哀れんで ときには愚痴り またときには 誰かさんの悪口を言ったり あの子の幸せを祈ったり 少しばかりあいつを憎んだり そしてあなたを愛し ささやかな希望すら抱けること 自由って そういうことなのかな

          写真詩「自由って」