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星野維人
2024年6月4日 21:01
「ごめんね、十円足りないみたい」 レジカウンターの上に並んだ小銭を数え終えた若い女性店員は言った。カウンタ―の前に立った少年は、戸惑ったように小銭と店員の顔を交互に見た。とある書店での出来事である。小銭は大人の掌にひと山ほどはあろうか。その傍らに置かれた大きなガマ口の財布とコミックの新刊本。少年は小銭で支払いをしようとしたが、十円足りなかったらしい。「じゃあ、もう一度数えてみるね」 女