24/8/10 夏を忘れる
昨日の日付を跨ぐ少し前から『夜と反復』という夜が反復して朝になるまで、ミニマルミュージックを中心にその他アンビエントなどを聴く夜会をやっていた。僕と友達3人で深夜にずっと音楽を聴いたり、静かに話しをしたり、夜食を食べたりしていた。
一人は次の日も予定があり、超ご近所なので深夜3時ごろ『John & Yoko』というJohn Lennonとオノ・ヨーコが22分にわたって、お互いの名前を呼び合う(反復という意味ではミニマムで、魂の叫びという意味ではソウルであり、人によってはコメディにも聞こえるだろう)という曲が終わったところで帰った。残った2人もSteve Reichの『Piano Phase』を越えて、Erik HallによるSimeon Ten Holtの『Canto Ostinato』の途中で眠ってしまった。もちろん眠ってしまうのは、この夜会の醍醐味なので、むしろしてやったりという気持ちだ。しかし僕も米を炊き、味噌汁を作ったところで、眠ってしまった。20分ぐらいたって起きたら曲が止まっていた。5時になる少し前だったと思う。曲をかけっぱなしするつもりだったので、これは主催者としてよくないと思った。ほんの少しでも間があった方がいいかなと思っていたので、プレイリストにしたり次に再生とかは使わなかった。最後の曲、salamandaの『Sing Toghter』をかける。以前この曲がリリースされたときも、夜明けがゆっくりと進む中聴いていた。やはり夜明けに合う。
友達のうち一人は青春18切符でそのまま実家に帰るみたいだけど、どうも電車の時間がギリギリらしくて、でもお腹は空いているのでご飯と味噌汁をさっと食べて家を出て行った。この夜会を終えて、早朝の光の中、旅に出るのはいいなと思う。帰省、つまり帰ることだけど一つの旅でもあり、どこか両儀的で不思議な感じだ。
残った友達一人と朝ごはんを食べる。ご飯と味噌汁と、先に帰ったというか旅に出たというか、そんな友達が作って持ってきてくれたお惣菜を食べる。なんか向かい合って朝ごはんを、それも畳の上で、低い机で、ご飯と味噌汁という和食で食べるというのは、少し親密さを感じるような気持ちになった。これが僕にとっての親密の形の一つなのかもしれない。なんか一緒に住んでいるような、そんな気持ちになった。友達の後ろ、窓の外のケヤキの奥に見える雲は、薄く、黄金に輝いてた。
ダンスのこととか、映画のこととか、軽さの中に重さ、あるいは重さの中に軽さを持たせるにはどうすればいいのか、という話などをしたりした。とてもいい朝の食事の時間だった。
友達を駅まで送るために外に出る。とても涼しかった。この夏で感じた一番の涼しさだった。駅まで送る道がより心地よくなる。駅まで送り、ホームに降りた友達に両手をふって、家に帰った。
家に帰ったら、夜と反復でかけた曲をプレイリストにまとめ、参加してくれたみんなにお礼のメッセージを送った。部屋を少し片付けて、仮眠しようと思って寝たら、やはりお昼まで寝てしまった。
パンを買いに外に出る。気温は今日も猛暑日らしく、やはり暑いといえば暑いけど、そこまで暑苦しくは感じない。湿気が少ないのだろうか。体が暑さにある程度慣れたのだろうか。最近なんとなく思っていたけど、夏の盛りは超えたような気がする。
パンを食べて本を読んでいたら、またもや眠ってしまって、時計は16時を少し過ぎていた。夕方は出かけるので、支度をする。
国立駅の方面に向かって北上して、ロシア料理のお店、スメターナに来た。一階の看板の前で友達を待つ。前回ランチできた時はランチがお休みの日だったので、出直しとなる。友達2人が来て、地下に降りお店に入った。ずっと前から気になったていたお店でいよいよかという感じだった。店内の入り口のカウンターには、お土産のマトリョーシカがたくさん並んでいて、奥に広い店内だった。灯りもほどよく落ち着いて、ロシア民謡がかかっている。奥の席に案内された。みんなコース料理にした。みんなメインがロールキャベツのスメターナコースを頼んだ。
ロシア民謡を聴きながら、暖かいロシア料理を食べていたら、なんだか気持ちが冬になっていた。心は完全に冬にいた。みんなで今冬ですよと話し、なんかTシャツ着ていてバカみたいだねと話しをした。僕なんて暑さで塩分が欲しくて、ソルティードッグを頼んでいた。もちろんソルティードッグはおいしかったけど。
久しぶりにコース料理を食べたけど、コース料理は食事そのものの楽しみがあっていいなと思った。料理を待っている間友達と色々話して、料理がきたら食べることを楽しんで、味の感想を言ったりしながら、そうして時間はゆっくりと過ぎる。2時間半は食事をしていたと思う。店員さんに遅くなってすみませんと言われたけど、むしろ僕としては丁度いいリズムだった。
出てきた料理がどれもおいしくて、楽しい食事で、次はクリスマス会をしようと友達と話した。外に出たら季節は戻り、夏だった。でも、ほんの少しだけ涼しかった。