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あほらしの世界に走るひとびとよ

安部公房よんでると、むかっぱら!

短編集『水中都市・デンドロカカリヤ』の「闖入者」は、本投げすてる寸前の姿勢でよんでた。ある日アパートに知らん大家族がどやどやあがりこんできて部屋と金と生活をへいぜんと乗っ取って家主が首吊るはなし。

怒りや悲しみをむりくりひっぱりだす文字はよむと疲れる。
安部公房はあほらしを書くのがうますぎるんだ。

今回よんだ『飢餓同盟』だって、革命を決心する花井は思想だけつよくて論理や倫理が貧弱な、典型的あほらし。周りの人もかんたんに信じてあほらし。

でもあほらしは、ものがたりじゃないんだとおもう。ヒトラーの例。

論理や倫理でなしに思想からくる感情それ一点で、うごけるひとがいる。だませるひとがいる。ころせるひとがいる。


あほらしの世界に走るひとびとよ。

この町自体が、まさに一つの巨大な病棟だ。

安部公房『飢餓同盟』1954年、新潮文庫


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