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エッセイ:大ちゃんは○○である⑲

「は…?えっ…?もしかして…トシか!?」
タケちゃんはびっくりした様子で紳士の名前を呼んだ。
トシと呼ばれた紳士もまた、びっくりした様子でタケちゃんを見つめていた。
そんな2人を見ながら僕も大層びっくりしたわけだが
まさかの2人が知り合いという現実にただただ驚くばかりだった。
『この2人が知り合いって、どんな繋がりなんだよ。まさか!タケちゃんも怖い人だったの!?』
そうとでも考えない限り、この強面2人が知り合いだなんて信じられなかったから。
まさか、2人とも昔は保育士をしていて、その時の同僚だったなんて可能性は0ではないけど、どうもそれは考えにくい。
だとすると…と思ってしまう。
「まさかこんな所で再会するなんてな。いやいや、びっくりしたわ。いやぁ、さっきウチの店長から聞いたけどよ、ウチのバイトが申し訳なかったな。大丈夫か?」
タケちゃんは紳士が知り合いと分かるや否や、フランクな態度でトシと呼ばれた男に話しかけた。
どうやら、そこそこ親しい間柄らしい。
「まあまあまあまあ、びっくりしたけどさ、まさかタケちゃんが来るとはなあ。こんなとこで会うのもびっくりだしよ、ここはタケちゃんの顔に免じて大丈夫ってことにしとくわ。」
トシは笑ってそう答えた。
「いやぁ、でも本当に申し訳なかった。今日は俺の奢りでいいからよ。目一杯食べてってよ。」
タケちゃんも笑顔でそう言った。
これでお分かりの通り、結果的に僕はタケちゃんのおかげで
○○されたりすることなく、事なきを得たわけだ。
上下ジャージ男のカズは拍子抜けしたような顔をした顔をしていたし、夜の蝶からはどことなく安堵したような表情が見てとれた。
僕はといえば…
『よかっったぁ~~~~~~~~~。』と心の中で花吹雪を舞わせ、
過程はどうあれ紳士の前髪をチリチリにしてしまったことに対して改めてきちんと謝罪をした。
ここまでこの一件のエピソードを書いてきて、めちゃくちゃな修羅場を期待されていた読者の方がいたとしたら申し訳ないが
スキンヘッド社長タケちゃんの交友の幅の広さのおかげで、驚くほど平和的解決でチリチリ事件は幕を閉じた。
自分の意図してない出来事が起きて、例えそれが理不尽なことであったとしても
時にその現実を受け入れなければいけないことがある。
考えてみると、社会においてそんなことは日常茶飯事なわけで
学生時代に経験した数々のアルバイトでの時間は
生活費を稼ぐ以上に本当に色々なことを経験させてもらったし、勉強をさせてもらった。
今回の話とはちょっと違うかもしれないが
自分は正しいと思っていることが、他人にとっては正しくないかもしれない。
職場において「先輩が…」とか「上司が…」と愚痴を垂れる人は少なからずいると思うが、
自分が正しいと思っていることなんて、ほとんど通らないと思っていた方がいいと思ってる。
それぞれが自分の中の『正しい』を持っていて、その『正しい』をみんながみんな通そうとしたらそれこそ大変なことになる。
戦うべき時は戦えばいいが、人の考え・思考を変えるのは並大抵のことではないことを
これまでの経験で嫌というほど経験してきた。
妥協とは違うが、一度立ち止まってどうしたら良い方向に進むのかを考えることは大事なことだと思う。
さて、大学時代の映画サークルエピソード、下宿生活エピソード、アルバイトエピソードと書いてきたが
そろそろ上京編にいこう。
まだまだまだまだ書きたいことは沢山あるが、一旦ここで大学編は終わりにしようと思う。

つづく

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