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エッセイ:大ちゃんは○○である55

撮影は順調に進んだ。
順調ではあったと思うが、撮影時に思ったのは
とにかく時間がかかるといった印象だ。
何せ待ち時間が長い。
全身血塗れのまま次のスタートがかかるまで待ち、
カットがかかったらまた次のスタートの声がかかるまで待つ。
完成作品を観てびっくりしたのだが、
朝から夜遅くまで撮影をして、おそらくその日に撮った分で使われていたシーンは
わずか数分程度だったと思う。
地獄の中でいたぶられる人々の一人としてスクリーンに映り、
エンドロールに名前がクレジットされたデビュー作。
作品としては決して規模の大きいものではなく、役どころも端役であったデビュー作。
大ヒットとは程遠いものだったかもしれないが、
コアなファンからは熱烈な支持を受けたと聞いたデビュー作。
今後俳優として売れた時、
「デビュー作はどんな役柄だったんですか?」
と聞かれたら
「いやぁー。実はセリフもなくて、ただただ地獄でいたぶられるだけの役だったんですよ。」
なんて答えたら面白いかもしれないなんて考えたりもしていた。

つづく

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