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エッセイ:大ちゃんは○○である58

夢を現実にする為に上京し、
必死になって走っていても
『もう走れない』と認めてしまうのは
とても悔しく不甲斐ないことだった。
『楽しい』だけではどうにもできない現状。
ご飯が食べられないという現状。
から回る現状。オーディションに通らない現状。
オーディション会場まで行く電車賃すらなく、
何時間もかけて歩いていくことも多くなっていった。
アピールしてもアピールしても、声がかからない日々。
色々な意味で才能がなかったんだと思う。
目を背けたくても、直視せざるを得なかった。
手持ちの所持金を計算して、1日に使えるお金が雑費・食費を含めて300円を切ると分かった時、
自分の中で夢を追いかける気力がガラガラと崩れていく音を聞いた。
地に足をつけて働こうと思った。
木々の葉が落ち始め、吹く風が冷たくなり始めた26歳の秋のことだった。

つづく

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