かげ

「影」と中国映画。

チャン・イーモウ監督の新作「影」を見に行った、中国では9月30日から公開されている。

正直に書くと、前作の「長城(グレートウォール)」が、あまりにもアレだったんで、見なくてもいいかぐらいに思っていたのだけど、やっぱり中国で撮影した映画は違うだろうと・・・勝手に期待して行った。

「長城」は別にして、その前に撮った「 帰来(妻への家路)」が素晴らしく、中国人スタッフをちゃんと使える監督はそう多くない。

日本では公開前だろうから、内容については書かないけど、ボンヤリと演出について書いておこうと思う。

その前に、中国映画の現状をまとめたリポートがあって興味深いのでちょっと紹介。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の「中国映画/テレビ市場調査」という物。

その一部を抜粋すると、

制作されても劇場公開に至らない国産映画も多い。
2016年に中国で制作された映画は合計944本。うち映画館の興行記録で確認できた作品は400本に満たない。
約6割の映画は完成後も6割は映画館で上映されていないと考えられる。

これがどういう意味かというと、あまりにも出来が悪いのだ、それで劇場公開されない、もしくは最初から、低予算の日本でいうならVシネマ的なものとして作られたのだろう。

個人的な感覚では、中国で製作されている映画の9割がヒドイ出来だと思う。

上に抜粋した部分、6割は上映されない・・・この上映されない映画は、捨てられる訳ではなく、ネットに流れている。

僕は暇にまかせて中国映画を見まくっているが、本当にちゃんとした映画を見られるのは10本に1本もない。(香港映画は例外)

一見してダメなのは、照明、メイク、美術、俳優・・・演出が良くてもスタッフにツブされている作品もある。

中国で映画監督と名乗るのは恥ずかしいとさえ思える出来・・・。

自分がスタッフだった経験からして、中国映画のスタッフのレベルはおそろしく低いか、もしくは、かなり優秀だけど、有名監督、無名でも力量がある、コネが強い・・・そのいづれかに該当しない監督の作品は適当に手を抜いている・・・

としか思えない。

今年見た中では馮小剛(フォン・シャオガン)監督の「芳華-Youth-」と今回見た張 芸謀 監督の「影」だけが、ずば抜けてスタッフの力量が高い。

どういう事かと・・・それだけ監督のチェックが厳しいのか、進んでイイものを作ろうとスタッフが力を入れているのか???

それともイイ監督にしかイイスタッフは付かないのか・・・

今回の「影」

色を抑えた撮影、手を抜いた所が見られない美術、照明。メイクも衣裳も大げさでなく良い。

雨もいい感じで写ってる、血がすごくいい、中国映画の安っぽい血糊ではなく、かなりホンモノっぽい。

演出的なアイディアも悪くない・・・

張 芸謀にとっては、「HERO (英雄 )」(2002年)と「LOVERS(十面埋伏)」(2004年)以来の武侠映画で、その2本は悪くなかったので期待大。

で、「影」。

結局の所、それがすべてで、スタッフの持てる限りの力量は引き出せたかもしれないけど、少しだけ演出が、それに追いついていなかった。

そんな気がする。

それでも楽しめる1作にはなっていた。






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