「好き」って認めたらどうだろう

恋愛下手な私が唯一、自分の経験から分かっていること。それが「自分の気持ちに素直になること」。

どんなに悲惨な恋愛でも、そのとき彼氏のことが大好きで、心から愛せたのであればその経験は無駄にはならない。たとえ黒歴史になっても、たくさん傷ついても。

絶対に、一個だって無駄にはならない。

そう思えたのは彼氏ができてから…というと、渦中にいる人は「なんだ…」という気分になってしまうだろうか。でも、私は悲惨な経験がなかったら今の彼とは付き合っていなかったと断言できる。

最近、こんな私に恋愛相談をしてくれる友達がいる。

彼女は学生時代からの大切な友達で、絶対に幸せになってほしいと思う人間の1人だ。LINEでも、会った時でもここ最近はマッチングした男性の話でもちきり。

私もアプリを使って出会いを探したことがあるし、悩みに「わかる!」と頷くばかり。ただ、彼氏がいる身なので上から目線にならないよう(彼氏がいない頃、既婚の友人の発言がきつかったことがあった)細心の注意を払いつつ話を聞いている。

しかし、彼女がやりとりをしている男性は残念ながら、私からみて「やめたほうがいい人」だった。

イチャつくのが好きかどうか聞いたり、やたら褒めたり。あげくは若干の下ネタを交えてきていた。彼女は真面目なので、相手のそういった発言にもきちんと返答していたが、男性からみたら「言うことを聞きそうで狙い目」と思われていないかと心配になった。

会ったときは「今まで会った中で一番話しやすかった」らしい。もちろん、下ネタは嫌だし、付き合ってもいないのに家に誘ってきたり怪しい点はある。でもせっかく続いているし断るのも…みたいな雰囲気。

「その人のこと好き?」と聞くと「自分から告白はありえないけど、言ってくれたらOKする」。

大切な友人にやっと彼氏ができる。応援したい気持ちと、止めたい気持ちが交差した。

複雑だった。相手の男性の、典型的な体目当て感。自分の婚活経験上、こういう男性の傾向が頭に入っていて、見事に当てはまってしまう悲しさ。

異様な”いいね数”の多さ、容姿や中身のない(誰にでも当てはまるような)褒め言葉、スキンシップの許容度合いを見極めるための質問、「付き合ったら何してもいい」と考えての軽い告白……そして、知らない間にアプリ上だけブロック(通報対策)。

「軽そうだし、危ない人の可能性がある。でも好きになってしまったなら仕方がない。もしそうなら応援するよ」

私が言えることは、このくらいだった。彼女も「そうだよね」と頷いた。

「でも好きってわけじゃない。今後おかしな点がなければ付き合うけど」


私はその男性より、実は、

本当に上から目線かもしれないが、実は、

彼女の「認めなさ」にモヤモヤしていた。

彼女はどう見てもその人が好きだと思う。まだ怪しい点が見つからなかった頃はデートのことを楽しそうに話していたし、発覚してからでも最終的に「このまま行けば付き合う」と答える。

私自身も恋愛に悩んでいる頃はそうだった。恋愛相談は問題解決が目的ではなくて「聞いてほしい」から行われるもの。頭では分かっているのに…。

「その人のこと”好き”って言えばいいのに!」と、イライラしていた。

実は、私はかつて彼女と同じ状態だったことがある。ある男性に長年、片想いしていたとき周囲に何度言われたか。「彼のこと好きなんでしょ?」、そう言われるたびに「好きってほどじゃないよ、憧れかな?」と頑なに認めなかった。

その男性には常に彼女がいたし、私は単純に仲間のひとり。「好き」を認めたら、余計に苦しくなってしまう。そんな惨めな事実を認めたくない。でも、気持ちは消えない。

ただ、その未消化な恋愛感情はあらゆる出会いの邪魔をした。相手の男性と彼を無意識に比べて「違う」と思い、誰も好きになれなかったのだ。

私はその後、「好き」を認めて本人に伝えた。それはとても勇気のいることで、恥ずかしかったし、今後の関係性も心配だった。

でも、叶わなくても気持ちはとてもさっぱりした。その後、冷静になって彼を見ると悪いところが明るみに出て「本当に付き合わなくてよかった!」と安堵してしまうくらい。

その出来事があってしばらくして、今の彼氏とお付き合いした。彼は今までの誰より私を大切にしてくれるし、一緒にいて幸せを感じられる男性だ。

彼女の状況とは少し違うが……そんな経験があるから、今回の相談を聞いて強く思ってしまった。「好きなら、好きって認めて!」と。お節介だ。彼女が傷つくかもしれないのに、他人事のようにそう思うのは。

「怪しいところもあるけど、私はその人が好きで。付き合って考えてみようかな」じゃ、だめなのか…。

もちろん、彼女が人目(私の意見)を気にして本音を話さないだけかもしれない。怪しい点を自分でも分かっていて、迷っているから相談してくれるのだろうし…。

でも、どこか、傷つきたくないためというより「別に好きじゃない」という逃げを全体的に感じてしまったのだ。

「別に結婚しなくてもいいけど、周りが…」「もっと他のことを頑張ったほうが…」と言われるたびに。

私は、勝手ながら、彼女に後悔してほしくないのだ。彼女には昔から「誰かと付き合って幸せな恋愛がしたい」気持ちが滲んでいるから。

「好き」を認めるのは、ときに傷つくし、怖い。恥ずかしかったり、惨めな思いをすることもある。でも、それを認めないことは自分の感情を殺し続けることに匹敵する。

こんなことを思うのは、やっぱり上から目線だろうか。そう思い、noteに思いの丈をぶつけてみた。

吉田美奈子の『頬に夜の灯』を聴きながら。

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