「チェシャねこ同盟」7
朝起きると、トマスは洗面台の鏡の前で自分の顔を見つめる。皮膚と、筋肉と、脂肪と、骨。それらで作られた造形が、彼にはとても奇異に感じられる。じっと顔を見つめていると、肉体の感受性の鈍さと表現力の乏しさを感じ、人間のボディは滑稽な失敗作だという気がしてくる。
自分の身体をこんな風に感じるのは、トマスにとっては良い兆候だった。宇宙人としての真っ当な感覚を抱いて自分と対峙している証拠だからだ。こんな時には、その他のものとも正しい距離で接することができる。なにもかもが新鮮で輝いて見