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評価面談のせいで休職に!?

課長である斉藤恭子は、今日の午後に予定されている評価面談のことを考えると、心に重いものがあった。半年に一度行われるこの面談は、部下の橘大輔に対して厳しい内容を伝えなければならないことがわかっていたからだ。最近、橘の周りでの評価が著しく低下している。彼の決めつけたような話し方や、気に入らないことがあると感情的になる態度が、同僚たちの間で問題視されていた。

「一緒に仕事をしたくない」という声も聞かれるようになり、斉藤はその状況を変えるために、この面談を通じて改善の方向性を示す必要があった。しかし、正直に言うと、そんな厳しい内容を伝えることに対するプレッシャーは大きかった。

午後、面談が始まると、斉藤は1on1の方法で学んだ通り、まずは橘のこの半年間の仕事の状況や感じていることを尋ねることから始めた。橘が話し始めると、その口から次々と不満が溢れ出してきた。

「人手が足りなくて仕事ばかりが増えているんです。些細なミスでも揚げ足を取るように意地悪に指摘してくる同僚がいるんですよ。そのことを係長に相談しても、全く対応してくれないんです。この状態が続くのなら、ここで働くのが辛いです。転職も視野に入れています。本当はもっとやりたい仕事があったのに…」

橘の話は止まることがなかった。あっという間に過ぎ、当初予定していた1時間に差し迫ろうとしているのに斉藤は気づいた。「もうこれ以上聞き続けることができない」と感じ、橘の話を遮った。彼の不満を聞いた上で、彼自身にもコミュニケーションに問題があることを伝え、面談を終了させた。

その翌日から、橘は出勤しなくなった。係長に連絡があり、彼はそのまま休職に入ったのだった。

斉藤はその報告を聞き、重い気持ちで溜息をついた。この面談が、橘の今後にどのような影響を与えたのか、自問せずにはいられなかった。


解説

いかがでしたでしょうか?

ここまで極端なことはないかもしれませんが、いざ評価面談をしようと思ったときに、思ったことを伝えきれなかったり、相手の話を十分聞ききれなかったことはないでしょうか?

ここでの問題点は、評価面談とキャリア面談を分けていなかったことです。

組織としての評価を伝える場と部下の考えや思いを聞く場を同時に設けるとこのようなことになってしまいがちです。

部下によってはスムーズに終わることがあるかもしれませんが、実は奥底に思っていることを隠したまましゃべっていないだけの場合もあります。

部下の本音を引き出すため、そして評価をきっちりと伝えるためにもそれぞれ分けることにはとても重要な意味があるのです。

評価面談とキャリア面談を分けるメリット

  1. 明確な目的の違い
    評価面談は主に過去の業績や行動についてフィードバックを行い、組織としての評価を伝える場です。一方、キャリア面談は未来志向であり、個人の成長やキャリア目標について話し合う場です。この二つを分けることで、それぞれの面談の目的が明確になり、話し合いがより効果的になります。

  2. 心理的な負担の軽減
    評価面談ではどうしてもネガティブなフィードバックが含まれることが多く、部下にとって心理的な負担が大きくなりがちです。これに対し、キャリア面談では個人の希望や目標について話し合うため、より前向きな対話が可能です。二つの面談を分けることで、部下がリラックスして自分の考えを話しやすくなります。

  3. 時間の効率化
    評価面談とキャリア面談を同時に行うと、話が長引き、時間が足りなくなることが多いです。時間を区切って別々に行うことで、各面談の時間を有効に使うことができます。

  4. 信頼関係の構築
    キャリア面談を定期的に行うことで、上司と部下の間に信頼関係が生まれやすくなります。部下は自分のキャリアについて真剣に考えてくれていると感じることで、上司に対する信頼が増し、モチベーションも向上します。

このように、評価面談とキャリア面談を分けることで、双方にとってより建設的な対話が可能となり、組織全体の健全な成長にもつながるのです。今後の面談においては、これらのポイントを念頭に置き、効果的なコミュニケーションを図ることをお勧めします。

頻度に関しては組織によってもことなりますが、下記を参考にみなさんの組織での適切な頻度と時間を設計してみてください。

・評価面談:半年〜1年に1回 30分〜1時間
・キャリア面談:1〜3ヶ月に1回 15〜30分


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