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老兵は死なずの話

<おじさんDX Vol 14>

私がまだ若い頃、とある営業所でアルバイトをしていました。


主に電動工具などを取扱いしていた営業所です。

受注や発注、消耗品の配達、修理受付などが仕事の内容。


私はそこで倉庫整理兼 品出しの係

営業所には、所長の他15人くらいの従業員が在籍。


その中でも爺様と言われるベテラン社員と、仕事をすることが多かったのです。

爺様は、若造である私に色々教えてくれました。

あんたは、話が出来るから、
就職するなら 営業がいいかもな

なんて、私の将来について語ってくれることもありました。


私が出会った頃の爺様は、優しそうな見た目同様、優しいお爺さん。

その昔は、バリバリの技術者だったらしく
職人肌の性格もあって、営業では苦労したとのこと。


やがて定年を迎え、今で言う定年後再雇用枠で、同じ営業所で日々働く毎日だったのです。



ある日、そんな営業所に1人のお客様が来ます。


作業着を着て、ちょうど爺様と同じくらいのご年齢に見えました。



手には、会社のロゴ名がある工具が握られています。

対応をした若い社員は、
『故障していますね』
『修理対応になりますが...』
『この製品は、すでに廃盤で...』


かなり昔の製品だったらしく、調べたところ
『修理不能』との判定だったようです。


すかさず対応した若い社員は、
いまでしたら、こちらの製品がいいと思います。

と提案したところ...


そのお客様の反応は...

そうかい...残念じゃ
ところで『○○さん(爺様の事) は おるか?』


どうやら、お客様と爺様は知り合いだったらしく


『お~社長!元気だったか!』
『で、用事は?』
『懐かしいなぁ~まだコレ現役だったか!』



なんだか盛り上がっています。



お話を伺ったところ、爺様が20数年前に、


このお客様の工場にこの工具を販売したのです。



当時も今も、安い工具は溢れています。


コストダウンをしたいところに、
こんな高い商品をすすめてきたのが当時の爺様。




営業は苦手だった爺様ですが...

社長さんが言うには、
『この人の自社製品にかける熱意、情熱に負けた』

初期投資は高いけど、
耐久性抜群で、毎日のように条件が悪い中でも
そう簡単に壊れる事はない!10年は持つ!

と言って、全く引く様子もないから

『当時、導入をしたんだよ。』


通常なら数年持てばいい方。
『10年持つと言うのは、大げさと思っていた。』それが何倍にもなった。
『これだけ長く愛用していると、愛着がわいちゃってさ....』

ところで、部品が無いとかで修理出来ないのかい?


すると爺様は、今まで見たことがないスピードでその工具を分解し始めたのです。


ほどなく...

あ~出来るよ

そんな遣り取りを目の前で見せられ、すっかり、爺様のファンになったのです。

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