催花雨
雨だれの音で目が覚めたのはいつぶりだろう
かつては冬の心の奥底まで垂れこんだ鉛色の雲
淡い光が差し込むカーテンを開ければ鼠色の雲が目に映る
東から吹きつける横なぐりの雨をかすめて
どこからか運ばれてきた芳しい薫り
草の芽たちが息を潜める街路樹の下
可憐に咲く一本の沈丁花
瞼を閉じて深呼吸すれば
かつての追憶が想い出に変わる
いつかは花開くと信じつづけたこの空の下
私はあなたの心に咲く沈丁花でありたい
いつまでも無垢な心でいて
いつまでもその大きな瞳を輝かせていて
あなたが私の一部になっても
私が夜空の星になっても
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