見出し画像

トラックドライバー怪談7『憑き纏う者(1)』

※星野しづくさんのYouTubeチャンネルにて話をさせてもらった実体験です。
文章にするにあたり、話の流れやわかりやすさを重視して、話した時と多少違う表現をするかもしれませんが、ご了承ください。

[1,起こり始めた怪異]

それは、二年半ほど前のこと。
夏の暑さの中、俺は、とある工場に積み込みに入った。
空の縁が鉛色の雲に覆われはじめ、夕立が来ることを告げている。

「雨が降る前に、積み込み終わらせないとなぁ・・・」

俺は、荷物の積み込み作業のために、大型トラックの荷台にいた。
グローブをしたまま額の汗をぬぐって、開いたウィング越しに曇り始めた空を見上げた。
体力も精神力も使う手積作業の真っ最中だ、そんなところに雨なんか降られたらたまったもんじゃない。
そんなことを思っていると、リフトマンがフォークリフトで荷物を持ってきた。
荷台に荷物を上げながら、リフトマンはふと俺の顔を見て、何やら怪訝そうに小首を傾げる。

「にーちゃん、あのさ、運転席に犬か猫連れてる?
たまにいるんだよ、ペット乗っけてトラック乗ってる人・・・」

俺はリフトマンの言葉にきょとんとなった。

「え?連れてないっすよ・・・うちの猫は家にいるんで」

「あ・・・そう・・・」

俺がそう答えると、リフトマンはどうにも解せないという顔をしながら、荷物を置いて、次の荷物を取りにいった。

一体何を言ってるんだろう??

俺はそんなことを思いつつも、手積作業を続けた。
北関東某所から、明日の朝一番で和歌山県まで届けないといけない荷物だ。
寝る時間も考えれば早めに出発したい。
そう思ったら必死で荷物を積むしかない。
黙々と作業していた俺の元に、次の荷物を持って再びリフトマンが現れる。
そのころには、もはや空は暗くなり、ぽつぽつと雨が降り始めていた。
荷物を荷台に上げながら、何故か相変わらず怪訝そうな顔して、リフトマンは俺に言う。

「にーちゃん、そしたらさ・・・助手って連れてる?」

「は??」

俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
一人で荷物を積んでる状態なのに、助手なんかいるはずもない。

「連れてませんよ、連れてたら一緒に積んでますよw」

「だよなぁ・・・」

「なんでそんなこと聞くんすか?」

「いやぁ・・・さっきからさ、ちらちら、運転席に人影みたいなのが見えてさぁ・・・」

「えぇ?!やめてくださいよ!俺、これから一人で和歌山までいかないといけないのに!怖いじゃないっすかw」

「うーん・・・」

リフトマンはやはり解せないという顔をして、また荷物を置き、次の荷物を取りにいった。
その時、空から落ちてくる雨粒が大きくなり、一気に豪雨となってしまった。
この出来事が、あの恐ろしい体験の始まりだった・・・

<To be continue>



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?