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『ゴッズ・オウン・カントリー』

原題「God's Own Country」

◆あらすじ◆
年老いた祖母や病気の父に代わり、家族経営の寂れた牧場を切り盛りする青年ジョニー。孤独な労働の日々を酒と行きずりのセックスで紛らわす彼のもとに、ルーマニア移民の季節労働者ゲオルゲが羊の出産シーズンを手伝いにやってくる。はじめのうちは衝突してばかりの2人だったが、羊に優しく接するゲオルゲに、ジョニーはこれまで感じたことのない恋心を抱きはじめる。


英国版『ブロークバック・マウンテン』なんて言われてたんで絶対観たかった。

確かにそう言われる感じはある。
舞台が田舎の牧場とかね…。
だけど『ブロークバック・マウンテン』とは明らかに違うのは時代が先に進んで少なからず彼らがまたはどちらかが【頑なに拒み隠さなければ殺されてしまうような】環境は和らいでいると言う事。
『ブ山』よりもっと肉感的でありセックス描写もリアルで直接的である描き方が現実感を表している。(でもあの頃『ブ山』のテントシーンも結構話題になったんだよな)

ただ、閉鎖的な田舎の環境やイギリスにある人種差別(また出た「お前はパキか?」発言。どー見てもパキじゃない!)などの含み。3代に渡る家業(今作では酪農)の経営の現実やその苛酷な状況に置かれた若者の葛藤も無骨で粗削りながら切実に伝わってくる描き方は良かった。

個人的に一番好きだったのはタイトルである【神自身の土地】と言われるヨークシャーと言う地の映し方だ。
場面は突然作業の手を止め高台に向かってグングンと突き進むゲオルゲ。不思議に思ったジョンがその後を追い斜面を登り切った時に彼らが目にするその景色・・・。
光の弱い薄青のペイルトーンに寂寥感も携えながら映し出される荒涼とした広大な自然。
一見何も寄せ付けないかの様だが実は地に根を張る草原は神の懐の様でもあり、そこに吹く冷たい風がちっぽけな人間の悩みなど吹き飛ばしてくれる。

そんな土地で二人の親密な関係に拍車がかかるのは神の導きでもあるかのように思える。

自分に課せられた環境と正面から向き合わず自分の性を自覚しつつも愛は求めずただひたすらに欲の捌け口として相手を探す。若くして半ば人生を諦めたかのようなジョニーと実家の農場で実績を積みイギリスで労働移民として農場の繁忙期を渡り歩いている経験豊富且つ冷静なゲオルゲ。
対照的な二人の関係を通して牧場の家族経営の過酷さや介護問題、差別など社会問題にも伏線を張り単なるラブストーリーでは終わらない展開になってる。

それと『ブ山』ファンにはそれをオマージュと取るべきシーンが幾つかある。

1番判り易いのはゲオルグが裸で身体を拭いてるのを手前にジョンが映されていてその背後の気配を感じているシーン。

はい!これは『ブ山』で料理が出来ない筈のジャックがやけにジャガイモの皮むきが手慣れてたシーンだよねー。


そー言うの結構ある。
それ探すの楽しかった。
実はイレギュラーなオマージュもあって「えっ?おばあちゃんが?」みたいなの意表つかれた(笑)

まぁ、こう言っちゃなんだけど『ブ山』で喪失と悔恨を覚えてこの『GOC』で変革と未来を見つめるって感じ。

でも『ブ山』のエンディングに泣き過ぎて違う結末を自小説で書いてしまった身としては今作の結末には正直「ホッとした」が適切かな(笑)



#ブ山と共通点沢山あるけどこれはベツモノと捉えたよ。

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