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映画感想『別れる決心』

原題「韓:헤어질 결심/英:DECISION TO LEAVE」

◆あらすじ◆
生真面目な刑事ヘジュンは、男が山で転落死した事件を捜査していて被害者の妻で中国人のソレと出会う。取り調べが進む中で、夫の死にも平然としているソレへの疑いを強めるが、同時にそんな彼女の毅然とした態度に思いがけず惹かれていく。一方ソレもまた、折り目正しいヘジュンに特別な感情を抱き始めるのだったが…。




観終わった後の心境は実に複雑だ。
取り敢えず「あ゙あ゙ッーーーーーー!」と叫びたい気分だった。


切なさと甘美、衝撃と快感・・・パク・チャヌク作品の更なる進化形を観た気がした。

繊細な問題が幾つも散りばめられ、事件も主人公2人の心情も行きつ戻りつしながら描かれる。

韓国語が流暢ではない中国人の未亡人、彼女と刑事とのスマホ翻訳機での会話。
むしろ、スムーズにやり取り出来ない故の想いの交差だったのだろう。
この2人は事件を通して知り合うが元々は律儀で正直なのだ。

事件を通して未亡人ソレの過去が暴かれると彼女の生きてきた軌跡に予想外の展開が訪れる。
彼女が韓国に留まらなければならない理由や生業の背景など実に設定が細かい。

2人が感じるお互いへの感情も"2人が似ている"と言うキーワードを用いて表現されるがその表現シーンも実に可愛いと言うか好感が持てる。
取り調べ中にお茶を飲み昼食を食べ、調べが終わると2人が同時に且つ同じ様にテーブルの上を片し始めてテキパキと綺麗にやり終えるシーンは大好きだった。

そういう何気ない共通点を無意識に感じ取って惹かれていく描写がイイ。

それはサブリミナル効果の様にコチラ側にも2人を見守ろうとする心情を生む。

そして面白かった伏線としては単身赴任のヘジュン刑事が帰宅する週末、妻との会話に頻繁に登場するイ主任という存在が挙げられる。
これはヘジュン刑事と未亡人ソレにとっては重大な伏線と化す。

そうして緻密に構成された複数の"ズレ"が齎すユーモアさと奇妙さに面白いように翻弄される・・・それが何故か心地良い。

展開が進むに連れ、事件を追うサスペンス要素はいつの間にか白日夢の様なロマンスに凌駕され2人の行き着く先は本能が導いた心理の様にも思える。

あのラストはパク・チャヌクと言う一筋縄ではいかない感性じゃないと描けないだろうな。
脱帽だよ、全くさ!


マジでアイテムの使い方も色んな伏線の張り方も最高だろ!

もう一度観たい!


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