『ひとよ』
◆あらすじ◆
タクシー会社を営む稲村家の母・こはるは、3人の子供たちの幸せのためと信じて、家庭内で激しい暴力を繰り返す夫を殺害する。15年後、長男・大樹、次男・雄二、長女・園子の3人の子供たちは、それぞれに事件によって運命を狂わされ、心に深い傷を抱えたまま今の人生を送っていた。そんな3人の前に、出所したこはるが突然姿を現す。
素晴らしかった。
役者も演出も映像も伏線も良い!
地方都市の閉塞感と息苦しさ、そして【人の心の混沌】の描写が如何にも白石監督らしく緻密且つリアルであたかも彼等がその地に住み、生活している様な気さえして彼等の生活臭を感じる程だ。
親が思い描く未来と子供が受け継ぐ未来。
同じ形を目指したい筈なのに何故違ってしまうのだろうか?
てか、いつもこの手の話を見聞きすると必ず赤の他人から犯罪に加担したわけじゃないのに家族や遺族への誹謗中傷が出て来たり、現実に嫌がらせがあったりするんだけど何で人の人生にズカズカと土足で入って行けるんだろうか?と放って置けよってさ!思うわけ。
今回の話も映像に目を覆いたくなる様な酷いDVシーンがあって事実こういう事あるんだろうなって思うしそれがいつまで続くかワカラナイ恐怖や絶望が付き纏ってる。
で、母親は堪りかねて暴力夫を殺してしまうわけなんだけど・・・死んで当然って思わなくもない。だって殺されるかもしれないわけだからね或る意味正統防衛じゃん・・・って。
でもその殺人のせいで子供達は酷い嫌がらせに遭う。
それが心の傷になり実家を捨てて出て行く次男、留まるが精神的に抱え込んだ負担が大きく新しい家族と上手く立ち回れない長男。酒に飲まれる毎日を送る長女。
ただ、この映画は彼等を取り巻く身内や友人(次男の同級生達)がイイ人でそこが救いだ。
もしかしたらそんなイイ人ばっかりじゃないよって醒める人もいるかもしれない。でもイイ人はいっぱいいるんだよ実際。誰も助けてくれないわけじゃない。
この映画はそんな風に思わせてくれる優しさがある。
それにしても田中裕子演じるタクシードライバーを生業にする無骨なまでの母親像!
DVの夫を抱えてより一層弱い女では居られないド根性!
三兄弟を演じる佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優のリアルな喧嘩シーンも魅せる。
伏線に描かれる2つの親子の話も身につまされる。
いつも強面で使われる音尾琢磨が親戚家族を助けるとっても善き人なのが面白かった。
そして一見善人なのに・・・な佐々木蔵之介がこれまた重要なサブキャラ設定。
でも結構今作女性陣が良かったよね。
韓英恵、筒井真理子、MEGUMIが要所要所で味になってたなぁ・・・。
物理的な自由を得られても心の自由が得られなければ人は前には進めない。
家族だからこそ複雑に絡む感情の先にあるものが見える。
恨みつらみの群像劇・・・最後まで見応え充分だったな。
『デラ・べっぴん』(の復刻号作ってんじゃねぇーよ!)がまるでオアシスを見つける呪文の様だった。あのシーン大好き!!
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